一票の格差と一人別枠方式について考える(2/3) 比例配分の方法と比較

まず前回の議論を整理しておく。現在の法律では、最高裁で違憲とされた「一人別枠方式」を規定した条文は削除されている。しかし、現在の定数は既存の定数配分を基準に5つの県で定数を減らしただけであるため、実質的に一人別枠方式は残存している。しかも、定数配分の基準自体が削除されたため、今後は2倍という上限を超えない範囲での場当たり的な定数再配分が繰り返される可能性が高い。

 

この場当たり的な定数是正を回避するためには、定数配分の基準を条文に規定する必要がある。違憲とされた一人別枠方式は、人口の少ない県に多くの議席を与える方式であることが問題とされた。ただし、どのような配分法を採用したとしても、人口に正確に比例して議席を配分することは難しい。したがって、規定する方式がどのような性質の配分を生むかが問題となる。

 

そこで今回は、定数を比例的に配分する方法を紹介し、それらの方式で都道府県別の定数配分を行い、その性質を確認する。この作業を通し、都道府県にどのように定数を配分すればよいのか、その方向性について考えていく。

 

 

比例的に議席を配分する方法

 

ここでは、一人別枠方式も含めて、議席を比例的に配分する5つの方法を紹介する。

 

●最大剰余法

 

最大剰余法では、議員一人当たり人口をもとめ、それによって各地域の人口を割る。その計算結果の整数の部分と小数点以下の部分とに分け、それぞれを議席配分に用いる。まず整数についてはその数をそのまま配分する。残議席については、小数点以下の数値が大きい順に各地域に配分する。下記表に具体例を示したので参照されたい。

 

 

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●一人別枠方式(1+最大剰余法)

 

一人別枠方式は、前回述べたように先に各都道府県に1議席を配分し、残り議席を最大剰余法により配分するものである。下記表にその方法を示している。

 

 

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●ドント式

 

ドント式は、日本の比例代表制で各政党への議席配分にも用いている方式である。各地域の人口を1、2、3・・・と自然数で除していき、その商の大きい順に議席を分配していく。下記表にその方法を示している。

 

 

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●アダムズ式(1+ドント式)

 

アダムズ式は、一人別枠方式で最大剰余法で分配していた部分をドント式に置き換えたものである*1)。下記表にその方法を示している。

 

*1)アダムズ式やヒル式では、ここで述べた最初の1議席の配分について、1(ヒル式の場合は2の平方根)の前に0で除すと説明する場合もあるが、同じことである。

 

 

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●ヒル式

 

ヒル式は、アメリカの連邦議会の下院議員の議席を各州に分配する際に用いられる方式である。ハンチントン式とも呼ばれる。この方式では、まず1議席を各地域に配分する。残りの議席について、ドント式では1、2、3…と自然数で除していたところを隣り合う自然数2値の相乗平均(1×2の平方根、2×3=6の平方根、3×4=12の平方根…)で除していき、商の大きい順に分配する。下記表にその方法を示している。

 

 

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