戦後賠償――ドイツと日本の違いはどこにある?

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飯田 ある程度広い意味での戦争犯罪、あるいはナチスの犯罪を裁いた国際軍事裁判といえば“ニュルンベルク裁判”がありますよね。ドイツはこれをどのように受け入れていったのですか。また、東京裁判との違いはどこにあるのでしょう。

 

石田 現在のドイツで、ニュルンベルク裁判は、その後の国際法の発展に道を拓いた重要な裁判として評価されています。しかし当時は評判が悪く「(第二次世界大戦の)勝者の裁き」と言われていました。

 

とくにソ連が裁判官・検察官を出したことに不快感を隠さなかった。ソ連は1939年9月にドイツとともにポーランドを侵攻した国ですね。そういう侵略国がどうして正義の側に立つのか、というわけです。

 

おまけにこの裁判で導入された「人道に対する罪」、「平和に対する罪」は明らかな事後法にあたります。これは近代法原則=罪刑法定主義に反する、とドイツは反発しました。

 

日本はサンフランシスコ講和条約で東京裁判を受け入れて、主権を回復したのですが、ドイツは今日にいたるまでニュルンベルク裁判を受け入れる意思を表明していません。その代わり自国の刑法に基づく裁判を続けています。

 

そのドイツ国内の裁判ですが、これも当初は、時効が来ればその段階で終わるものと考えられていました。ところが1960年代になって時効の成立に反対する議論が戦後世代を中心に巻き起こります。「ナチ犯罪」に多くの国民が関与していたことがわかってきたからです。結局、ナチ犯罪の中心=謀殺罪の時効が1979年に撤廃され、今も裁判が続いているわけです。

 

ドイツ国内の裁判は、ニュルンベルク裁判と違って、自分たち自身の手で行いますから、そこで明らかになった諸々の加害の事実は重みをもちます。なかでもフランクフルトで行われた「アウシュヴィッツ裁判」(1963~65年)は、あの悪名高い絶滅収容所でドイツ人が何をしたのか、その詳細を明らかにしました。

 

飯田 ドイツは「お詫び」や「反省」という点についても非常に特異なのかなと思います。ドイツの場合は国内で裁く側と裁かれる側を作り出すことができたわけですよね。そこから日本が見習うとしたら、日本は誰が何を裁くことになるんでしょうか。

 

石田 日本で誰かを裁くということは、もう無理だと思います。戦後70年も経っているので、これは意味がないですよね。罪は、あくまでもそれを犯した個人のものであり、代わりに誰かが裁かれることはないわけです。

 

飯田 まさにワイツゼッカーの言葉ですね。

 

石田 私は、罪を犯してない者が謝罪する必要は、本当はない、と思っています。しかし、責任はあると思います。

 

飯田 なるほど。その責任はどういったことですか。

 

石田 「過去に対する責任」という表現がドイツではよく使われます。その考え方を参考にすれば、前世代の悪行、「負の行為」、侵略戦争なり、植民地支配なり、日本の名においてなされた不法行為に起因する未解決の問題が今もあるのなら、それらを解決する責任は私たちにある。罪は引き継がれないが、責任は引き継がれる。

 

私たちの子や孫の世代に罪がないのは明らかです。しかしもし日本の過去に対する責任に対して無自覚であるなら、それはそれで罪深いことではないかと思います。

 

飯田 番組では「ドイツは過去を克服した」とタイトルでつけていますが、一方でポーランド議会が賠償の請求をしたり、ギリシャ政府も戦時賠償が不十分であるとしていますよね。必ずしもドイツは全面的に過去を克服しつくしたというわけではないと思うのですが。

 

石田 過去の克服は「持続的な学習プロセス」だといわれるように、何かをもって終わるものではないでしょう。あれだけのことをやってしまった以上、ドイツ国民としての責任を果たすためには長い時間がかかる。世論はたしかに割れていますが、今のドイツの政治指導者は、この取り組みを続けることで、70年前に失った国際的な信頼を取り戻すことができると確信しているように思います。

 

飯田 何か決め打ちで「これで最終解決だ!」というのではなく、歴史のプロセスの中でゆっくりとお互いの視点を和らげていくことが重要なのですね。日本ももっと上手な発信ができるようになる必要があるかもしれません。

 

 

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