過酷な労働を強いられる外国人留学生たち――移民政策を問う前に向き合わなければならないこと

現在、日本で働く外国人労働者は108万人以上にものぼる。いまや、私たちの便利な生活は彼らなしでは成り立たない。特に、近年ではベトナムやネパールからの“出稼ぎ目的の留学生”が急増しているという。彼らの多くは「月20万−30万円は簡単に稼げる」という嘘の宣伝によって日本に留学し、学費等の返済のため過酷な労働を余儀なくされている。そんな外国人労働者の現場を10年にわたって取材されてきた、ジャーナリストの出井康博氏にお話を伺った。(取材/大谷佳名)

 

 

新聞配達、コンビニ弁当の製造工場……人手不足を支える留学生

 

――現在、出井さんのご著書『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)が、大宅壮一ノンフィクション大賞にノミネートされていますね。この本にまとめられている、外国人労働者の実態について取材を始められた経緯を教えてください。

 

ちょうど今から10年前の2007年、私は「フォーサイト」という月刊誌で「外国人労働者」をテーマに連載を始めました。当時から欧米先進国では「外国人労働者」や「移民」は国論を二分する問題になっていましたが、日本ではほとんど関心が払われていなかった。それでも、技能実習生や日系人などの外国人労働者は徐々に増えつつありました。また、翌08年からは外国人介護士・看護師の受け入れも始まることになっていた。そうした状況を前にして、やがて日本でも欧米のように移民問題が注目されるようになるに違いないと考え、この10年間、外国人労働者が受け入れられた現場を訪ね歩いてきました。

 

 

――出井さんは、「技能実習生よりも厳しい状況に置かれているのは留学生だ」と指摘されていますが(「これからの『共生』のために――外国人労働者をいかに受け入れるか」[2017.01.11])、外国人留学生について調査を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

 

取材を始めたきっかけは、3年ほど前、新聞販売店の関係者から「新聞配達の現場で留学生のアルバイトが急増している」という話を聞いたことです。販売店の経営者に頼み、留学生と一緒に新聞配達も体験してみました。すると彼らが留学生に法律で許される「週28時間以内」というアルバイトの上限に違反して働いていることがわかった。

 

その後、留学生という存在に興味を持って取材を続けてみると、様々な現場で「留学」に名を借りた出稼ぎ目的の留学生が急増している現実が見えてきたのです。

 

 

――出稼ぎ目的の留学生が増えているというのは、どういうことですか。

 

政府は現在、2020年の達成を目指して「外国人留学生30万人計画」を進めています。この計画を達成するために留学ビザの発給基準が緩んでいて、勉強よりも出稼ぎが目的の“偽装留学生”に対してもビザが簡単に下りてしまう状況になっているのです。

 

留学生の数は過去4年間で約10万人も増え、昨年末段階で約28万人に達しています。私が取材してきた印象では、その半分以上は“偽装留学生”ではないかと思います。

 

彼らが日本を選ぶ理由はシンプルで、日本に来れば働けるからです。留学ビザを取得すれば、「週28時間以内」で就労が許されます。先進国で留学生にアルバイトを認める国は多くない。しかも日本は今、未曾有の人手不足で、アルバイトは簡単に見つかります。「人手不足」が言い訳となって、「週28時間以内」の制限を破ることも簡単にできてしまう。“偽装留学生”にとっては極めて好都合な状況です。

 

一方で受け入れ側の日本も、出稼ぎ目的の留学生を歓迎している。とりわけ人手不足が深刻な夜勤の肉体労働、たとえば新聞配達、弁当や総菜の製造工場、宅配の仕分け現場といった仕事は、もはや留学生の労働力なしでは成り立ちません。こうした仕事は、日本語のできない留学生でもこなせますからね。

 

 

(参照)図表1:在留資格別外国人労働者の割合

 

在留資格別外国人労働者の割合

 

留学生による労働は「資格外活動」に含まれ、209,657 人と前年同期比で 41,997 人(25.0%) 増加。また、「技能実習」の外国人労働者は、211,108 人と前年同期比で 42,812 人(25.4%) 増加している。

 

図表2:国籍別・在留資格別外国人労働者数

 

国籍別・在留資格別外国人労働者数

(出典)厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成 28 年 10 月末現在)

 

 

――増加している留学生は、主にどの国から来ているのでしょうか?

 

近年、急増しているのがベトナムやネパールといったアジアの新興国出身者です。ベトナム人留学生は過去4年で7倍以上も増え、約6万2000人にも膨らんでいます。

 

ベトナムなど新興国の留学生は、大半が留学斡旋会社を通して日本にやってくる。留学ビジネスは大繁盛です。ブローカーは「日本に留学すれば、アルバイトで簡単に月20万−30万円は簡単に稼げる」と宣伝し、留学希望者を募る。そんな誘いに乗って若者たちが来日しているのです。

 

ベトナムの庶民の月収は日本円で1−2万円程度に過ぎません。海外での出稼ぎ希望者は数多くいます。そんな人たちの出稼ぎ先となっているのが、主に韓国、台湾、そして日本です。

 

そのなかで最も賃金が高いのが日本。技能実習生として来日すれば、月10万円程度は稼げます。ただし、実習生の場合、就労は3年までしか許されず、職場も変われない。留学で「月20万−30万円は簡単に稼げる」と聞けば、希望者が殺到するのも当然です。【次ページにつづく】

 

 

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