地域水産業を復興するためのアクションプラン  

前回のエントリーでは、公的機関によって適切な漁業規制がなされていないために、日本漁業の現状は「持続的に儲かる漁業の方程式」とは正反対の状態にあることを説明しました。

 

日本漁業の問題点が理解できれば、解決策は自明です。まず、ノルウェーと同じ個別漁獲枠制度を導入し、十分な親を残したうえで、大きな魚を狙って獲れるようにします。その上で、加工によって、付加価値をつけられる体制をつくるのです。

 

これは言葉にすると、簡単に聞こえるのですが、実際の漁業に適用するためのハードルは高いです。ノルウェーにしても、コンスタントに利益が出るようになるまで、10年近い歳月を要しました。われわれは、短期的に、被災地の漁業をゼロから再建しなくてはなりません。諸外国の成功例を参考にした上で、しっかりとした計画を立てる必要があります。

 

 

被災地支援特別キャッチシェア制度(個別漁獲枠制度)の導入

 

常磐・三陸沖の乱獲の主役は、日本各地から集まってくる大型の巻き網船団です。大型巻き網船は、津波がくる前に、船を沖に出して難を逃れたので、被害は軽微でした。一方、三陸の沿岸漁業の小型船は、根こそぎ津波で失われてしまいました。これまで通りの無規制な早い者勝ちで魚を奪い合えば、被災地漁業に勝ち目はありません。かぎりある海の幸を、被災地漁民と、非被災地漁民で、平等に分け合う必要があります。

 

ノルウェーなどの成功している漁業国を手本に、日本も個別漁獲枠制度を導入すべきです。現在の資源量に見合った水準まで漁獲枠を減らした上で、沖合の大型船は船ごとに、沿岸漁業は漁港ごとに実績に応じて漁獲枠を配分します。そうすれば、大型の魚がコンスタントに水揚げできるようになり、漁業の利益は跳ね上がります。

 

 

重点漁港の選定

 

日本の沿岸には、バス停毎にコンクリートの大きな港があります。漁業者はピークの100万人から現在は20万人を割り込み、その半分以上が60歳以上です。漁業者が減少したにもかかわらず、漁港の数は維持されてきました。

 

現在では、ほとんど利用されていない漁港も多く存在します。バブル期の潤沢な予算を使うために、不必要なまでに大きな漁港をつくったのです。あり余る原資を消化するために、漁港の整備を行ってきたという背景があります。現在の国家財政で、ゼロからすべての漁港を元に戻すのは、非現実的です。地域水産業の存続を考えると、魚に付加価値のつけられる(=後方の加工冷蔵設備のある)拠点漁港に重点的に投資をすべきです。

 

山のようにあるバス停漁港のすべてをなくすわけにはいきません。集約化をした上で、残す港は残す必要があります。その際にも、バブル期のように無用なまでに大きな箱物にするのではなく、最小限の施設を目指すべきです。

 

 

地域水産復興評議会の設立

 

今回の災害は、被害が大規模かつ深刻なので、民間が独力で復興をするのは、困難です。地方自治体の取り組みでも、限界があります。国がイニシアチブを発揮しなくてはなりません。一方で、水産業は、地域によって特色や強みが異なります。国のトップダウンでは、地方のニーズに応じた、細やかな計画をつくることは不可能です。地域の特色を生かした細かいプランニングは、地方の当事者にしかできません。

 

国と地方の役割分担を明確にした上で、それぞれが緊密な連携を取り、復興に当たる必要があります。まず、その地域に根ざした復興の主体をつくる必要があります。地元の水産関係者(漁業者、加工業者、冷蔵業者、小売業者、行政)が集まって、復興計画を議論する場が必要です。

 

地域評議会は、具体的な再建プランの作成、タイムテーブルの作成、および、その実行について責任をもちます。一方、国は、地域水産復興評議会の招集、復興プランの確認、財源の支援を行います。国は、評議会での議論の内容の確認し、PDCAサイクルの導入、経営アドバイスなど、必要に応じておこないます。国と地域の役割分担を明確にした上で、緊密な連携をとれる体制作りが必要です。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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