ミシュランガイドはなぜ歓迎されるべきか 

日本国内では東京版と関西版につづいて、ミシュランガイドの北海道版が発行されることが先に発表された。

 

北の大地を多少なりとも知っていて、いままで声高に「ミシュランガイドは北海道にこそ相応しい」と言ってきたものにとっては朗報だ。というのも、ミシュランガイドのコンセプトは北海道にこそ相応しいと思うからだ。以下では、ミシュランガイドのコンセプトを紹介するとともに、日本での発行が何を意味するのかを考えてみよう。

 

 

自動車旅行とともにあるミシュランガイド

 

ミシュランガイドは1900年、パリ万博に合わせて出版されたことに端を発する。もともとは、当時は数千人もいなかった自動車保有者に向けた、タイヤ会社の販促用パンフレットのようなものであった。そこには簡単な道路地図や観光案内があるだけで、レストランガイドが掲載されていたわけではなかった。有料になったのは1920年からで、このとき初めてレストランが掲載されるようになる。

 

タイヤ・メーカーらしくその標記や尺図は正確で、第二次世界大戦の際、ミシュランの地図を複写した地図をドイツ軍が利用したといわれ、反対にノルマンディー上陸後には連合軍の手引きとしても利用されたとの伝説も残っている。こうして1900年から21世紀にかけて、ミシュランガイドはフランス国内だけでも3000万部以上を売るベストセラーとなった。

 

レストランが星(フランス語の通称では、勲章を意味する「マカロン」とも呼ぶ)で評価されるようになったのは、1926年のことからだ。ホテルは城のマークで評価される。ちなみに、しばしば誤解されているが、星の数は決してレストランの「美味しさ」を意味しているわけではない。正確な定義は、三ツ星が「そのために出かける価値がある」、二つ星が「迂回して行く価値がある」、そして一つ星が「この分野ではとても良い料理」の意味である。

 

つまり、ミシュランガイドのコンセプトの核心はグルメガイドではなく、「ドライブとともにある」ということにある。それも、ツーリングカーにトランクを数個載せて、方々を旅する富裕層を対象にして、である。フランスで自動車を利用したバカンスが大衆に広まったのは1930年代後半からだが、日本でいえば国民休暇村に出向いて庭先でバーベキューを楽しむこうした層は、ミシュランなどあてにしなかったに違いない。

 

何を言いたいかというと、日本のなかでは北海道こそが、このミシュランガイドの精神に相応しい土地だということである。北海道の地方に出かけるには、やはり車がもっとも簡便な手段だ。雄大かつ多様な風景を楽しみながら、ミシュランガイドを繰りつつ、宿泊先やレストランを目当てに移動する。ミシュランガイドがもっとも得意とするユーザーは、北海道を駆けめぐるドライバーなのだ。

 

本国版はレストランを10キロおきに調査、評価しているとされるが、そこまでの精度が北海道版に盛り込まれるかどうかは分からない。しかし、公共交通機関での移動を前提にした東京版や関西版ミシュランよりも、北海道版こそが本来の使い方に合致している。もっとも、日本で販売されているミシュランガイドは、定本の「赤本(Guide Rouge)」ではなく、同社が2003年から販売しはじめた地域のレストランのみを評価した「グルマン・ガイド」を原型にしているというべきだろう。

 

ジンギスカンやラーメンが北海道版の対象になるかどうかなどはさして意味がない。そうではなく、日本では北海道がミシュラン・コンセプトのもっとも忠実な体現者であるという点を、日本ミシュランタイヤは強調すべきだっただろう。

 

 

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