エイズ孤児を救え!――NGO・PLASの挑戦

エイズ孤児が直面する問題の解決に取り組むNGO・PLAS。日本初のエイズ孤児に特化したNGOだ。エイズ孤児の支援とは、啓発活動とはどのようなものなのか、NGO・NPOとしてどのように活動していくのか……。代表理事の門田瑠衣子氏に、支援の最前線についてお話を伺った(聞き手・出口優夏 構成・山本菜々子)

 

 

アフリカへの恩返し

 

―― 門田さんは日本初のエイズ孤児を支援するNGO・PLASの代表で、ウガンダ、ケニアといったアフリカのエイズ孤児の問題に取り組んでいますね。そもそもなぜアフリカに関わるようになり、PLASを立ち上げたのかについてお聞かせください。

 

興味を持ったきっかけは大学の授業でした。アフリカの途上国の現状を講義で聞き、他人事じゃないんだなと感じました。それが、海外でボランティアをはじめたきっかけです。

 

日本にいる時は、アフリカの人の役に立てればと思っていましたが、実際アフリカに行って支援をはじめると、どちらかというと、助けてもらったり、何かを与えてもらう経験のほうが大きくて……。帰る時にはアフリカに恩返ししなければいけないなと感じていました。

 

帰国してから、エイズやエイズ孤児に携わるボランティアをしたいとおもい、同じNGOに所属していたボランティアの仲間とPLASを立ち上げました。

 

エイズ孤児に活動を絞ったのは、支援自体が少なかったからです。特に日本でエイズ孤児に特化してやっている団体は多くありませんでした。

 

立ち上げたばかりのころは、あんまり反応が良くなかったです(笑)。7人で立ち上げたのですが、そのうち5名は学生で、「学生が本当にできるの?」と周りから半信半疑の目で見られていたとおもいます。ですが、活動を続けていくうちに、だんだんと協力してくれる人が集まってきました。

 

今は、ケニアの事務所に常時、日本人が少なくとも、1人が在住し、多い時は3、4人います。現地の日本人がプロジェクトを進めていくような形になっています。ケニア人のスタッフも3人いますね。建設する時には、大工さんを10人ほど一気に雇用する場合もあります。日本の事務所の方では、日本人が2人、あとはインターン生が6、7名いますね。

 

 

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―― PLASでは具体的にどのような活動をされているのでしょうか。

 

エイズ孤児支援をメインに、現在、ウガンダとケニアで活動をしています。実際の活動内容としては、現地でのエイズ啓発活動、エイズ孤児への教育支援活動、その他、国内でのイベント活動なども行っています。

 

すでにエイズ孤児になっている子ども達も支援対象ですし、これから生まれて来る子どもたちで、HIVに感染するリスクにさらされている子に対してもアプローチしています。HIVによって影響を受けた子どもたちが、笑顔でいられる社会をつくることがPLASのミッションです。

 

 

「お金がない」が理由じゃない!?

 

―― 啓発活動はどのようなアプローチをしているのでしょうか。

 

現地でのHIV/エイズの知識普及に力を入れています。その中でも特に母子感染に力をいれています。そもそも、HIVが母子感染するということも知らない人が多いんです。適切な医療を受けないため、本来防げるはずだった母子感染が広がっていくという現状があります。そのため、感性経路や、母子感染を防止するためにどうしたらいいのかという知識を伝えることは、非常に重要になってきます。

 

現在やっているプロジェクトでは、現地のリーダーに対しHIV/エイズの母子感染予防について研修を行っています。リーダーにはお母さん達もいますし、男性や学生も啓発活動の主体です。みなさんボランティアですが、積極的に活動に関わっていますよ

 

 

―― 現地の方からの反応はいかがでしょうか。

 

提携している病院からは、PLASの啓発を受けた一般の住民が病院に来てくれるようになったりとか、継続的に通い続けるようになったというお話を聞いていますね。

 

活動としては、地域の自治会の会合などで講義や啓発活動をしています。さらに、妊産婦検診時に病院に赴いて、順番待ちしているお母さんたちにエイズの話をレクチャーしたり、相談にのったりすることもあります。

 

そうすることで、「医療の力で、赤ちゃんへのHIVの感染を防ぐことができる」という知識を伝えることができますし、病院に通い続けよう、病院で出産しようという動きになってくるとおもいます。

 

 

―― 病院にいくお金が無いため、病院で出産しようとしないのではないのでしょうか。

 

病院にいかないのは、単純にお金がないことだけが理由ではないんです。現地では病院にいかない場合は、「伝統的助産婦」といわれる方を呼んで出産します。とはいえ、近所のおばさんといった、医療資格の無い方ばかりです。その人達が、家まで来てくれて、子どもを取り上げるんですが、その料金と病院での出産料金にほとんど違いがないケースが少なくなかったんです。

 

ですが、一般の人達は、病院での出産価格自体をしりません。安いから伝統的助産婦に頼もうと思っているのですが、結局、病院より高いお金を伝統的助産婦たちにとられてしまうということもあるんです。

 

その事実を伝えることで、選択肢が広がっていきます。それでも家で生みたいという方もいらっしゃるかもしれませんので、最終判断はもちろん尊重したいとおもいます。しかし、お母さんがHIVに感染している場合では、病院の方が母子感染のリスクが少ないことは確実です。

 

 

―― 啓発事業をするにあたり、大変だったことはありますか。

 

行政との連携をとりつけるまでが大変でしたね。行政と連携しなければ、スムーズに進まない部分が多くあるんです。たとえば、啓発するリーダーを決定するために、各地区で選挙を行っていましたが、それを実施するだけでも、とても苦労しました。今は県の保健省がパートナーに入って上手くいっています。

 

 

―― アフリカの慣習などとの兼ね合いはどうでしたか。

 

そうですね、たしかに地域全体で見ると男尊女卑と言えるのかもしれません。HIVに感染したら奥さんのせいにしてしまう男性もいました。とはいえ、考え方には個人差があります。高い教育を受けている男性は、比較的理解してくれるといった印象でした。

 

 

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―― 避妊道具を配るといった活動はしていないのでしょうか。

 

避妊具を以前は配布していましたが、現在はしていないですね。モノはそれなりにアクセスできますし、それよりも情報を発信することに重きを置いています。私たちは特にHIVに感染していてすでに妊娠している方たちにフォーカスを当てているので、どちらかというと、赤ちゃんができたあとのケアをしていると言えます。

 

 

―― どうして、ウガンダとケニアという地域を選んだのでしょうか。また、両国の間に地域差はありますか。

 

ウガンダとケニアを選んだのは、たまたま縁があったというのが一番大きいですね。ウガンダは、前の代表がボランティアをしていたり、ケニアでは私や他のスタッフも活動していたという経緯があります。

 

地域差はやはりありますね。ですが国ごとの差というよりも、部族ごとの差と言ってもいいのかもしれません。ケニアは経済的にも発展しているし、都市化していますので、首都をみても高層ビルが沢山たっています。ウガンダの方はケニアほど発展していません。私たちが接している人達はごく一部なので、けして一般化はできませんが、国民の雰囲気でいうならば、ケニア人の方がどちらかというと、ビジネスライクなところがありますね。ウガンダの人の方が素朴という印象です。ウガンダ人の方が英語が通じやすいと感じることが多いですね。

 

 

 

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