日本経済停滞の脱出策を政治学から考える ―― 選挙と利益誘導の関係

「望ましい政策」がなぜ実行されないか

 

経済学を勉強したことのある人なら、ある特定の目的があるときに、どのような政策手段を採用すればいいか、よくわかっているはずです。しかし、社会的に望ましいと考えられる政策がなぜ採用されないか、これを考えるためには、誰が政策を決めているか理解する必要があります。

 

ともすると日本は官僚主導型の政治体制だと思われがちですが、こと利益誘導と経済政策に関するかぎり、与党の関与は無視できません。また官僚の人事権は最終的には与党にあるわけで、官僚もそのことを念頭に振る舞っていると考えられます。

 

ここで考えて欲しいのですが、

 

(a)経済成長には望ましいが、選挙で勝つ上で不利な政策

(b)経済成長はもたらさないが、選挙で勝つ上では有利な政策

 

以上2種類の政策があったとします。

 

長期間日本の政治システムを観測した場合、生き残るのは(a)を選ぶ政治家と、(b)を選ぶ政治家のどちらでしょう?いうまでもなく、(b)タイプの政治家が生き残ることになります。そして当然ながら、(b)タイプの政策が実行されることになります。

 

ミクロ経済学で登場する企業は、利潤を最大化する主体として登場します。なぜかといえば、それは現実の企業の行動が利潤最大化に似ているからというよりも、 利潤を最大化しない企業はどんどん市場から姿を消していくからです。政治家にも同じことがいえます。たとえ優れた見識をもつ政治家でも、選挙で勝てなけれ ば政治家でありつづけることはできないのです。

 

自民党は、1955年から2009年まで、ほぼ途切れることなく政権の座にありました。そのため、経済政策は自民党が政権の座に留まることを妨げないことを前提に、選ばれたといって過言ではありません。

 

これから Synodos の場をお借りして、自民党が選挙で勝ちつづけるために、どのようなかたちで政策がねじ曲がったのかを分析していきます。政権交代が起こったからとはいえ、 非常に残念ながら現在の民主党の政策が、経済停滞からの脱出につながると自信をもっていえる状況ではありません。

 

最近の政策議論も踏まえながら、持続可能な経済成長と整合的な政策を取るためにどのようにすればいいのか、これを可能にする制度的枠組みにはどのような方向性が考えられるのか、考えていきたいと思います。

 

なお自民党政権について、より学術的な議論については、拙著『自民党長期政権の政治経済学』をお読みいただければ幸いです。

 

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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