高橋克也被告裁判・証言草稿──地下鉄サリン事件20年に際して

地下鉄サリン事件から20年──「最後のオウム裁判」に際して

 

最後に第五点として、簡単に結論を述べます。これまで何度か申し上げたように、私たちは現在、地下鉄サリン事件から20年目という節目の年に、最後のオウム裁判に立ち会っています。そして、ここまで裁判が遅れた何よりの理由は、言うまでもなく、平田信被告、菊地直子被告、そして高橋被告が、およそ17年にわたる逃亡生活を続けていたからです。

 

それでは、高橋被告を含む三人は、そもそもどうして逃亡を続けたのでしょうか。もちろんそこには、罪や責任から目を背けて平穏な生活を送りたいという利己的な動機があったことは否定できないでしょう。

 

しかし、その他の大きな理由として、結局のところオウムにおいて追求された理想はどこまでが正しく、どこからが誤っていたのかということが分からない、また、現在の日本社会において、オウム事件を冷静かつ理性的な態度で裁いてもらえるのかということに確信が持てない、という要因も存在していたのではないかと私は思います。

 

私はまだ、高橋被告と直接言葉を交わしたことがあるわけではありませんが、弁護人やその他の方々からは、高橋さんは口数の少ない朴訥な人格であると伺っています。若い頃の高橋被告は、日々の生活を過ごすうちに、人はそもそも何のために生きているのかという基本的かつ根源的な問いに捕らえられ、次第に思い悩むようになり、最初に阿含宗に入信しました。

 

しかし、そこでは明確な答えを得ることができず、87年からオウム真理教に入信し、以降は出家修行者としての活動を続けることになったのです。

 

冒頭で申し上げたように、私はオウムの幹部であった上祐史浩氏を対談したことがあるのですが、そのとき上祐氏は、出家修行者としての活動を続けていた日々のなかで、自分が目指していることは本当に正しいのかという疑問を抱かなかったわけではなかった、と述懐していました。

 

しかしその際には、日本の名だたる宗教学者のみならず、チベット仏教の高僧を始めとするさまざまな宗教者たちが麻原彰晃を高く評価し、グルに従うよう助言したこと、また、その他のさまざまな知識人や文化人もオウムの活動を肯定的に捉えていることを想い起こし、湧き上がる疑問を打ち消していたとのことです。

 

ところが、地下鉄-サリン事件を契機にオウムの数々の犯行が暴露されると、こうした人々のほとんどがオウムから目を背けて口を閉ざす一方、オウムの特殊性や異常性のみを言い募る論調が支配的となっていきました。果たして、長期にわたってオウム事件から「逃亡」し続けたのは、高橋被告だけなのでしょうか。

 

高橋被告は当時、あくまで末端の信者の一人であり、事件の全貌を知り得るような立場にはいなかったこと、むしろ事件の全貌を見渡し、適切な裁定を下す役割は、20年後の現在、改めて事件に向き合っている私たちに委ねられているということを申し上げ、私からの証言を終わらせていただきます。

 

 

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