ボツワナの中国人商人たち――チャイナショップが生み出す消費社会

模造品

 

今日、中国産製品はアフリカ全体において批判を受けている。安っぽい、コピー品、偽造のものという意味で「フォンコン」呼ばわりされるのだが、しかし実際には、ボツワナのチャイナショップで厳密に「フォンコン」というジャンルに入るものは限られている。模造品ばかりではないのに、中国産製品がひとまとめに「フォンコン」と呼ばれているのである。

 

チャイナショップでの調査によると、現地で一番人気があるのは、NikeやAdidasのロゴが付いた非正規のスニーカーとシャツ、AppleやNokiaのシールが貼られた別メーカーの携帯電話、そして海賊版DVDといった「フォンコン」である。テレビの普及によって、現地人の間でファッションに対する関心が徐々に高まってきた。それゆえ、普通の商品より値段はやや高いが、質も高く、格好よく見せられる模造品が大歓迎されている。

 

フォンコンのせいで、中国人商人も、中国系ビジネスもネガティブなイメージで覆われるようになった。その結果、中国人の商売がボツワナ政府の規制を招いてしまった。初期の中国人商人は儲かったが、今日の中国人商人は骨折り損のくたびれ儲けになっていると言っても過言ではない。それは近年ボツワナ政府の取り締まりによって中国人商人がおおやけに模造品を売ることができず、中国人商人よりは現地の露天商とボツワナ商人が「フォンコン」の受益者になっているからである。中国人のYさんは露天商について次のように語る。

 

 

露天商は結構儲かっているよ。私が知っているあの子は私のところに来るたびに20~30足の偽ブランドを買っていた。私は彼に50 Pula/足(US$ 5.2)という卸売の値段で売っていたが、彼はなんと300 Pula/足(US$ 31)で現地人に売っていたよ。それでも、彼は毎回私に値下げをせがんでいた。彼は偽ブランド商売のお陰で3年もしないうちに立派な家を建てられた。(インタビュー、2014)

 

 

また、ボツワナの路上商人Zさんは規制の影響についてこう語っている。

 

 

私はかつて、チャイナショップからブランドの靴を仕入れていたが、最近中国人がそれを売れなくなった。仕方なく、私が毎月1回仕入のために、南アフリカまで行かなければいけなくなっている。

 

 

こういうわけで、たとえボツワナにいる中国人商人が模造品の販売を禁じられたとしても、流通ルート自体は遮断されることなく、現地の商人によってちゃんと回されている。また、近年、ボツワナ人が「スーツケース商人」(Mathews, 2012)として直接中国の国内市場から商品を輸入しているケースも増加しつつある。ボツワナ政府がいくら「模造品禁止」というキャンペーンをおこなっても、国内のニーズがある限り、模造品は様々なルートを通して入ってくるだろう。じつは模造品の排除はどちらかというと口実で、ボツワナ人商人の育成がボツワナ政府のねらいだったのかもしれない。

 

模造品の件に関して、中国人商人はたくさんの非難を受けているが、彼らが非難されるべき張本人なのか、それともスケープゴートなのか、私には判断が着かない。面白いことに、中国人商人は自身が悪いことをしているとは思っていないようである。

 

「ぼったくりのブランド品が今は誰でも楽しめるようになったし」

「ブランドの会社に害なんか全然およぼしていない。だって、われわれの店で買い物する現地人がブランド品を買う金を持っているか」

「模造品だって、ブランド品の宣伝にもなるだろう」

 

 

オリジナルブランド

 

模造品はおおやけに販売することができなくなったが、高品質な商品に対する需要は増加する一方である。そこで、何人かの中国人商人は、自前のブランドを作り始めた。彼らは中国の工場で上質な材料を注文し、ボツワナ人の好みに合わせたスーツや革靴を作ってもらった後に、自前のブランドシールを貼りつけた。有志の中国人商人はこの方法でチャイナショップの悪名「フォンコン」を洗い清めようとした。

 

 

今では、われわれの商品の品質が悪いわけではなく、チャイナショップで売っているから質が悪いという現地人の偏見がわれわれを裁いている。だから、チャイナショップのイメージを作り変えなければ、すべての努力は無駄になる。(インタビュー、2015)

 

チャイナショップが雑貨ばかり売っているため、忙しいし、利潤の少ない商売をしている。商売である以上、お金持ちのお金を狙わないと。(インタビュー、2015)

 

 

とPさんが言っていた。Pさんはボツワナに来る前、中国でエンジニアとしてヨーロッパ資本の企業に勤めていた。中国で一番大きいダムの設計に関わった経験をよく自慢話にしていた。その後、今から10年前に、親戚の繋がりでボツワナにやってきた。彼女は現在ボツワナの富裕層をターゲットにして高級スーツを売っている。政府の官僚もよくスーツを買いに来るそうである。

 

また、近年建てられた高級ショッピングモールでは、多くの現地人商人が店を開いている。話を聞くと、多くの商品が中国から輸入したものだという。毎月中国に行っているボツワナ人商人Bさんは以下のように語っていた。

 

 

他の商店で売っているドレスはチャイナショップで売っているドレスと似ているので、高級ショッピングモールに来るお客さんにとってはあまり魅力的じゃない。だって、女性はほかの人と同じようなドレスを着ているのが嫌だろう。だから、私は中国でユニークなデザインのものを探してくるのだ。ボツワナで唯一のドレスだと紹介したらお客さんが喜ぶわけで、少々高い値段をつけても売れる。

 

 

したがって、一見どの店も同じように見えるチャイナショップだが、売っている商品の品質の幅は広く、様々な収入層の現地人のニーズを満たしている。一部の商品の質が悪いからといってひとまとめに「フォンコン」と呼ばれることに対して、反発する中国人商人の気持ちはよく分かる。今後、ボツワナ消費者の購買力が高まることによって、オリジナルブランドや中国から直接ユニークな商品を輸入するようなことが増えていくだろう。

 

 

中国産製品の善し悪し

 

中国人商人のアフリカ進出は賛否両論を呼んでいる。1990年代に来た中国人商人たちがよく反省して語るのは、「ボツワナ人は、以前はもっと純粋だった。今のようにお金ばかり求めるようになったのは中国人の影響を受けたからじゃないかなぁ」、「以前は高速道路で車が壊れたら村人がよく助けに来たが、今同じ状況だったら、現地の強盗に遭うんじゃないかと心配するよね。」といったものである。現金社会になりつつあるボツワナ社会では人間関係が変質しつつある。これは中国人商人によって現金が現地社会に浸透したことが一因だと考えられる。

 

一方、ボツワナ現地人の生活水準は、中国人商人のアフリカ進出によって確実に高まっている。今日、ボツワナでは都市から一番辺鄙な村まで、どこでもチャイナショップのサービスを受けられるようになっている。電器製品をはじめ、家具、衣服、日常用品まで、なんでも手頃な値段で購入できるようになってきた。

 

つい最近まで、日々の生活における必需品を入手する方法さえ持たなかったボツワナ人は、中国人商人によって消費社会に巻き込まれるようになった。今ボツワナ人は本当に満足しているのか、それとも今後はますます欲求不満に陥るのか。

 

 

引用文献

・Barrett, G. 2007. October 15. fong kong. A Way with Words. Retrieved August 09, 2012, from http://www.waywordradio.org/fong_kong_1/

・Best, A. C. 1970. General trading in Botswana, 1890–1968. Economic Geography, 46, 598–611.

・Embassy of the People’s Republic of China in the Republic of Botswana. 2008a, February 1. An overview of the relations between China and Botswana. Retrieved August 09, 2012, from http://bw.china-embassy.org/eng/sbgx/t404979.htm

・Mathews, G. 2012. Neoliberalism and globalization from below in Chungking Mansions, Hong Kong. In G. L. Gordon Mathews (Ed.), Globalization from Below: The World’s Other Economy (pp. 69-85). Routledge.

・MBendi Information Service. 2014. Manufacturing in Botswana – Overview. Retrieved October 18, 2014, from http://www.mbendi.com/indy/mnfc/af/bo/p0005.htm

・Park, Y. J. 2013. November. “Fong Kong” in Southern Africa: Views of China-made Goods & Chinese Migrants. African Studies Association 56th Annual Meeting, Baltimore, MD, USA.

・Zi, Y. 2015. The ‘Fong Kong’ Phenomenon in Botswana: A Perspective on Globalisation from Below. African Eastern-Asian Affairs, 1, Centre for Chinese Studies, Stellenbosch University.

 

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