2017.07.10

リンパ浮腫患者が履ける靴をつくってほしい――私はこんな、困ってるズ!

marimoさんの困ってること

社会

「見えない障がい」をテーマにした情報共有メールマガジン「困ってるズ!」。様々な障がい当事者が、「どういう障がいなのか」「何に困っているか」をテーマにコラムを執筆。メルマガというかたちで、「伝えたい人」と「知りたい人」とをつなぎます。本日は「marimoさんの困ってること」をお届けします。 ※メルマガ「困ってるズ!」は終了しました。

私はこんな、困ってるズ!

私は57歳の主婦です。2年半前、子宮ガンを患い、子宮と卵巣、骨盤内リンパ節と腹部大動脈周辺のリンパ節を、手術ですべて取り除きました。幸い現在まで再発・転移はなく生きのびていますが、手術の後遺症であるリンパ浮腫を併発してしまい、日々の生活に不自由しています。

リンパ浮腫は、腹部のリンパ液の通り道がなくなってしまったために起こる足のむくみであり、通常のむくみとは別のものです。

また、むくんで足が太くなるだけでなく、つねにリンパ液が滞っているので、疲れやちょっとした皮膚のトラブルから感染症を起こすことがあります。たとえば、蚊にさされた、深爪をした、靴ずれ、水虫、ちょっとした切りキズ、しもやけや火傷をきっかけに、足全体が赤く腫れあがり高熱が出る蜂窩織炎(ほうかしきえん)を起こし入院することもあります。

さらに、発症後時間が経過するにつれて皮膚が固くなり、悪化すると皮膚がゾウの皮のようになる象皮病という状態になることもあります。

私はこんな風に、困ってるズ!

(1)履ける靴がない

まず一番困っているのは、履ける靴がないことです。左右差がある上、足甲や足幅が太くなっても足のサイズは変わらないので、合う靴を探すのが本当に大変です。長靴やブーツはほとんど皆無、大きめを選んでも足甲や足首が入りません。同じようにサンダルも足甲がつかえて入りません。運動靴にしても入るものをさがすのは大変です。

冬の冷えや夏の蒸れを防ぎ感染症を起こさないためにも、心の健康のためにも、履き易い、いろいろな種類の靴が欲しいのですが、現状ではまったくといっていいほどなくて困っています。

(2)足を休ませる場所がない

次に困っているのが、出先で足を休ませる場所がないことです。リンパ浮腫は長時間歩いたり、立っていたりすることが大変しんどい病気です。できれば少し歩いたり立っていたりしたら、しばらくの間でも足を投げ出して休みたいのですが、公共の場にそういう場所がありません。リンパ浮腫では足が疲れただけでも蜂窩織炎起こすことがあるので、じつはかなり深刻な問題なのです。

(3)リンパ浮腫の認知度が低い

じつはこれが一番困っていることかもしれませんが、リンパ浮腫というものが一般の方にまったく知られてないということです。私自身もガンになるまで知りませんでした。

婦人科ガンの手術をした人のうち3~4割の人が発症すると聞いているので、かなりの数の患者がいると思うのですが、みんないろいろな不便や不自由を抱えているのに、命が助かったんだから仕方ないとあきらめて我慢しているのです。

乳ガン後の下着や乳房再建への知識や理解はある程度進んでいますが、リンパ浮腫は改善方法が少なく、一生足に鉛をつけている状態や感染症のリスクが続く大変さに比べてほとんど知られていません。認知が進まないため、靴をはじめとしたいろいろな問題への改善が進まないことが、困っていることの根源にあると思っています。

こうなったら、助かるズ!

(1)靴をつくってください

むくんでいる人にも履けるいろいろな(デザインも含めて)靴を作って欲しいです。リンパ浮腫でなくとも、足がむくみ易かったり足にトラブルを抱えている方は多いと思います。どうか健康な人のためだけでなく、ハンディのある人のための靴を真剣につくってください、とお願いしたいです。

読者の中に靴メーカーの方がいるかわからないのですが、リンパ浮腫患者に聞くと、靴問題が一番の要望なので、どなたか興味を持ってくださる方がいればなあ、と思います。

(2)休憩室とハンディ席をつくってください

公園や商業施設、美術館などの展示施設に休憩室があったら助かります。足を投げ出して座ったり、ちょっと横になって休んだりできるスペースがあったら安心して出かけられます。リンパ浮腫患者に限らず、他の障がいのある方やお年寄りも助かると思うのですがいかがでしょう。

それから、いろいろな施設や公園に「ハンディのある人席」を作って頂けたら助かります。「優先席」もあったらいいのですが、「優先席」だけだと公園などでは子ども連れの家族や年配の方に、言葉は悪いですが占領されてしまい、リンパ浮腫をはじめ外から見えにくい障がいの場合、なかなか利用できないという声があります。

これはイスに表示するだけですぐできることなので、いろいろな場所で検討して頂けるとありがたいです。

(3)周りの方に、リンパ浮腫を伝えてください

リンパ浮腫の認知が進めば、今回書いたことをはじめ、いろいろな問題に対する社会の対応も変ってくるのではないかと思います。乳ガンの方たちが乳房を失うことの大変さを訴え続けたことで下着の改良や乳房再建の進歩があったと思うので、私もリンパ浮腫について一人でも多くの方に知って頂きたいと思い、今回この文章を書かせて頂きました。

機会がありましたらぜひ周りの人たちにもこんな病気、障がいがあることを伝えていただけたらありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

※リンパ浮腫は前立腺ガン手術後の男性の方、乳ガン手術後の方(この場合腕の浮腫)、また数は少ないですが生まれつきの原発性の方もいらっしゃり、それぞれ困難を抱えていると思いますが、今回は私のことを中心に書かせていただきました。