多様な生き方を尊重しよう ――「東京レインボープライド2012」開催直前インタビュー

セクシュアルマイノリティの人たちの「多様な生き方」を讃えるイベント「東京レインボープライド2012」が29日、東京・代々木公園で開催される。LGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender:性的マイノリティの総称)とその賛同者の人々が、各自工夫をこらした服装で、歌ったり踊ったりしながら代々木公園から渋谷、原宿までの道を行進し、個性を讃え合うお祭りだ。

 

「プライドパレード」(性的マイノリティの存在アピールを目的としたパレード形式のイベント)は世界各国で開催されているが、日本でも1994年に初めて「第1回東京レズビアン・ゲイ・パレード」が行われて以降、全国各地で様々なパレードが行われている。しかし一方で、00年代に東京にてパレードを開催してきた「東京プライドパレード」は、予算や組織の課題によって、現在では年次開催を断念せざるをえない局面におかれている。この状況を受け、「東京で、毎年着実にパレードが開催できる体制」を構築することを目指し、2011年に新たに「東京レインボープライド」が設立された。

 

パレードを目前に控えるなか、同団体で広報を務める乾宏輝さんと、大塚健祐さんに、イベント設立の経緯や将来のビジョン、LGBT当事者たちの抱える問題などについて話を伺った。(聞き手/荻上チキ、構成/宮崎直子)

 

 

「東京プライド」でできなかったことをやる

 

―― 昨年「東京レインボープライド」(以下「レインボー」)が、「東京プライドパレード」(以下「東京プライド」)から別団体とて独立し、今年パレードを開催するにいたった経緯をお聞かせいただけますか。

 

 「レインボー」は、旧来の「東京プライド」のやり方に対して、課題や改善すべき点があると感じていた人たちが、若い世代を中心に集まり、“もう一つの”プライドパレードの実現を目指してつくられた団体です。

 

2011年の5月に発足しましたが、そのときはまだ「東京プライド」のパレードが翌年にできるかどうかわからない状況で、コミュニティ存続のための安全パイとして機能したいと思っていました。その後、2012年に「東京プライド」がパレードを開催するとわかり、「レインボー」でもパレードを開催するかどうかを再検討した時期があったのですが、やはり自分たちの意見を反映させたパレードをやりたいということで、継続したという経緯があります。

 

お互いに、より良いパレードを目指して切磋琢磨するような形になれば、コミュニティとして急速に成長できるのではないか、もう少し若い人たちの意見も取り入れて、フラットでクリエイティブな発想でもってできないかというのが、レインボーの根底にある想いです。ボランティアの自由度が高く、現場からの意見が上がりやすい、様々なアイデアが実現していくようなパレードにしたいと思っています。

 

大塚 お金の流れもまた、課題として感じていました。日本のゲイの歴史でいうと、やはりHIVのショックが大きかったと思います。いまだにゲイ・リベレーション(以下、ゲイリブ)の中核は、仲間たちをエイズで亡くした世代が中心になっています。彼らは言葉では表せない結束力の強さをもっています。

 

日本全国のゲイリブ団体は、厚生労働省や各都道府県のHIV関連機関のお金で成り立っていた面がありました。ですが、どんどんそれも絶たれていき、今は東京のNPO団体がなんとかそれを保持しているという状況です。東京プライドはそれらの団体と同盟関係にあったので、イベントで厚労省からの後援を受けることができていました。

 

一方で、お金については二丁目のゲイコミュニティにも多くを依存してきました。具体的には、二丁目の飲み屋に広告を求め、集金を行っていたんですね。しかし、長らく続いている不景気でそれがどんどん困難になってきた。私は「東京プライド」の内部で2006年から関わってきましたが、「東京プライド」は今予算がパンク寸前です。今後開催できるかどうかは、実行委員経験者としても疑問に思っています。

 

なので、これまでの「東京プライド」よりも予算は抑えめで、なおかつ行政のサポートがなくても、ネットワーク的にパレードを実現していくことができるようにしたいと思っています。ただ僕は経験者だからこそ、「レインボー」ではあまり新しい世代のやることに口を出さないようにして、やりたいことを応援しアドバイスする体制づくりを心がけています。

 

 

持続可能なパレードモデルを目指して

 

―― 世代交代を応援し、ある種「プライドパレード2.0」的なかたちで、「レインボー」を立ち上げられたということですね。今回、「レインボー」で新しく試みたことは何ですか。

 

 一つは、パレードの参加人数制限を取払いました。今まではオペレーションの効率を高め、警察との軋轢を避けるために3000人という枠を設けていましたが、デモというかたちで申請していますので、民主主義の建前上、何人参加してもいいですよね。高円寺の反原発デモには1万5000人が集まっていますし、僕らもなるべく大きな祭りにしたいと思いました。

 

今回はコアスタッフのメンバーに外国人も複数加わり、海外のプライドパレードのノウハウが存分に注入されています。彼らの思想は “There’s no dance, There’s no revolution”。楽しくないと革命なんて起きない、権利を叫ぶよりも、まずは楽しい場所をつくろうじゃないかと。

 

LGBTに限らず、一般の人たちにもたくさん参加してほしいと思います。「日本社会、なんか息苦しいよね」という思いはみんなどこかで感じているはず。その気分を打開するためのプラットフォームを、LGBTの人たちがつくりました。「なんだか面白い人たちがいるな」と思ってサポートしてもらえれば嬉しいですね。

 

もう一つは、とにかくコストを低く見積もりました。レインボーの予算は90万円。今までの予算よりはるかに少ないです。あらゆるオペレーションを簡素化しています。他にもFacebookやTwitterを使ってプロモーションを行ったり、イベントをドキュメンタリーとして記録するなど、いろんなことにチャレンジしています。

 

レインボーの最大の特徴は「規模の拡大」と「持続可能なパレードモデルの実現」。台湾(5万人)やニューヨーク(170万人)を目指して、5年後の2016年までに、アジア最大級となる5万人規模のプライドパレードにすることを中期ビジョンとしています。

 

東京プライドも新しく何かをはじめるだろうし、僕らはまた来年それを超えるものをつくっていく。そうしたダイナミズムが生まれるといいなと思っています。

 

 

 

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