中国再生可能エネルギー事情を読み解く

4.主力の水力発電

 

中国国内で従来から導入が進められてきた水力発電は、水路式の小水力発電からダム建設を伴う大規模なものまで年間導入量(2016年)が1400万kW程度あり、2016年末までには累積の設備容量が3億kWを超えて圧倒的な世界第一位の規模である。水力発電は中国の全発電量の約20%を賄っており、その発電量は日本の全発電量に匹敵する。

 

さらに蓄電の機能を持つ揚水発電の導入も進んでおり、すでに日本と同規模の2700万kWが導入されている。中国は熱利用の分野でも太陽熱の導入量では世界第一位となっている。熱利用分野での再生可能エネルギーへの転換は中国でも大きな課題となっており、すでに普及が進んでいる地域熱供給や工場などのエネルギー源としてバイオマス等の高効率な利用が期待されている。

 

 

5.着実な風力発電の発展

 

中国での水力以外の再生可能エネルギーによる発電への本格的な取り組みは約10年前の2005年頃に始まり、その年に策定された中国の再生可能エネルギー法により固定価格買取(FIT)制度が2006年1月から施行され、風力発電の本格的な導入が始まった。2010年にはアメリカを抜いて世界第一位の風力発電の設備容量となり、2016年末までには1億6800万kWの大台に達している(GWEC調べ、図3参照)(注4)。

 

風力発電については、第12次五か年計画において2015年までの導入目標だった1億kWを超えて、第13次五か年計画では2020年までには2.1億kWの導入を目指している。さらに、中国の風力発電の業界団体では2030年に4億kW、2050年までには10億kWを目指すとしている。

 

一方で、2016年末の時点では風力発電が多く導入されている中国北西地域などの電力系統の整備が課題となっており、一部の新規風力発電設備は送電ができずに約17%も発電量が抑制される「棄風」という状況が発生し、実際に運転を開始している風力発電設備は1億4900万kWに留まっている。それでも風力の年間発電量(2016年)は中国全体の発電量の4.0%に達しており、東部の電力需要地と結ぶ送電網の整備も進み始めている。さらに東部沿岸部での洋上風力発電の導入にも力を入れ始めており、2020年までには3000万kWの導入を目指している。

 

(注4)ISEP「自然エネルギー・データ集」 http://www.isep.or.jp/archives/library/9570

 

 

図3:中国国内の風力、太陽光および原子力発電の設備導入量の推移
(出所:IRENA, China Energy Portalのデータより筆者作成)

 

 

6.急成長する太陽光発電

 

一方、太陽光発電については、中国はすでに2007年頃には太陽電池モジュールの生産量で世界第一位となっており、世界の約7割のシェアを持っている供給大国である。国内への太陽光発電の導入については、導入コストの高さから遅れていたが、世界的な導入コストの低減に伴い、2012年以降に様々な制度の改正があり、2016年には一年間で約3400万kW以上の太陽光発電設備が導入され、2016年末までに7700万kWに達した。いまや世界全体の太陽光発電設備の年間導入量のほぼ半分が中国国内の市場となっている。

 

すでに2015年から中国は年間導入量でも累積導入量でも世界第一位だったが、累積導入量4200万kWで世界第2位の日本と比べても、その規模の大きさがわかる。2017年も中国政府の普及政策やコストの低減を受けて大量の太陽光導入が進んでおり、9月までに4300万kWの導入実績、年間で5400万kW以上の導入量に達したとの推測も出ている(注5)。

 

太陽光発電設備の大部分はFIT制度の支援による事業として導入され大規模なものが多いが、中国中央政府や地方政府は農村部の貧困対策としても太陽光発電に力を入れており、地方金融機関によるファイナンスと共に太陽光発電の導入を進める支援プログラムがある。中国の第13次五か年計画では2020年までに1億kWの太陽光発電の導入を目標としており、2030年には3億kWに達するロードマップも描かれているが、すでに2017年末の段階で2020年の政府目標を超えたことになる。

 

(注5)Bloomberg News “China on Pace for Record Solar-Power Installations” 2017年11月20日

 

 

7.再生可能エネルギーの将来

 

中国国内の全発電量に占める再生可能エネルギー(バイオマスを除く)の割合は、2016年には24.5%に達しており、水力が19.3%を占めるが、風力が4.0%、太陽光が1.1%となっている(図4参照)。原子力発電については、2016年の時点で全発電量の3.6%だが、2012年以降、風力の発電量を下回っている。

 

2008年の時点では再生可能エネルギーの割合は全発電量の約17%だったが、そのほとんどが水力発電だった。一方では、経済成長に伴って国内の全発電量が急速に増加しており、2008年の3.5兆kWhから2016年には倍近い6兆kWh(日本国内の全発電量の約6倍)に達している。発電量全体の大幅な増加にもかかわらず、それを上回るスピードで再生可能エネルギーの導入が進んでいる。

 

さらに中国政府の再生可能エネルギー政策に関するシンクタンクである国家再生可能エネルギー研究センター(CNREC)では他の研究機関と共同で、2050年までに発電量全体の85%以上、一次エネルギー全体の60%以上を再生可能エネルギーで賄う長期エネルギーシナリオおよびロードマップを発表している(図5参照)(注6)。

 

この長期シナリオでは、一次エネルギー需要が現状とほぼ同じレベルに抑えられる一方、発電量については現状(2015年)の約2.5倍に達すると想定している。風力発電でその約35%、太陽光発電で約27%を賄うシナリオとなっており、電力系統の増強やそれらに伴う費用や経済的な効果についても考慮している。

 

このように中国はいまや再生可能エネルギーの分野では研究、技術開発、人材、生産量、導入量、導入目標いずれの点でも世界をリードする存在となってきており、アジア最大の市場として欧州各国からも注目されている。さらにその影響力は、これから再生可能エネルギーの本格的な導入を進めようとしているアジア各国にも広がっている。日本国内でも3.11以降に明確になった再生可能エネルギー市場の多くの課題を克服することで、日本国内の豊富な再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを生かし、100%再生可能エネルギーに向けた本格的なエネルギー転換を長期的に実現しながら、アジア各国とこの分野で様々な連携をしていくことが可能なはずである。

 

(注6)CNRECほか “China 2050 High Renewable Energy Penetration Scenario and Roadmap Study” http://www.cnrec.org.cn/english/result/2015-05-26-474.html

 

 

図4: 中国国内の年間発電量および発電量比率の推移(出所:China Energy Portalより筆者作成)

図5: 高位シナリオでの中国国内の発電量の推移(出所:CNREC)

 

 

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