沖縄から、LGBTが生きやすい社会をめざして

2013年、沖縄でピンクドットというイベントが行われた。このイベントは2009年にシンガポールで始まったLGBTのためのイベントだ。LGBTについては、渋谷区で同性カップルに結婚に相当する関係であるという証明書を出す条例が話題になっているが、現在の日本は、LGBTへの理解が深まり、生きやすい社会になっていると言える状況ではない。東京、そして沖縄で、長くLGBT関連の活動にたずさわってきた砂川秀樹さんに、これまでのピンクドット沖縄について、そして今年の開催に向けて、話を訊いた。(取材・構成/村山幸)

 

 

――ピンクドットというイベントは、プライドパレードと同じく、LGBTの人たちがより生きやすい社会をめざすイベントですが、どう違うんでしょうか。

 

パレードと違って広場で集まってそこで一緒に過ごすので、ゆったりできて、つながり感みたいなのが持てるかなと思います。パレードでは参加するかどうかがはっきりしてしまいがちですが、広場で集まるだけなら遠巻きに見ているだけという参加の仕方もできるので、比較的敷居が低い気がしています。地方では、パレードのような主張感の強いものは、当事者もメッセージが投げかけられる側もイヤがる人が多いかもしれないと思ったので、ピンクドットというかたちにしたんです。

 

 

昨年のピンクドット沖縄でステージに立つ砂川秀樹さん(撮影:木下幸二)

昨年のピンクドット沖縄でステージに立つ砂川秀樹さん(撮影:木下幸二)

 

 

――砂川さんは沖縄出身で、いまは沖縄で活動されていますが、その前から東京でLGBT関係の活動をずっとされていたんですよね。

 

大学のときは3年間山梨にいたんですけど、それから21年間は東京にいました。1990年からHIV/エイズの民間団体に参加して、HIVに長く関わり続けてました。2000年からパレードに関わって、いろいろ紆余曲折ありつつ、2010年のパレードも代表だったので、10年間ぐらいパレードに関わっていました。

 

 

――東京での活動と沖縄での活動と違いを感じることはありますか。

 

沖縄は小さいので、ピンクドットのような大きなイベントをやったり、僕自身がカミングアウトして活動したり、何か動きがあると社会に対して影響が及びやすいところがあります。実際、今年2月の那覇市議会でも3人の議員がLGBT関係の質問をして、そのうちの2人はピンクドットというのがあってという話をしてくれたので、影響は強く出ていると思いますね。

 

 

――一昨年、最初のピンクドット沖縄は、日本で初めてのピンクドット、そして沖縄で初めての野外での大がかりなLGBTイベントだったそうですね。実際に開催してみての感想は?

 

参加してくれたフリージャーナリストの女性の方は、沖縄に風穴が空いたような気がすると言ってくれました。それは、LGBTを顕在化するということでものすごくインパクトを与えられたということがあるんだけど、もうひとつは、新しい表現方法を提示できたということかと思います。市民活動やボランティア団体のイベントは、そんなににぎやかでなかったり、仲間内だけが集まったりになりがちだけど、ピンクドット沖縄は多くの人を集めて華やかにできたので、そういう表現の仕方があることを提示できたという面もあると思います。

 

 

――当事者の方、そうでない方の両方が参加されたり、そういうオープンな感じは自然に生まれたんですか。

 

ピンクドットが始まったシンガポールは、LGBTに対して行政などが厳しいところなので、もともとピンクドットも当事者が集まるというよりは、(当事者の)周りの人が集まりましょうみたいなニュアンスで宣伝していたんです。そのことで、当事者も含めて集まりやすい雰囲気を作ったんだと思いますね。だからピンクドット沖縄も、LGBTの人たちがより生きやすい社会にしたい、そういう想いを持っている人が集まるものですよって繰り返し説明をしていきました。だから当事者じゃなければいけないと思わなかった人が来てくれたのかなと思います。

 

 

同性愛者の若者が将来をイメージできるように

 

――去年は、沖縄出身で、いまはカナダで結婚している金城一樹さんと、そのパートナーであるハロルド・チャペットさんを呼んで、里帰り結婚式をおこないました。そういう企画をしようと思ったきっかけは?

 

THE GAY MEN PROJECTというゲイの写真を撮っている人のプロジェクトに、金城さんの写真が掲載されていたんです。沖縄出身で、海外で結婚して、ネット上に顔を出しているのはすごいなと思ったんです。同性愛の若い子が、沖縄で将来どうやって生きるかはイメージしにくいと思うので、彼のように同性パートナーと結婚して、幸せに暮らしていけるというのを示せたらいいかなと思って、相談を持ちかけたんですね。

 

 

――日本のように、同性婚という選択もなく、同性愛そのものがそこまで可視化されていない状態だと、やはり将来の生活は思い描きにくいものなんでしょうか。

 

最近は同性カップルで結婚式を挙げる人も増えているので、ある程度の年代でコミュニティにアクセスして、いろんな情報を得ている人は自分の将来のイメージがつかめるかもしれないけど、若い子たちはあんまりそういう情報にも触れてなかったりするみたいなんですね。

 

いまも県内の高校生からメールで相談を受けているんだけど、彼は将来がどんな風になるのか全然想像つかないと言ってるんですね。パートナーと一緒に暮らすのか暮らさないかも、イメージがつかめないと。だから、ピンクドット沖縄で里帰り結婚式をすることで、結婚するという可能性があることが伝わればいいかなと思ったんです。

 

 

里帰り結婚式をおこなった金城一樹さんとハロルド・チャペットさん

里帰り結婚式をおこなった金城一樹さんとハロルド・チャペットさん

 

 

――私も参加していましたが、とてもいい雰囲気で結婚式がおこなわれましたよね。新聞やテレビでも報道されたそうですが、強いインパクトを残せたのではないですか。

 

ゲイのカップルがキスしているところが、日本の新聞やテレビのニュースみたいなもので報道されたりすることはないと思うので、影響は大きいんじゃないかな。同性でキスしているだけで気持ち悪いと言う人もいるじゃないですか。それは理論ではなかなか納得させられることができない面もあるんだけど、結局は見慣れているか見慣れてないかということでもあると思うんですね。ああいう同性カップルの姿が皆の目に触れれば、ずいぶん変わるんじゃないかなと思います。【次ページにつづく】

 

 

シノドスの運営について

 

シノドスは日本の言論をよりよくすることを目指し、共感してくださるみなさまのご支援で運営されています。コンテンツをより充実させるために、みなさまのご協力が必要です。ぜひシノドスのサポーターをご検討ください。

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

98_main_pc (1)

 

 セミナー参加者募集中!「対話/ダイアローグから見た精神医学」植村太郎(12月16日16時~18時)

 

 

無題

 

vol.233 公正な社会を切り開く 

 

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」

 

vol.232 芸術にいざなう 

 

・吉澤弥生氏インタビュー「人をつなぐ芸術――その社会的評価を再考する」

・【現代演劇 Q&A】長瀬千雅(解説)「時代を捕まえるダイナミクス――現代演劇事始め」

・【今月のポジ出し!】橋本努「タックス・ヘイブン改革 香港やシンガポールにも圧力を」

・増田穂「『知見』が有効活用されるために」

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.233 特集:公正な社会を切り開く

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」