選挙よ、これからどこへ行く――ネット選挙から公職選挙法まで語りつくす

ネット選挙が解禁となった7月の参院選。選挙はこれからどう変わっていくのか。選挙の最前線で活動をする選挙プランナー松田馨氏と、荻上チキが語り合う。(構成/山本菜々子)

 

 

ネット選挙解禁

 

荻上 前回の選挙では、初めてネット選挙活動が解禁されました。選挙プランナーとしては、いかかでしょうか。面倒事も増えたと思いますが(笑)。

 

松田 解禁前と比べるとやることが増えて大変でした(笑)。ネット選挙解禁にあたって、マスコミの報道には、大きく二つのパターンがあったと感じています。一つは、誹謗中傷やどのような被害が起こるのか、というネガティブな側面を強調するもの。ネット選挙によって、誹謗中傷やなりすましといったトラブルが起こるという論調が非常に多かった。もう一つは、オバマ大統領が展開したアメリカ大統領選挙のイメージからくる「ネットを使えば簡単にムーブメントが起こせる」というもの。こうした報道の影響で、現場は漠然とした不安と期待が入り混じっていました。

 

荻上 大雑把な悲観論と楽観論に揺れていましたね。選挙公示前は、ネット選挙解禁によって現実的にどのように変わるのかといったテクニカルな話はほとんどされませんでしたし、公示後にも、各党がどういった取り組みをしているのか紹介されませんでした。マスメディアの選挙報道では、中立的に紹介することに重きを置いているので、各党のユニークな事例を紹介することは基本的にできません。具体論をメディアが取り上げにくいので、全体的に盛り上がりに欠けた印象でしたね。

 

ぼくが、ネット選挙で感じたのは、継続性のなさです。選挙ツイッターが選挙後に更新されなくなり、各党もLINEから撤退してしまうなどです。その時だけやるけれども、選挙が終わったらすぐにたたんでしまう。本来ならば継続的にやらなければいけませんよね。

 

松田 おっしゃるとおりです。ネットの活用には継続性が非常に重要なんですが、政党も候補者も選挙期間だけで終わってしまうものが多く、残念でした。

 

特に政党が公式アカウントを開設したLINEについては、新規のフォロワーも多く一定の効果があったのではないかと思います。単純にLINEのユーザー数が多いこともあると思いますが、TwitterやFacebookでは他人からどの政党をフォローしているのかが簡単に見えてしまうのに対して、LINEは特定の政党をフォローしていることが他人からは分からない。日本人の感覚として、まだまだ政治と宗教の話はタブーなので、特定の候補者を応援していることを大多数に表明する形式は、まだまだ浸透しづらいのかなと思います。有権者に特定の政党や候補者の発言をリツイートしたり、「いいね!」を押すことに対する抵抗感はあったと思います。

 

 

松田×荻上

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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