学校よりシフトが大事だ!――蔓延する「ブラックバイト」の実態

荻上 なるほど。ここまで、「ノルマ」だとか「パワハラ」「セクハラ」という言葉が出てきました。佐々木さん、「ブラックバイト」の類型というのは、どういうものがありますか?

 

佐々木 まず、よくあるのが「無賃労働系」。給料を払わずに働かせる、というものですね。全くタダで働かせるというケースはそう多くはありませんが、例えば「罰ゲーム」を課すというやり口があります。

 

ノルマを課して複数のチームに競争させ、負けたチームには1時間なり2時間なり、「罰ゲーム」として外で客引きをさせる、というものですね。あとは、時給の計算を15分単位で切り捨ててしまうだとか。

 

次に、「ノルマ系」。過酷な競争を強いたり、買い取り強要=いわゆる「自爆営業」をさせたりというものです。

 

あとは、「罰金・損害賠償系」。遅刻すると5000円罰金だとか、欠勤すると10000円罰金だとか、時給よりもはるかに高い金額を罰金として請求されるというケースが多いですね。仕事のちょっとしたミスを原因として、損害賠償を請求するというものもあります。

 

あとは「退職妨害」、「パワハラ」、「セクハラ」、それから「シフト系」でしょうか。シフトに入る事を強要するというものです。

 

荻上 他にも様々なメールをいただいております。

 

「高校の時、個人経営の工場でアルバイトをしていました。鉄骨に塗装するのがおもな仕事だったのですが、作業場には冷房などなく、屋外での作業もあり、いつも汗まみれでした。さらに作業服は支給されず、私服で仕事をしたので塗料で服が汚れ洗濯しても落ちませんでした。それに見合った報酬の額だったのかは判断できませんが仕事環境や条件面を考えると「ブラックバイト」だったのでは、と思ってしまいます」

 

「私は地元のセルフガソリンスタンドでアルバイトをしています。週に1‐2日で、夕方から閉店まで。仕事内容は車の誘導、操作説明、給油や、監視をしています。宮城県の最低賃金は時給710円ですが、私の仕事は危険物取扱いの資格も持っていますが680円です。また、閉店時間が22:00なので伝票整理などがあり、実際に帰れるまでそれから15分くらいかかります。しかし、22:00ぶんまでの換算しかされません。アルバイト先に時給との差額を請求すれば払ってもらえるのでしょうか?」

 

坂倉 最初のメールについて、労働基準法違反ではないですが、職場環境に配慮しないことや、作業服を支給しないことは、会社と話し合って改善したい問題です。

 

二通目のほうは、最低賃金以下の時給で労働させられ、サービス残業をさせられているので、明らかに違法ですね。働いた時間の証拠を残していれば、請求して支払わせることができます。実際に働いた時間を自分で記録しておくのは、重要ですね。

 

 

「ワークルール」教育の必要性

 

荻上 さて……おっと、こんな方からもメールが来ました。

 

「こんにちは。若き老害こと常見陽平です。今回のテーマが「ブラックバイト」だと聞き、居ても立ってもいられずメールをしました。大学でキャリア教育を担当しているのですがワークルールについての講座を設け、「ブラック企業」や「ブラックバイト」に関する映像教材を見せると、「私のバイト、ブラックバイトだ!」「おでんの販売競争で自腹!? 残業代出ない!?」「シフトが過酷」……なんて声を、よく聞きます。この手の話はよく「イヤなら辞めろ」という話になり、それも労働者の権利として行使すべきですが、学生にはなかなか、そういう発想は持てません。なんせ大人が相手ですし、そういうルールも分りませんから。」

 

荻上 雇う側と雇われる側のパワーが、アンバランスな時がどうしてもありますよね。そういう時にはまさに「ワークルール」、働き方の教育が大事だと思うのですが、意外と知られていないようですね。

 

佐々木 そうですね。

 

雇う側の社会人と雇われる側の学生アルバイトでは社会経験の差が歴然としています。そこは知識で多少なりとも埋め合わせるしかないのですが、現状日本では小学生はともかくとしても中・高と、学校でそういう勉強をする機会もないままきてしまっていますよね。

 

坂倉 最近では高校生からの相談が増えていますね。彼らぐらいの年頃だと法的な知識もほとんどありませんし、理不尽な要求でも「大人に言われたんだから守らなきゃ」と素直にしたがってしまうケースも多いようで、コンビニの店長などから「自爆」の格好のターゲットにされているように思います。

 

荻上 その「高校生」に関しては、こういうメールもいただいております。

 

「以前、何人かの大学生と話をする機会があって、「ブラックだ」という自覚がないままに働いている人が結構いるな、と思いました。高校生でも、バイトで変な働き方をさせられている人はいると思います。ただ、高校は学校で(アルバイトを)禁止されているところも多く、しんどくても相談できないという人もいるのではないでしょうか。高校段階で労働法や相談機関について知る機会が必要だと思います。」

 

坂倉 これは、あるでしょうね。

 

実際、私たちは高校から労働法教育の授業に呼んでいただくことも頻繁にありますが、アルバイトが禁止されている学校でも、隠れてバイトをしている高校生は結構います。その場合、親や教師には相談しづらいですから、いざという時どんな窓口に相談すればいいのか、知ってもらう必要がありますね。

 

 

いざという時のために

 

荻上 こうしたご意見もきています。

 

「先ほどから、「これはブラックですね」などと判断されていますが、具体的に改善方法を教えていただけませんか?」

 

先ほど、記録を取る、という話も出ましたが、具体的にどのような記録を取ればいいのでしょうか。

 

坂倉 賃金未払いの場合は、仕事を始めた時間、そして仕事が終わった時間を、それぞれ

記録しておく事が大事ですね。

 

例えば、仕事が終わった時間に、時計を携帯電話のカメラで撮影しておくとか、手帳に毎日の労働時間をメモしておくとか、そういう記録を毎日積み重ねていくだけでも証拠になります。パワハラの場合は、ICレコーダーやスマートフォンで録音しておくのが良いと思います。

 

荻上 佐々木さん、いかがでしょう。

 

佐々木 給与未払いやパワハラに関してはそれでいいと思いますが、例えば「シフトに強制的に入れられてしまう」、「ノルマを課される」、これは判断の難しい問題です。これらは契約違反のレベルであって、ただちに違法行為であるとは言えないからです。

 

この場合は労働組合に相談に行き、そこで改善するしかありません。やはりいざという時の相談窓口を把握しておくのが大事ですね。

 

荻上 その「相談窓口」として、具体的にどういった機関が考えられますか?

 

佐々木 学生を対象にしているところだと、坂倉さんのやっている「ブラックバイトユニオン」、それから「首都圏学生ユニオン」。このふたつがあります。あと、私の「ブラック企業被害対策弁護団」でも、相談は受け付けております。親御さんからの相談でも、大丈夫です。

 

学生さんが安心して相談できる機関は、まだまだ少ないです。もっと運動を拡大しなければいけないと思いますね。

 

 

「ブラックバイト」の相談は

ブラックバイトユニオン http://t.co/3bQ34Izhpt

首都圏学生ユニオン http://t.co/VD3ZQm8VIG

ブラック企業被害対策弁護団 http://t.co/HKYOOunpjC

などで受付けています。

 

 

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