2020.09.28

ネット炎上の驚くべき実態――『正義をふりかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)

山口真一(著者)計量経済学

#SNS#炎上

正義を振りかざす「極端な人」の正体

著者:山口 真一
出版社:光文社新書

あなたは、このように思ったことはないだろうか。

「最近社会が不寛容になった」

「ネットは攻撃的な人が多く、怖いところだ」

確かに、SNSやネットニュースのコメント欄を見ると、実に多くの罵詈雑言に出会う。「コイツ頭おかしいだろ」などの誹謗中傷はもちろん、「死ね」などの、非常に直接的で攻撃的なワードを使う人も少なくない。今年5月には、ネット上の誹謗中傷を苦に、プロレスラーが亡くなってしまうという悲しい事件も起きた。

今月発売された拙著『正義を振りかざす「極端な人」の正体』は、社会にあふれるそのような「極端な人」について、様々なデータ分析結果からその正体を炙り出す本だ。本書では、

・なぜネット上で極端な意見が溢れているのか?

・「極端な人」はどれくらいいるのか?

・マスメディアはネット炎上にどう関わっているのか?

・「極端な人」とはどういった人なのか?

といった疑問について、様々な統計データから実態を炙り出している。

ごく少数のさらにごくごく一部の「極端な人」が多数を占める

例えば、ネット上での「極端な人」による書き込みは、実はごく少数の中の、さらにごくごく一部によるものであることを明らかにしている。

ひとたびネット炎上――ある人・企業に対し、ネット上に誹謗中傷や批判が殺到する現象――が起きると、世界中がその人を攻撃しているようにも見える。しかし、私が2014年と2016年に実施した2万人と4万人のデータを使った実証研究は、ネット炎上の驚くべき実態を示した。

なんと、過去1年間でネット炎上に書き込みをしている人は、ネットユーザ全体の約0.5%しかいなかったのである。さらにこれを炎上1件当たりに換算すると、0.0015%だった。0.0015%という数字はほとんど見たことがないと思うが、これは大体約7万人に一人くらいの割合だ。

しかも、書き込んでいるのがごく少数というだけでない。実は、そのごく少数の中のさらにごくごく一部の「超極端な人」が、ネット上の攻撃的な投稿の大部分を占めているという事実もある。

例えば、サイエンスライターの片瀬久美子さんが、「子供に淫売を強要」などと根も葉もないデマで長期間にわたり中傷された事件がある。この事件で書き込んでいたとして裁判となった男性は、なんと数百ものアカウントを作成し、そのアカウントを駆使して次から次へと片瀬さんへの誹謗中傷やデマ流布を繰り返していたのだ。

このような現象は、かなり一般的に起こっている。私は、炎上に書き込んでいる人を対象に、過去最も書き込みをした炎上案件でどれくらい書き込んだかを調査した。その結果、多くの炎上参加者は、1~3回という少数であった。イラッとして言及したのであろう。その一方で、ごく一部の人(3%)は、50回以上投稿していたのである。この回答結果について、グラフにしたものが図1だ。

1 炎上1件当たりの最大投稿回数の分布

図1では、左から順にその投稿回数が多かった人を並べており、縦軸は最大投稿回数を、横軸はサンプルの中の割合を示している。これを見ると、一部50回以上投稿しているような人もいるものの、ほとんどが1回、2回などの投稿となっていることが分かる。気を付けていただきたいのは、これはあくまで「ごく少数の書き込んでいる人の中での分布」ということだ。実際には、書き込み回数0回の人が大量に存在する。

結局、執拗な投稿をし、どこまでも追い詰めようとしている人は、ごく少数の炎上参加者の、さらにごくごく一部なのである。

正義感が「極端な人」を突き動かす

しかし、「極端な人」は少数ではあるものの、その社会的影響力は計り知れない。ネット言論の多くの部分をしめ、まるでマジョリティのような顔をしている。しかも、研究では60~70%の「極端な人」が、許せなかったから・失望したからといった正義感から他人を攻撃していることが分かっている。そう、各々の正義感から大量に書き込みをし、相手に社会的制裁を下しているのだ。

本書ではこのように「極端な人」の実態を解明していくだけでなく、それを踏まえての社会的対処方法や、「極端な人」にならないようにするための方法を提示している。

「極端な人たちがいる社会が生きにくい」と感じている人、「自分も極端な人になるかも」と心配している人。このような人には、是非本書をお読みいただき、ネット社会の実態を知ったうえで、今後自分はどうすれば良いのか、参考にしていただければ幸いである。

プロフィール

山口真一計量経済学

1986年生まれ。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師。2010年慶應義塾大学経済学部卒、2015年同大学経済学研究科で博士号(経済学)を取得し、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教を経て、2016年より現職。専門は計量経済学。情報社会において新しく生まれた社会課題やビジネスについて定量的な考察をすることを主としており、テレビ・ラジオ番組にも多数出演。主な著作に、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(共著、勁草書房)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房)などがある。

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