中国の中東戦略

はじめに

 

従来、中国の中東地域への関心は、もっぱらエネルギー資源の調達、貿易・インフラ整備、労働市場などについてであった。しかし、現在の中国は安全保障、外交、金融など、より広い領域における中東諸国との協力関係を発展させ、中東地域でより重要な役割を果たそうとしている。本報告では、まず、習近平体制下の中国外交における中東の位置付けを述べ、続いて、中国にとって拡大している対中東関係における利益について論じる。

 

 

習近平体制下の中国外交にとっての中東

 

1.「新シルクロード」構想における「重要な協力パートナー」としての中東

 

2014 年 6 月 5 日、「中国-アラブ諸国協力フォーラム(China-arab States CooperationForum)」第6回閣僚級会議において、中東は、「新シルクロード(一帯一路、one belt, oneroad)」構想における「重要な協力パートナー」として位置付けられた。「新シルクロード」構想とは、2013 年に習近平・国家主席が提唱した地域協力構想で、「シルクロード経済ベルト(中国~南アジア~ユーラシア~西アジア~欧州)」と「21 世紀の海上シルクロード(中国~ASEAN~インド洋~中東・アフリカ)」の 2 つを統合させた構想である。これら2 つの「新シルクロード(一帯一路)」構想は、習近平体制下の中国において、「新たな対外発展戦略」の国家戦略として位置付けられている。

 

 

2.エネルギーを主軸、インフラ・貿易を両翼、3 大ハイテク分野を「突破口」

 

同会議において、中国の王毅外交部長は、中国と中東の双方が「一帯一路」を共に築くことを今後 10 年の関係発展の基本的柱とすることを強調し、中国と中東諸国が「一帯一路」を共に構築するための「1+2+3協力枠組み」を提唱した。「1+2+3協力枠組み」とは、(1) エネルギー協力を主軸とし、(2)インフラ整備、貿易と投資の円滑化を両翼とし、(3)原子力、宇宙開発、新エネルギーの 3 大ハイテク分野を「突破口」にするという枠組みである。従来の(1)と(2)の領域に加え、(3)の 3 大ハイテク分野にまで関係拡大をねらっている。これにともない、「中国・アラブ技術移転センター」の設立が検討されている。

 

国内で原発増設が続く中国には、原発輸出国を目指し、中東との原子力協力を強化したい、というねらいがある。中国はイギリスのヒンクリーポイント原発に出資・運営に参入するなど、外資との提携を進めている。2014 年 6 月の「中国・アラブ諸国協力フォーラム」で原子力協力に合意しており、中東地域への原発輸出の意欲がうかがえる。また、宇宙開発などをめぐっては、宇宙庁を設立したUAEとどのような関係を築くのかが注目される。 「一帯一路」は 2016 年までの「戦略動員期」、2021 年までの「戦略計画期」、2049 年までの「戦略実施期」の 3 段階戦略で進められる。つまり、習近平が引退する 2022 年の前年に向けて、戦略計画が策定され、中東との関係発展をさせようとしているのである。【次ページにつづく】

 

 

 

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