データに騙されないための3つの方法――「社会実情データ図録」管理人に聞く

楽しくて寝てられない!

 

飯田 いま儒教のお話がでてきましたが、日本人ってどうしてこんなに悲観論が好きなんでしょうね。例えば、本川さんのサイトにも本にも書かれている、日本の特許数の話ってみなさん意外なんだと思うんですよ。

 

本川 そうですか? 意外だということが意外ですねえ。そりゃぼくも東京がシリコンバレーより特許数が多いのは驚きましたけど。東京が多いのは本社で特許申請をするから多いのかもしれませんね。それにしても多いけど、でも、アメリカの総合力にはかなわないですね。

 

 

「世界のテクノポリス地域」

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5950.html

 

 

飯田 対人口で置き換えたらかなり頑張っていますよね。

 

本川 このグラフって80年代前半のハイテクブームの頃だったらみんな引用したんでしょうね。「ほら、さすが世界に冠たる日本だろ」って。いまは自信をなくしてしまっているから意外なのかもしれませんね。でもそんな酷いはずないんですよね。

 

飯田 ええ、そう思います。どうも悲観になりがちだと思う。

 

「国の競争力が失われたんだ」「日本にはもう比較優位がない」みたいな話があります。ぼくは大嫌いな議論なんですけど(笑)。あと「失われた20年」の経済論争でも、「日本企業の生産性が落ちたことが原因だ」という議論があるんですね。80年代まで高かった生産性が、どうしてがけを落ちるように下がるのか、ぼくにはわからないんですけど。

 

本川 大きなトレンドで動いているんだから、急に良くなったり悪くなったりするわけがないですよね。技術だって経済だって生き物なんですから。

 

飯田 あと「日本人の睡眠時間が短いのは、働きすぎだからだ」という議論を耳にしたので、連載を持っている週刊誌「SPA!」で検証してみたんです。ウェブで、一日あたりの平均労働時間と睡眠時間などを、300人にアンケートをとってみました。そしたら他の要因をコントロールしてみても、まったく関係がなかった。むしろ若い人の場合、プラスの相関が微妙にあったりして。たくさん働いている分、疲れ果ててたくさん寝ているんだと思うんですけど。

 

本川 そもそも一人あたりの労働時間ってそんなに増えていないですよね。

 

飯田 ええ、むしろ週40時間労働制の影響で短くなっていますね。

 

本川 パートタイムを除いても増えていません。ぼくも時系列で睡眠時間の推移を見ていますけど、睡眠時間が減っているのは、労働時間が増えているというよりは、趣味にあてる自由時間が増えているからなんだと思いますよ。

 

 

 

 

飯田 体を使った仕事が減っているので、たくさん寝なくても大丈夫になったのかもしれませんね。

 

 

裕福なわりに幸福を感じない儒教国

 

飯田 悲観論でいうと、典型的なのは幸福度ですよね。

 

本川 幸福度については、世界価値観調査をつかって、「幸せはお金で買えるか(所得水準と幸福度の国別相関)」というページを作っています。

 

 

 

 

ぼくは勝手に「片相関」という理屈で考えているんですけど、つまり所得の低い国は幸せなところもあれば不幸せなところもあり、所得が高くなると、不幸せな人が少なくなるという傾向がある。

 

飯田 先進国は一様であるが、途上国はそれぞれであるということでしょうか。貧しくても幸福というケースはあるが、やはり豊かだと不幸ではなくなるという……。

 

本川 極端に不幸という状態にはならないということかもしれません。所得水準は高くないけれど、すでに幸福度の高いマレーシアは、これから所得が高くなると右肩上がりで幸福も上がっていくかというと、おそらくそうではないんでしょうね。

 

それをね、今度はアジアバロメーター調査を使って、「幸せはお金で買えるか(アジア版)」を作ってみたんです。

 

 

 

 

飯田 おお、モルジブは幸福そうですね、なんとなく(笑)。

 

本川 やっぱり「片相関」になっているんですね。でも例外の国がある。それがシンガポール、日本、韓国、台湾。つまり所得の割には幸せになれない連中(笑)。儒教国はそういう傾向があるのかもしれないですね。

 

飯田 豊かになったことへの罪悪感があるのかもしれませんね。

 

本川 ブルネイみたいになっちゃえばいいのにね。「俺たち金持ちだし、楽しい!」って(笑)。

 

飯田 ですよね(笑)。そっちのほうが楽しそうなのに。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

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