漁業はそもそもどうあるべきか?

資源管理で漁業は変わる

 

公的機関がきちんと漁獲規制をすると、漁業はどのようにかわるのでしょうか。例として、われわれにも馴染みがある欧州のサバの漁業を比較してみましょう。欧州のサバ資源は、十分な親が残るような漁獲枠で規制されており、親魚量が安定的に推移しています。親魚を十分に残して、資源が自然増加した分だけ利用しているのです。銀行預金でたとえると、元本には手をつけず、利子だけで安定して生活をしている状態です。

 

漁獲量が安定するだけでなく、欧州は日本よりも格段に大きな魚を漁獲しています。欧州では、漁獲枠は実績に応じて各国に配分されます。サバの主要漁業国であるノルウェーは、漁獲枠をあらかじめ個々の漁船に個別に配分します。あらかじめ漁獲枠が配分されているので、漁業者同士で魚を奪い合う早獲り競争は起こりません。ノルウェーの漁業者は、漁獲枠の上限が決められる代わりに、大型の価値のある魚を狙って獲ることができるのです。日本人が好む3歳以上のサバをコンスタントに生産することができます。

 

一方、日本のサバは、3歳まで魚がほとんど残りません。せっかく資源に恵まれているのに、自国の資源は価値が出る前に乱獲し、養殖の餌にしている日本漁業と、大きくしてからベストのタイミングで漁獲をしているノルウェー漁業では、戦う前から勝負はついています。日本とノルウェーのサバ漁業については、朝日新聞の高成田さんの現場レポートで現場の雰囲気をつかめると思います。是非、ご一読ください(http://globe.asahi.com/feature/101101/index.html)。

 

 

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加工による付加価値

 

ノルウェーと同じような制度を導入すれば、日本漁業の生産性は大幅に改善されます。その上、日本は多種多様なサバ食文化があるので、様々な加工を施すことで、魚の価値を何倍にも高めることができます。

 

欧州サバの水揚げの中心はノルウェーです。ノルウェー人はサバをほとんど食べないので、加工のノウハウがありません。また、ノルウェーの人件費は高いので、ノルウェー国内で、加工をするのは現実的ではないでしょう。大型のサバを良い状態で漁獲して、すばやく冷凍するところまでが、ノルウェー漁業の限界なのです。きちんと資源管理をやれば、日本の方が格段に大きな利益が期待できるのです。にもかかわらず、日本漁業は、加工のしようがないような、小サバばかりを漁獲して、自滅しています。じつに、もったいない話です。

 

今回の災害によって、加工場や冷蔵庫など、地域の水産業を支える後方の設備が大きな被害を受けてしました。このままでは、日本の水産業の強みが失われてしまいます。水産業の発展を考えた場合、加工・冷蔵部門のインフラ整備は、最優先課題です。加工の技術をもった職人は、国の宝ですから、彼らの活躍の場をあたえる必要があります。

 

では、日本漁業の問題点をどう解決すればいいのか? 稿を改めて論じたいと思います。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.272 

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