テレビにうつるセクシャリティ ―― “オネエ”の先に観たいもの

笑えるオネエ、泣ける性同一性障害 ―― テレビにうつるセクシャルマイノリティのイメージは固定化され、勝手につくられたストーリのなかで消費されていく。誰も傷つけず、笑いものにせず、みんなで笑ってお茶の間でセクシャルマイノリティを観るにはどうしたらいいのだろうか。2013年2月に放送されたニコニコ生放送「“オネエ”の先に観たいもの」より抄録をお届けする。(構成・山本菜々子)

 

 

牧村 こんばんは、レズビアンタレントのまきむぅこと牧村朝子です。

 

杉本彩の事務所に所属して活動し、フランス人女性とフランスの法律「PACS」で準結婚してパリで生活しています。今日は特別版のスタジオ放送!ということで、パリから東京に飛んできました。

 

今回は「オネェの先に観たいもの」というテーマで、お送りしたいと思います。日本のテレビ番組、とくにバラエティー番組において、オネエを含むセクシャルマイノリティが今までどう扱われてきて、これからどう扱われていくかということをみなさんとお話できればと思います。

 

今日は、実際の制作の現場を知っている、ゲストの方をお呼びしています。宗方美樹さんです!

 

宗方 どうも、こんばんは。

 

牧村 美樹さんは、わたしと同じシェアハウスに住んでいた仲間です。彼女は自分のことはノンケだと思っています。元ADで、いまは会社員兼特撮オタク兼ライターをされています。今度、宗方さんと共著で星海社から「百合のリアル」という本を出版することになっています。今日はよろしくお願いします。

 

宗方 宗方です。今日は牧村とリビングで話すような気持ちでやってきました。よろしくお願いします

 

牧村 今日は「オネエの先に観たいもの」ということで、いままで日本のテレビ番組においてどういう風にセクシャルマイノリティが扱われてきて、これからどういうふうに扱われていくべきかを議論する60分間です。セクシャルマイノリティもマジョリティーも誰も傷つかず、誰も笑いものにせず、みんなで笑ってお茶の間でセクシャルマイノリティを観れるようになるには、どうしたらいいのかしらね、というのを考えていきたいと思います。

 

まず、「テレビに出ているセクシャルマイノリティのタレント」と言えば誰が思い浮かびますか? みなさんコメントいただけますか。

 

宗方 (コメントを見ながら)ああ、マツコ・デラックスさんが大人気ですね。

 

牧村 うーん、でも、あがってくるのって、みんなオネエですよね。「オネエ」っていっても、ゲイの人もそうだし、女装している方もそうだし、性同一性障害といったトランスジェンダーの方もそうだし。それぞれのセクシャリティを無視して、一緒くたにされていて。とにかく、男が好きな男か、女っぽくみえる男はみんな「オネエ」になってる。

 

「オネエ」が確立したのって、日本独特かなと思うんですけど。どうしてだと思う?

 

宗方 やっぱり、2000年代半ばからドラマの勢いが減って、個人のキャラ立ちが重視されるようなバラエティー番組が増えました。そうすると、セクシャリティの特徴がより武器になりやすくなったというのが大きいんじゃないかなと思う。

 

あと、「オカマ」という言葉よりも、「オネエ」という方がソフトですよね。

 

牧村 やわらかいよね。ちょっぴり使いやすくするために、「オネエ」って始まったんじゃないかな。

 

 

なぜ、“オネエ”が定着したか

 

牧村 じゃあ、ちょっとわたしからひとつ主張していいかしら。「なぜオネエがジャンルとして確立したか」を考えるとき、わたし、「LGBTフレンドリーが日本の伝統だから」というのがあると思うの。

 

まず、テレビ登場以前のことから時系列で考えてみたいと思うのね。もともと日本では、異性の格好をするということが伝統芸能としてありました。テレビ放送が始まる250年前、西暦1603年に、すでに出雲阿国という女性が歌舞伎で男装しています。当初の歌舞伎は女性や少年によって演じられてきたものです。そういう女性や少年たちは、売春も兼業していた。元服っていって、当時の制度での成人前、つまり10代前半の男の子たちが、男も女も相手にして売春していたわけよね。

 

さすがに衛生と風紀上まずいでしょってことになって、女や少年による歌舞伎は禁止されました。で、野郎歌舞伎という、成人男性による歌舞伎が成立した。でもここで、だんだん「女役を演じる男は男に抱かれることが役者修行」という考え方が広まってくる。そこで芝居小屋と、陰間茶屋って呼ばれる売春小屋が併設されるようになってきました。

 

つまりまとめると、日本の伝統として、同性と寝たり、異性の格好をしたりすることはまったく悪いことじゃなかった。むしろそれはりっぱな役者修行であり、芸術表現だった。当時の流行小説「好色一代男」だって、主人公の男性がバイセクシャルよね。北斎とかの浮世絵師もレズビアンを描いている。芸術の世界じゃなくったって、「色の道はふたつ」って言われたりして、むしろ「ヘテロは半人前。男とも女とも寝てこそ玄人」と考えられていた。

 

この伝統は、明治維新で「伝統=ダサい、西洋サイコー!文明開化しようぜ!」ってなって切り捨てられるまで数百年続いた。でも、伝統って捨てようと思って捨てられるもんじゃないでしょ? だから現代にもどことなく息づいているところがあると思うのよね。

 

日本は神話からして、ヤマトタケルが女装したり、神功皇后が男装したりしてきた国です。同性愛ダメ、女装ダメ、男装ダメなんて言うのは、日本の伝統じゃなくて近代の価値観なのよね。戦争中になよなよした男性が「それでも日本男児か!!」って殴られたりしたけど、「いえいえ、伝統的な日本男児です。」って話。

 

ということで、日本にはオネエタレントがすくすく育つ文化的土壌があったとわたしは考えています。

 

宗方 そうとは言い切れないんじゃないかな。たとえば中世では戦国武将のあいだで男色が盛んだったけれど、それは家臣との忠義の意味で行われることもあったんだよね。言い換えれば、政治的行為の手段だったし、上の者に取りいる手段だった。いまとは違う意味での上下感や差別意識はセットであったと思う。

 

牧村 なるほど。そういう変な上下感って、かたちを変えていまでも受け継がれちゃっている気がするな。本来ならセクシャリティって、誰が偉いとか誰が上なんてないのよね。でも、最近「高学歴LGBT」と言われたり、ファッション業界でレズビアンが来るよと言われたり。レズビアンやゲイをはじめとして、「LGBTをかっこいいとみなす風潮」と、一部のオネエタレントみたいに、「笑っていい対象としてさげすむ風潮」があるなと思いますね。

 

コメントをみてみましょう。「アニメ界では完全にネタ化した」というのがきてますね。たしかに、アニメや漫画の世界は実際の人物がいないからこそ、もっとネタとして消費しやすくなっていますよね。

 

たとえば、「やらないか」とかもそう。あれも、ゲイ雑誌「薔薇族」掲載の漫画「くそみそテクニック」に出てくるゲイのキャラクターを元ネタにしているんだけど、みんなそれを笑いものにしているんだよね。アスキーアートとかをつくっちゃったり。それをみて本当のゲイの方がどう思うかと。

 

宗方 そう言うのを、どう当事者の方が観ているのかって、ヘテロ側は想像力が及ばないものだと思う。

 

牧村 楽しんでいる人に悪気はないのよね。いま、コメントが来たように、「ゲイだけど、「やらないか」とか、「ホモォ」とか不快」。やっぱり。傷ついている人もいるんだよね。どうして笑いものにしたり、性欲の対象にしたりして消費していっちゃうのかというと、江戸時代に比べていまの方が周りにいるという実感がないんじゃないかなと思いますね。

 

日本はもともと娯楽の世界でいまも昔も、ずっとセクシャルマイノリティは表象されてきた。でも、「隣にLGBTが実在する」という実感がいまの方が薄いよね。

 

宗方 かといって、「昔はいまよりLGBTフレンドリーだった」とは確実に言えないんじゃないかな。いまの牧村のようなカップルが江戸時代にいって一緒に幸せに暮らせるかといったら、そうではないよね。日常的な恋愛や、結婚生活に根差して同性愛が認められていたということではないと思うよ。でも隣にいるという実感の強さは違うだろうね。

 

 

 

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