18歳世代の医療、介護、年金――20年後、30年後、40年後の未来は政治行動次第

5. 高齢者間の財の移転がなされないと格差拡充の懸念

 

このように社会保障費の財源工面を、これまでの「世代間扶養」から「世代内扶養」といったように抜本的に変革し、これらの財源を用いて医療、年金、介護部門へ集中的に投入することで、社会保障サービスを「充実」させていくべきである。そして、そのような動きになるように、若い世代が訴えていく必要がある。もし、高齢者の富裕層からの大胆な所得及び資産の再分配がなされなければ、一層の格差社会に日本は突入することになる。

 

なぜなら、自ずと富裕層の資産は、身内である次世代に移転されてしまうからである。市場経済社会を堅持している日本社会において、親や祖父母の資産を有利に引き継ぐようになると、どうしても不平等社会を是認する結果となる。

 

また、かつての日本は、どんなに貧しい家庭に生まれても、子供の努力次第で奨学金などを利用しながら一流大学に進学し、それなりの社会的地位と賃金を稼げるといった「平等社会」であった。しかし、現在、親の年収が高いほど高学歴になる確率は高く、生涯賃金も高額になる可能性が高くなる。

 

逆に、昨今、児童福祉現場では「貧困の連鎖」といった問題が深刻化している。貧しい家庭に生まれた子供は、大人になっても低賃金労働者として働く可能性が高く、再度、貧困家庭を築き、そして、その子供も貧困層となるというのだ。

 

高度経済成長期であれば、公立学校の授業を真面目にこなしていれば、それなりの大学に進学できた。しかし、今は、小学校から英語やIT教育が導入され、学校以外での教育機会に恵まれれば、それだけ有利となる。厳しい家庭環境の中では塾に行く費用も工面できず、幼い時から美術館や博物館、映画といった文化的な暮らしにも縁遠くなる。このような児童・学生による家庭環境が教育格差につながり、大人になっても階層化していくのである。親の年収差によって、その子供の教育水準に差が生じることは、結果として「貧困の連鎖」を招く一因となる。

 

人間、スタート地点がはじめから不利となっていれば、それだけ諦めて努力する人は減っていく。そして、社会を活性化させるエネルギーを低下させることにもなる。戦後、日本社会は財閥解体などによって、多くの人が平等な立ち位置となり高度経済成長の原動力にもつながったと考えられる。しかし、現在、一定の成熟社会を迎えた日本社会において、富の移転が親族などに有利に働くシステムを持続していけば、再度、一種の階層化を生んでしまい日本社会を硬直化させてしまう。 

 

 

6.社会保障を投資と考える

 

今こそ小幅ながら増大し続ける公共事業費を削減し、その財源も福祉や介護分野に振り替えていくことで、さらなる社会保障費に関する財源確保も可能となる。例えば、整備新幹線の費用において札幌までのインフラ整備は必要ではあるかもしれないが、介護難民の危機に比べれば優先されるものではない。

 

また、外国人技能実習制度の拡充で外国人労働者の活用が進む公共事業部門においては、賃金の一部は海外への送金に回ってしまう。一方、福祉や介護分野においては、今後、外国人介護士に協力を求めるとはいえ一握りであり、賃金の大部分は日本人介護士に支払われるため、福祉や介護分野に政府のお金を投資すれば、結果として国内で消費に回ることになる。つまり、景気を刺激する意味においても、公共事業に比べれば福祉や介護事業を対象とする方がより効果的であろう。

 

 

まとめ

 

もちろん、「世代内扶養の強化」「公共事業費の振り替え」といった財源確保だけでは、高齢化が進展する現状から社会保障費の「充実」分を工面することはできず、筆者はさらなる消費税増税も不可避と考える。

 

しかし、消費税増税は、社会保障費の「充実」のみといった使途に限定しさえすれば、国民の理解も得られやすくなる。なお、これらは全世代で負担する財源として位置づけられる。

 

いずれにしろ、若者が自分自身のために、政治に関心を抱き、社会を変革していかなければ、厳しい人生を送ることになる。是非とも、第一歩として、投票行動で態度をしめしてほしい。

 

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

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