経済成長も、再分配も――消費税増税延期が及ぼす影響とは?

▶シノドスの電子メールマガジン「αシノドス」

https://synodos.jp/a-synodos

▶英語の「話し方」教えます!「シノドス英会話」

https://synodos.jp/article/23083

政治的なプレゼンスを高める

 

荻上 今回の点検会合みていると、参加した業界団体などの陳情になっている場面もあります。例えば連合は増税に賛成の上で、最低賃金をあげて欲しいと主張している。

 

それでも、空気が変わったかなと感じたのは、参加者のほとんどが、景気への悪影響を認めつつ、何らかの低位所得者対策の必要性を訴えていた点です。その中に、「増税してもいいけれど、低所得者対策は必要ですよ」というトーンの方と、ぼくみたいに「低所得者対策をちゃんとしてから、増税を議論しましょう」という人がいる。

 

ぼくとしては、この順番は、政治的にかなり重要です。先にやってくれないと信用できない。「増税賛成」だけをメッセージとして受け止められると、これまた「やるやる詐欺」の可能性だってありますから。

 

駒崎 よーくわかります。

 

荻上 低所得者対策を優先して延期しろというプレッシャーと、少子化対策に予算をちゃんとつけろというプレッシャーって、表面上はバッティングしているように見える。でも、根底では一致していると思うんですよ。増税は延期するけど、少子化対策には国債を発行して予算を確保するし、低所得者対策もするということになれば、この3人では合意ができるわけですよね。

 

飯田 まさにそれでいうと、言葉遣いの問題になりますが、消費税増税で財源ができたので少子化対策に予算をあてるというイメージでとらえるのは……。

 

駒崎 非常に危ないですね。

 

飯田 必要なもののために今回は消費税あげたんだよねってはっきり言わないといけない。そしてその財源は消費税でも所得税でも相続税でもよい。

 

戦術的な話になりつつあるので参考までにお話すると、リフレ派がここまでプレゼンスを持てるようになったのは、他の主張がどれだけ違っていても「金融緩和すべし」と考えている人が集まることができたからです。政治家への浸透度を高めるには、裏側ではドロドロしていたとしても、とにかく一枚岩のような面をしておいた方がいい。そうすると必ず「話を聞きたい」という政治家が少しずつ増えていくんですよ。少子化対策の看板を背負って立ちたいという議員が与党担当可能な政党からうまれれば、流れはさらに変わってくるのかな、と。

 

駒崎 おっしゃる通りです。

 

飯田 政権と真逆のことをいうと、共助から公助に戻してく必要があると思います。そのためには市民運動だけでなく、がっちり組織された圧力団体がないといけない。

 

荻上 組合団体とかですか。

 

飯田 組合団体かもしれないし、業界団体かもしれない。各業界団体って、例えば農水ならこれまで多くの選挙で2名は参議院に議員を出していますね。

 

駒崎 医療系も。

 

飯田 ええ、参議院に限らず政治的なプレゼンスは高めていかないといけない。

 

 

手を組めるところは手を組む

 

駒崎 先ほどの議論を延長させると、リフレ政策と社会保障を拡充させることは矛盾していないと思うんですね。消費税を増税するタイミングについて戦術的な違いはあるにせよ、経済成長も再分配もガンガンさせて、良い国を作ろうよという部分では共闘できる人たちがいる。

 

飯田 そうですね。リフレ派の中には主張の中核が現実になったために、新しいステップに踏めた人と踏めなかった人がいるように見えます。この先の指針を探している段階の人もいるんじゃないかな。

 

荻上 以前はリフレ派は、民主党にアプローチしていたのですが、思わぬタイミングで安倍政権が金融緩和を行った。民主党下で「リフレ左派」の意見が通っていれば、再分配のために経済成長という文脈が共有されたかもしれませんが、「リフレ右派」の勝利となったことで、富国強兵のためといったイメージを持つ方もいるでしょう。

 

駒崎 ああ、なるほど。ぼくは、「再分配のための経済成長」ですね。

 

 

photo1

 

 

荻上 今回の点検会合では、伊藤隆敏さんの発言が気になりました。伊藤さんは、いま消費税増税をするべきだと考えている方がいるんですが、先送りすることになると法案を通さなくてはいけないから政治コストがかかる、そんなことするくらいなら集団的自衛権の議論を優先すべき、とのことです[*1]。

 

[*1] http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/tenken2014/01/shiryo01.pdf

 

駒崎 えっ集団的自衛権?

 

荻上 そう。

 

飯田 伊藤隆敏先生としては経済問題よりも集団的自衛権のほうが優先度は高いということですね。

 

荻上 彼のイデオロギーなのか、安倍さんに受けると思っての戦略的なプレゼンなのかはわかりませんが。

 

今は安倍政権は、経済政策を最重要課題としています。脱デフレが実現したときには、特定の政治意識がより強くなっていくでしょうが、その中で再分配の議論が変わらず低調である可能性もある。だからこそ、今の議論はとても重要です。どんな社会を実現したいか、そのためにいかなる手段で実現するか。丹念に議論しながら、進んでいくしかありませんね。今日はこうして、お会いできてお話できたことをうれしく思います。

 

(2014年11月14日収録)

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

・外山文子「タイは民主化するのか?」
・中西啓喜「データサイエンスは教育を「良い方向」に導くのか?――学級規模の縮小を例として」
・笠木雅史「実験哲学と哲学の関係」
・穂鷹知美「求む、国外からの介護福祉士――ベトナムからの人材獲得にかけるドイツの夢と現実」
・久木田水生「ロボットと人間の関係を考えるための読書案内」
・吉野裕介「【知の巨人たち】ハイエク」
・内田真生「ヒュッゲ(Hygge)とは何か?――デンマークが幸せの国と言われる理由」