環太平洋パートナーシップ協定(TPP)はなぜ必要なのか  

今回は、『経済セミナー6・7月号』特集の「TPPと日本の農業」の中から、慶應義塾大学教授の木村福成氏の論説(『環太平洋連携協定(TPP)とは何か』)を取り上げつつ、私見を交えながら論じてみましょう(*1)。

 

(*1)TPPに関しては拙稿「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が投げかける「古くて新しい課題」」(https://synodos.jp/international/1785)もあわせてご参照ください。

 

 

TPPとは何か

 

TPPは2006年にブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの間で発効した経済連携協定(P4)を母体として始まり、2010年3月に広域経済連携協定を目指すTPPの交渉が開始されたものです。現在、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアを含む9カ国で交渉中です。2011年11月にハワイで開かれるAPEC首脳会議までに合意を目指すとされています。日本の対応は震災の影響もあり、交渉参加をめぐる議論は先送りとなっていますが、できるだけ早期の交渉参加が求められるところです。

 

さて、日本にとってTPPの持つ意味は何でしょうか。木村教授は大きく三点あると述べています。

 

 

「仲間作り」としてのTPP

 

一点目はTPPが持つ「仲間作り」としての意味についてです。2000年代以降の中国をはじめとするアジア新興国の急速な台頭は、東アジア及びアジア太平洋の地政学的構造を大きく変革させています。日本企業の国際競争力を維持し、成長活力を取り込むために東アジアとの連携は今後も必要でしょう。図表1は1990年を1とした場合の中国・NIEs・ASEAN及び米国・EUのGDPの推移と日本、米国、ドイツ、韓国の輸出の推移を比較したものです。

 

 

図表1 アジア新興国の市場拡大と輸出のポテンシャル 資料:経済産業省「2010年版ものづくり白書」

図表1 アジア新興国の市場拡大と輸出のポテンシャル
資料:経済産業省「2010年版ものづくり白書」

 

図表からは、2000年に入るとアジア新興国のGDPが急速に拡大している一方で、日本の輸出はその動きにキャッチアップできていないという状況が見てとれます。2002年以降の日本の経済成長には輸出と設備投資が寄与してきましたが、図表1からは輸出をさらに拡大させる余地は十二分にあることがわかるでしょう。

 

そして日本においては、東アジアとアジア太平洋のバランス、特に中国とアメリカの間の距離感をいかにとるかが現在喫緊の課題になっています。こうした中で近年アメリカの関心が部分的に東アジア、アジア太平洋に回帰していますが、日本は民主党政権発足以来、自らの立ち位置を明確に表明していませんでした。一方でアメリカは、日本との同盟関係を再確認したいとの意図を明確にしています。

 

図表2からアジア太平洋地域の先進国(日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、メキシコ、アメリカ、カナダ)における2国間FTAの締結状況を見ると、アメリカとのFTAが署名に至っていないのは日本とニュージーランドのみという状況です。ニュージーランドはTPP交渉のテーブルについているため、日本がこのままTPPの参加を見送れば、アジア太平洋地域での日本の孤立感は格段に高まるでしょう。

 

 

図表2 アジア太平洋地域における2国間FTA締結状況 資料:木村福成「環太平洋連携協定(TPP)とは何か」(経済セミナー2011年6・7月号)を参照して筆者作成

図表2 アジア太平洋地域における2国間FTA締結状況
資料:木村福成「環太平洋連携協定(TPP)とは何か」(経済セミナー2011年6・7月号)を参照して筆者作成

  

 

 

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