地域水産業を復興するためのアクションプラン  

地域水産業復興特別公社(5年間の時限対応)

 

地域の特色を活かした復興を地元も評議会が主導で計画し、それを国がバックアップするという青写真が描けました。しかし、本格的な復興を目指すとなると、最初に2年ぐらいは、利益を出すのは難しいでしょう。水産業の復興に専念してもらうには、生活の安定が欠かせません。被災地からも、国有化などを望む声もあるようです。

 

その一方で、安易な国有化を危惧する声も存在します。とくに永続的な公的組織をつくると、利権の巣窟になりかねません。公的機関が関わると、小回りがきかなくなり、日本屈指の競争力を持っていた、三陸の加工業の強みが損なわれる可能性があります。こういった弊害を避けるためにも、公社は5年程度の時限措置とするのがよいでしょう。赤字だろうと黒字だろうと、5年後には公社は解散し、元の状態(漁業は組合、加工は私企業)に戻すのがよいと思います。

 

漁業の再建には、あまり時間をかけるわけにはいきません。予算をだらだらと逐次投入するよりも、短期集中的に投資をしたほうが効率的です。とはいっても、加工業は、本格的な再稼働には、最低でも数年はかかります。「東北地方の漁業を地域の基幹産業として復興・再生し、5年後の自立を目指す」というぐらいの目的が妥当だと思います。

 

地域公社は、水産業の垂直統合を漁業部門、加工部門、流通部門がそれぞれ独立の公社をつくるのではなく、漁獲から販売までを統合すべきです。これまでのように、漁業者、加工業者、流通業者が、ばらばらに行動をするのではなく、漁獲、生産、販売を一本化して、全体の最適化を目指します。加工流通と経営を統合することで、「獲ってなんぼの漁業」から、「売ってなんぼの漁業」へと、意識改革を行うことで、競争力をつけます。

 

 

漁業の未来を担う人材の育成

 

水産公社の使命は、これからの地域の基幹産業としての水産業の骨組みをつくることです。そのための人材育成が重要な課題です。ベテラン漁業者が培ってきた技術を継承しながら、5年後、10年後の漁業の担い手を育成しなくてはなりません。ベテラン漁業者を技術指導員として雇用し、地域の未来を支える若手漁業者に技術の継承を行うのもひとつのアイデアです。

 

水産業の復興で重要なことは、地元の雇用を確保することです。これまで水産業に従事していた人たちの雇用の受け皿が必要です。中長期的に地域経済を支えていけるような事業にこそ、公的資金を投資すべきです。50歳以下の地元の水産業者が、安定した生活を今後も送れるような産業政策がもとめられているのです。

 

 

改革か、消滅か。今が水産業の分かれ道

 

明確なビジョンにもとづき、構造改革を進めていけば、日本の漁業は確実に利益を生む産業になります。逆に、構造的な問題をうやむやにしたまま、その場しのぎをしているかぎり、漁業の衰退は続きます。残念ながら、水産業の復興は、後者の路を歩みつつあります。

 

日本の水産業は構造的な問題を抱えて、長期衰退傾向でした。何も考えずに、元通りに戻しても、その先に明るい未来はありません。これまで、水産関係者は「いまのままで良いとは思わない」と口を揃える一方で、既得権にしがみつき、変化の芽をつぶしてきました。

 

問題意識はあっても、明日の生活がかかっている状況で、抜本的な改革は困難だというのは、わたしにもわかります。1000年に一度ともいわれる大災害で、産業の基盤が失われてしまいました。このタイミングで軌道修正ができないなら、いったい、いつ改革を行うつもりなのでしょうか。

 

日本は恵まれた海の幸を自国のEEZにもっています。また、世界一ともいえる魚食文化があり、国内市場の規模も世界屈指です。ノルウェー漁業のように、持続的に利益を出している他国の事例から謙虚に学び、自国の漁業を改革していけば、日本の水産業は世界の頂点に返り咲くだけのポテンシャルを持っています。

 

被災地漁業の抜本的改革を進めることは、日本漁業全体の方向性を示すことにも繋がります。未来志向で、上向き、前向きに、被災地漁業を復興し、日本漁業が浮上するきっかけにしなくてはなりません。

 

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.279 

・川口俊明「全国学力テストの失敗は日本社会の縮図である――専門性軽視が生み出した学力調査の問題点」
・神代健彦「道徳、この教育し難きもの」
・大賀祐樹「懐疑的で楽観的な哲学――プラグマティズム」
・平井和也「世界の知性は新型コロナウイルスをどう見ているのか」
・川名晋史「誰が、なぜ、どこに基地を隠したか」
・石川義正「「空洞」の消滅──現代日本「動物」文学案内(4)」