多様な生き方を尊重しよう ――「東京レインボープライド2012」開催直前インタビュー

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セクシュアルマイノリティの生きづらさ

 

―― 「なんか息苦しい」というお話がありましたが、たとえばイベントに関わっているLGBTのメンバーたちは、どういった悩みや課題を抱えているのでしょうか。

 

 4月13日付の毎日新聞に「自殺総合対策大網」の改正に関する、性的マイノリティの記事が掲載されていました。その中に、日本の性同一性障害診療の拠点、岡山大学病院での調査が紹介されていて、患者1154人のうち6割が自殺を考えたことがあり、3割が自傷行為や自殺未遂を経験していると述べられていました。

 

セクシュアルマイノリティであることによって引き起こされる偏見などにより、自殺やひきこもりや抑うつなど、様々な生きづらさを抱えています。

 

大塚 家族の問題も忘れてはいけません。肉親と関係がこじれることも多くありますし、それではとパートナーと新しい家族を築こうと思っても、日本では同性婚が認められていなかったりします。

 

 僕はフリーライターとして働いていますが、「生きづらさ」を一つのライフワークにしています。今年の1月にハワイでパートナーシップ法が施行され、その取材を行ったときに、日系アメリカ人がこれに貢献していたことを知りとても勇気づけられました。日系人は戦時中に差別を受けたので、あらゆる差別に対してセンシティブです。LGBTの権利を獲得しようとなったときも、日系人で影響力のある人たちが動いたんですね。

 

よく日本人は権利意識が薄いといわれますが、固有にそういう性質があるわけではないと思います。若い世代は、年長世代とはまた感覚が違うのではないかと感じます。ボランティアで集まってきた人たちは、公共に対する意識がすごく強いし、「他人と違うこと」に賛同する感受性がとても優れてるように感じています。

 

 

―― たとえば、今は、新宿二丁目などのコミュニティに依存しなくても、サークルやネットワークでつながるという選択肢も増えているように思いますが、意識や課題などに変化はあるのでしょうか。

 

大塚 確かに二丁目に行ったことのない若い人は増えていますし、その必要性もなくなっています。ゲイに限らず、性的指向・志向は多様になってきていますので、二丁目に行くよりもネットのほうがいろんな要望を満たせる状況にはなっていますね。

 

 ボランティアの方が面白いことをいっていました。今のLGBTはオタクの一類型だというんですね。ガンダム好きでグッズをコレクションしている人と、「僕ゲイなんだよね」という人を同じ感覚で捉えている。

 

 

―― マイノリティの人たちが生きづらい社会が相変わらず存在する一方で、たとえば民主党内で「性的マイノリティ小委員会」が築かれたりと、前向きな動きも見え隠れします。どう捉えていますか。

 

大塚 関西でパレードが行われたときに、橋下前府知事が応援メッセージを寄せていました。決してLGBTに敵対的な方ではないと思いますが、彼が行う政治は、次々と仮想敵をつくりそれを切り捨てていくようなやり方ですので、LGBTもいつやり玉にあがってもおかしくないという危機感は持っています。

 

もう一つ避けて通れないのは、貧困問題です。レズビアンカップルの場合は、女性の低収入の問題がダブルで起こります。非正規雇用についてもやはりヘテロ・セクシュアルよりも多い印象がありますし、フリーランサー的な、不安定な働き方をしている人がたくさんいます。LGBTの多くは体や心を害していますので、仕事をする上で何らかの支障をきたす人も少なくありません。

 

何かに困った人たちは、どうしても大きな物語に頼りたくなります。政治の動きも重要ですが、そればかりに依存せず、いかに細かい部分にまでこだわっていけるのかが、当事者に求められているテーマだと思います。

 

 

企業戦略と若者へのサポート

 

―― 「楽しくなければ、革命なんて起こらない」というお話がありました。動員のためには、ある種ゲーミフィケーション的な方法も必要になると思います。「楽しさ」をよりシェアするためにやろうとしていること、あるいは今後の課題として考えていることはありますか。

 

 来年から企業に公式メッセージをお願いして、ブログに掲載していきたいと考えています。先日、元宝塚劇団員でレズビアンの東小雪さんが行った問い合わせを受けて、ディズニーリゾートが、同性結婚式の利用を正式に認め、TwitterやFacebook上で大きな話題になりました。こうした、SNS時代の社会の変え方というのがあるのではないかなと、常々考えています。

 

アメリカで百貨店のメイシーズがプライドパレードを支援したときに、どこかの団体がそれに反対して不買運動を起こしたのですが、それに怒り狂ったリベラル派が、逆にメイシーズで買い物をしまくり、売り上げが伸びたという面白い話があります。

 

誰がどう設計するのかは難しいですが、企業戦略が必要なんだと思いますね。津田大介さんの『動員の革命』(中央公論新社)に書かれていたような方法論も参考になります。また、企業を説得するためには、マーケット分析も必須です。LGBTの構成要素、人口分布、所得などを調査して、運動の基盤にできれば一番いいのですが……。

 

大塚 あとは、若者のサポートですね。集まったボランティアの人たちは、圧倒的に若者が多く、さらに性的マイノリティという問題を抱えています。われわれのミッションとしては、彼らの面倒を見ることが一番重要ではないかと思っています。

 

パレードが終ったあとも、翌年まで放置するのではなく、数ヶ月おきにミーティングをしたり、他の団体が主催するイベントに参加したりと、ゆるやかな連帯をつくっていこうと考えています。それは、彼らにとってもプラスになるし、団体の生命力にもつながります。

 

 人材バンクのような面がありますね。ここでの経験をいかして、次のステップで活躍するというプラットフォームでもあるので、そうした機能は常に果たし続けていきたいなと思っています。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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