いま、アフリカ映画がアツイ!

「アフリカが語るアフリカを日本へ」。アジア・太平洋地域唯一のアフリカ映画祭「シネマアフリカ2013」が5月17日~23日、オーディトリウム渋谷で開催される。代表の吉田未穂さんに、直前インタビューを行った。(聞き手・構成/山本菜々子)

 

 

アフリカのリアルがここにある

 

―― アフリカの映画祭を開催しようとおもったきっかけを教えてください。

 

そもそもわたしは、大学でアフリカの研究を行っていました。当時はインターネットなどがなかったので、アフリカを知るためには、研究書などにあたるしか方法がなく、座学としてアフリカの伝統的な家族制度や、牧畜での生計の立て方などを学んでいました。

 

しかし、はじめてケニアに調査へいったとき、衝撃をうけます。首都ナイロビに降り立つと、高層ビルが並び、OLが街を歩き、いわゆるエグゼクティブな人たちが忙しそうに働いていました。わたしがそれまで思い描いてきたイメージとは違う世界がそこにはあったんです。

 

アフリカには一人で乗り込み、牧畜では暮らせなくなった人たちが、都市で出稼ぎをする状況について調査をしていました。研究者という以前に一人の生活者として四苦八苦しながら、毎日の生活を成り立たせるため必死の毎日でした。そうして生身のアフリカに裸で接することで、現代アフリカの姿に興味を持つようになったんです。そのとき感じた衝撃は、学問の枠には入りきらないもので、大学の研究では自分が満足できるような答えはなかなか見つからなかったんです。

 

そんなときにみたのがアフリカ映画でした。そこには、わたしが現実にみたような、ありのままのリアルなアフリカがありました。わたしにとって現代アフリカを教えてくれる最大の教科書がアフリカ映画だったといえます。

 

 

―― 吉田さんは映画上映の交渉を、現地で一人で行っていると伺いました。映画祭にあたり苦労したことはなんでしょうか。

 

日本という存在がアフリカではメジャーではないので、「わたしは本気」だということを示すことが大事ですね。ことあるごとにお金と労力をかけてアフリカにいく。顔を繋いで、信頼を得るということを意識しています。

 

むこうにいくと、7割8割はアフリカの方、残りはヨーロッパの方です。「ここでアジア人がなにしているの?」という世界なんです。そんななか、年寄りで権力がある感じにもわたしは見えませんので(笑)。「この若い子になにができるんだ」と、アフリカの方も感じてしまうのは仕方がないことです。だからこそ、熱意で動かすことは大事ですし、少しずつたしかな実績をつくっていていくことも必要です。日本で映画をやることが利益になりますよ、日本がマーケットに将来なるかもしれませんよ、と説得を重ねていきます。

 

 

健全な経済サイクルのなかで

 

―― 大変な労力ですね。海外で上映できるのは、「名誉なこと」というイメージがあるのですが。

 

それは逆なんですよね。日本では慈善活動として、アフリカの映画をみるという感覚の人が非常に多いのではないでしょうか。先進国の人が、かわいそうなアフリカの映画を「みてあげる」という構図になってしまいがちなんです。

 

でも、それは彼らにとっては上から目線におもえるし、メリットにならないんですよね。日本で上映会を開いて、「アフリカは大変だね」となっても、行動に移さなければ結局みている人の自己満足と言われてしまうかもしれません。それで、上映料も払わない、みてやるから無料で上映してくれ、となると、それはかたちを変えた「植民地主義の再来」と言われても仕方ないですし、差別を増幅しているだけだとおもいます。

 

だから、慈善活動ではなく、作品として面白いからお金を払って上映することを意識しています。お客さんにもきちんとチケットを買ってもらう。対価を払うというのは、作品へのリスペクトですから、この売り上げが彼らの次の映画の資金になるわけですよ。だから、たとえばお金というかたちで、日本でやる映画の成果をアフリカに返したいなとおもっています。

 

お金を払う代わりに、面白い話や、勉強になるドキュメンタリーを受け取る、そのお金で彼らは次の作品をつくっていく。アフリカ映画という大きな経済サイクルの一部に日本人も入れたらなとおもうんです。ですので、啓蒙や慈善活動ではなく、みたいからみるし、そのためにお金も払うという、「健全な」経済サイクルのなかでやっていきたいですね。もちろん、そのためには上映する側も意味のある映画を選んでこなければいけません。

 

 

―― 映画を選ぶ基準はありますか。

 

いままでのアフリカの概念やイメージをひっくり返して、驚きを与えるようなものを選んでいます。それは悲劇であるのかもしれないし、コメディなのかもしれない。映画の表現方法は多種多様だとおもうんですよ。

 

今回であれば、アフリカとヨーロッパが逆転した「アフリカ・パラダイス」(http://www.cinemaafrica.com/?p=662)という作品を上映します。ヨーロッパが貧困に陥って、超大国のアフリカに移民が押し寄せるという話です。自分のいままでの価値観がひっくりかえるような映画だとおもいます。

 

そういう面白くて驚くようなものをみると、考えるきっかけができるとおもいます。驚いたり悲しんだり、感情が動くと、もっとアフリカに興味を持てたり、実際にいってみようだとか、具体的なアクションにつながるとおもうんです。ですので、人の感情を動かすものを選ぶというのも、大事な基準にしていています。

 

 

―― 日本で上映するにあたり、字幕はどうしているんでしょうか。

 

ボランティアの方たちに英語やフランス語から日本語に直してもらっています。それと、どうしてもアフリカの話は現地事情がわからないと難しいので、アフリカから日本に来た留学生に手つだってもらっています。なるべく現地と近い感覚に近づけることは意識していますね。

 

 

世界最先端の「おもしろい」を

 

―― 今回の映画祭のみどころを教えていただけますか。

 

ナイジェリア映画ですね。ナイジェリアでは最近、映画制作が盛んです。ハリウッド、ボリウッド(Bollywood インド映画の通称)につづいて、「ノリウッド(Nollywood)」という言葉も生まれています。いまとっても人気なんです。新しいデジタル技術で格段に安くなったのと、アフリカ国内の需要の高まりによって活発になりました。アフリカの人がアフリカの身近な問題をアフリカの目線で描く。現地の人から熱い支持を得て大ヒットしているんです。

 

ナイジェリアだけではなく、東アフリカや南アフリカでも盛んに上映されていますし、アフリカ系の移民の方を通じてヨーロッパでも爆発的な人気がでてきています。今回、シネマアフリカで上映される作品は世界の最先端の「おもしろい」ものなんです。たとえば、「恋するケイタイinラゴス」(http://www.cinemaafrica.com/?p=1383)などはいま大ヒット中の映画です。ノリウッド映画の特徴はハッピーエンドで終わる人間ドラマです。呪術であったり、村の生活だったりアフリカ的なものを取り入るところもポイントです。

 

また、アフリカのカンヌ映画祭「FESPACO」でグランプリを受賞した「テザ 慟哭の大地」(http://www.cinemaafrica.com/?p=671)にも注目していただけたらと思います。つまり、アフリカの方たちが、アフリカでナンバー1と認めた映画です。これは、エチオピアの混乱のなかでの人間の苦悩や、そのなかでもかすかな希望をつかんでいく人間の話です。

 

 

―― 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

 

選りすぐりのアフリカ映画17作品を集めていますので、ぜひ、みに来ていただければとおもいます。発展途上国だから映画を「みてあげる」のではなく、世界の最先端の「おもしろい」を楽しんでください。

 

CINEMA AFRICA 2013 上映作品 ⇒ https://synodos.jp/international/3957/2

 

 

 

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vol.2019.4.15 

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