児童婚禁止の動きとその期待――ジンバブエを舞台に

2016年1月、ジンバブエの憲法裁判所は、18歳以下の子ども及び若者の結婚を禁止するという判断を下した。このニュースは、児童婚をなくしていく上で大きな一歩となった。というのも、ジンバブエでは憲法と婚姻法での結婚に関する決まりが矛盾しており、18歳以下の子どもの結婚が事実上可能な状況があったからである。

 

今回のジンバブエの憲法裁判所の判断は、ジンバブエだけでなく、アフリカ地域全体に大きな影響を与えると期待されている。アフリカ連合は児童婚を終わらせるためのキャンペーンを行っており、アフリカ連合の議長国であるジンバブエが児童婚を禁止することは、ほかの国へ大きな働きかけとなると考えられているからだ。

 

2012年のデータによれば、15歳から19歳の間に結婚している割合は、男性で2%であるのに対し、女性では22%と11倍の高さであることが報告されている(ZIMSTAT, 2012a)。

 

本稿では、ジンバブエを舞台に、児童婚の問題を取り巻くさまざまな要因を考えながら、この1月の憲法裁判所の判断がどのような意義を持つのか、これからさらに何が必要なのか考えていきたい。

 

 

憲法と婚姻法の矛盾

 

ジンバブエは1990年代から、女性の人権や子どもの人権に関する様々な国際法やアフリカ憲章を批准してきた。しかし、これらすべての法律が必ずしもジンバブエの法律と一貫しているかというとそうではなく、ジンバブエの場合、憲法と法律に2つの矛盾があり、児童婚廃絶の妨げになっていた。

 

1つ目は法律が定める“子どもの年齢”である。憲法における子どもの定義は“16歳以下”、若者は“16歳以上18歳以下”と定めており、子どもの権利という観点から憲法で守られる個人はあくまで16歳以下であることが条件だった。

 

婚姻法セクション22(1)の法規では、結婚することができる年齢を男子は18歳以上、女性は16歳以上と定めていた。しかし、憲法では男女ともに18歳以上であることが定められており、憲法と婚姻法の間で、結婚可能な年齢(女子)が矛盾した状態が、憲法制定後ずっと続いていた。

 

つまり、憲法では18歳以下の女子の結婚が禁止されていても、婚姻法に従うかたちでは、女子はたとえ18歳以下であっても16歳以上であれば、“合法”に結婚できていたということである。この17歳、18歳の少女の結婚を子どもの権利の観点から守ることができるのかというと、憲法では子どもは16歳以下であり、保護の対象にすることができなかった。

 

婚姻法セクション22(1)

 “No boy under the age of eighteen years and no girl under the age of sixteen years shall be capable of contracting a valid marriage except with the written permission of the Minister, which he may grant in any particular case in which he considers such marriage desirable: …”

 

憲法セクション78(1)

“78 Marriage rights Every person who has attained the age of eighteen years has the right to found a family.”

 

2014年に行われた家計調査によれば、20歳から49歳の女性のうち3人に1人が18歳以下で結婚し、おおよそ4パーセントは15歳以下で結婚をしていると予想されている。なぜ明確な数字がないのかというと、この多くの児童婚は正式に届け出がされていないという問題があるためである。憲法では18歳以下での結婚が禁止されているため、婚姻法にならうかたちで16もしくは17歳の女子と結婚する場合、届け出をせず結婚してしまうケースもあるからだ。

 

今回、18歳と19歳の二人の児童婚をした女性が裁判を起こし、憲法裁判所は婚姻法を違憲と認め、男女ともに18歳以上であることを婚姻の条件とすることを改めて取り決めた。

 

裁判所は、ジンバブエ国内および世界各国の児童婚に関する先行研究を参考にし、以下のようなコメントを出した。

 

“The studies showed that where child marriage was practiced, it was evidence of failure by the State to discharge its obligations under international human rights law to protect the girl child from the social evils of sexual exploitation, physical abuse and deprivation of education, all of which infringed her dignity as a human being”

 

児童婚は、女子の社会的搾取、身体的暴力、教育剥奪など人権を侵害するものであり、女子の人権をこれらから守る国際人権法のもとでの国家の責任を果たしていないことを示している、と。

 

今回の裁判所の判断は、たとえ宗教上18歳以下の子どもの結婚が許されていても憲法ではこれを禁止することも意味する。

 

 

児童婚の背景

 

児童婚をなくすために児童婚が起こる背景はジンバブエに限らず、世界各国地域で研究されている。ジンバブエに関しては、児童婚の背景にあるのは文化的なものだけでなく、貧困、教育、そして宗教の関係があげられる。

 

 

子守りをする女の子(マシンゴ州にて、2015年7月筆者撮影)

子守りをする女の子(マシンゴ州にて、2015年7月筆者撮影)

 

 

文化的要因

 

いわゆるジェンダーによって求められる役割で、女性は若いうちに結婚して子どもを生み、家庭を守ることを求められる。都市部を中心に女性の晩婚化が進んでいるというが、それでも2011年のデータでは3人に1人の女性が18歳以下で結婚し、20歳から24歳までの女性のうち31%が18歳以下で結婚している(ZIMSTAT, 2011)。

 

女性が若いうちに結婚することが推奨される理由の1つが、処女信仰の高さだ。結婚時に女性が処女であることは、その女性の純粋さ、純潔さ、誠実さの象徴と証であると評価される。伝統的に、婚姻前の性行為が家族にばれた場合は、その男性はその女性と結婚することが義務とされる。

 

たとえ性交渉がなくても、未婚の女性が夜遅くまで男性と2人きりで会うことは好ましくなく、家族に見つかれば結婚させられることはいまでもある。また、中東や南アジアでもあるように、結婚前の性交渉がレイプによるものだったとしても、そのレイプした相手と結婚させられるケースは残念ながらある (RAU, 2014)。

 

 

家庭環境――家族からの暴力、虐待

 

Research and Advocacy Unit (RAU) という団体が行った、東マショナランド州ゴロモンジ地区にある3つの村で、46人の女性(うち18歳以下での結婚した女性が31人)にインタビュー調査した報告書がある。それによれば、両親からの暴力や虐待から逃れるために結婚するケースも少なくないことが明らかにされている。

 

子どもへの暴力は、児童婚に並んで深刻なジンバブエの子どもの権利に関する問題である。2010年から2011年に行われたDemographic and Health Survey (DHS)の報告書では、15歳から49歳の女性を対象に、暴力に関する聞き取り調査が報告されている。

 

報告書によれば、15−19歳で過去12ヶ月の間に何らかの暴力を経験したことのある割合は22.7%。15歳から49歳と対象の年齢の幅は広がるが、その年齢の未婚の女性で、暴力をふるわれた経験のある女性の21.8%は母親もしくは継母、16.1%は教師、14.3%は父親もしくは継父、そして25.5%はそのほかの親戚(両親兄弟を除く)から受けたと報告されている(ZIMSTAT, 2011)。

 

暴力の中でも性暴力被害の割合は高い。同じくDHS2010-2011によれば、はじめて性暴力を経験したのは15−19歳のときがもっとも高く、66.3%。次に10−14歳のときは19.2%で、それに比べて少ないが10歳以下で性暴力を受けた割合は2.1%で、見逃してはならない数字である。15−19歳の間に性暴力を経験している割合は、20歳-49歳のどの年齢グループでももっとも高い。

 

また15歳以下のときに今の夫やパートナーから受けている場合は29.1%、前のパートナーもしくは前の夫からの場合は19.8%であり、婚前の性暴力による結婚のリスクと早婚による家庭内暴力のリスクがあることが垣間見える。また、未婚既婚関わらず、15歳以下で性暴力を経験した女性のうち、18.5%が夫もしくは継父以外のほかの親戚から受けたと報告されていることから、そういった家族親戚からの暴力が早婚の後押しになっている事実は十分に考えられる。【次ページにつづく】

 

 

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