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2020.12.16

「極端な人たち」の正体――今日もどこかで燃えている

山口真一

コロナの時代の芸術──現代日本「動物」文学案内(7)

石川義正

イランの核科学者殺害

平井和也

韓国にみる電子政府の推進と課題

春木育美

コロナ危機とジャーナリズム――ドイツ語圏で普及するポッドキャストというメディアの「ながら」消費

穂鷹知美

「ゆる社会」を取り戻す

山口浩

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いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。編集長の芹沢一也です。今年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今年最後のαシノドス、最初の記事は、山口真一さんの「「極端な人たち」の正体――今日もどこかで燃えている」です。今年も、あるいは今年はコロナの影響もあって、例年以上にネットが炎上することが多かったようです。女子プロレスラーの木村花さんに向けられた誹謗・中傷を筆頭に、いくつもの炎上が頭をよぎります。こうした炎上を引き起こす人たちは一体どのような人たちなのか、そして炎上対策には何が期待できるのか、山口さんにご解説いただきました。

石川義正さんの「現代日本「動物」文学案内」、今回が連載の最終回となります。最終回は、早助よう子の『恋する少年十字軍』と『ジョン』が取り上げられ、新型コロナウイルス禍における芸術のあり方について考察されています。「芸術は建築と沈黙によって構成」されている。こうした観点から、早助よう子の作品が分析される先に浮上する、動物たちの「戦いの轟き」を聞き取らねばならないとされるとき、それは『監獄の誕生』とはるかに響き合って、いまだわれわれはその戦いと地続きであることが明らかにされます。

ついで平井和也さんの今月の気になる海外ニュース、今回のトピックは「イランの核科学者殺害」です。トランプ政権の任期が残り数週間に迫る中、イスラエルがそこにつけ込んで行動を起こすのではないかという懸念が中東で高まっています。そうした中で、先日、イランの核戦略の立案者であるモフセン・ファクリザデ氏が、首都テヘラン近郊の幹線道路で殺害されました。イランの核問題が改めて注目される中で、本件をめぐる各国の動向がきわめてデリケートなものとなっています。各報道はこの事件をどう報じたのか。平井さんにまとめていただきました。

「e-Japan戦略」を参照しつつ2000年初頭にデジタル化を推進し始めた韓国は、国連の電子政府ランキングで2020年に世界第2位となっています。現在の韓国では、あらゆる行政手続きを一つにまとめた電子政府ポータルサイト(「政府24」)を日常的に活用しているとのことですが、ハンコの廃止で大騒ぎしている日本との落差に眩暈がします。とはいえ、そのようなシステムを支えているのは「個人番号制度」であり、情報流通の問題もまた深刻なようです。利便性とプライバシーのトレードオフ問題も含めて、春木育美さんの「韓国にみる電子政府の推進と課題」から、課題の部分もかなり重たいものだとわかります。

ついで、ドイツ語圏を中心に最新のヨーロッパ事情をお伝えしている穂鷹知美さんの連載、今回は「コロナ危機とジャーナリズム――ドイツ語圏で普及するポッドキャストというメディアの「ながら」消費」です。コロナ禍のもと、広告収入の激減によってジャーナリズムもひっ迫した状況となっているようですが、こうした中、ポッドキャストによる音声配信が人気を博し、従来の紙中心のジャーナリズムもそこに活路を見出しつつあるようです。こうした状況をみると、人間の活動は「環境」に規定され、左右されるものだということがよくわかります。コロナは人類にとっての試練ですが、新しい環境がもたらすクリエイティブな活動もきっと数多く生まれてくるはずです。

昔、批評家の吉本隆明が、ポストモダン哲学に対して、そんな細かい議論しなくても「ほどほど」でいいんだよ、と言っていたと記憶しています。最近、彼のこの言葉をよく思い出します。昨今、社会のあらゆる場面で「遊び」がなくなってきている、本年最後の記事にて山口浩さんは言います。効率と、そして正義とがすべてを覆いつくそうとする中で、どんどん息苦しくなってきているようにみなさんも感じているのではないでしょうか。来年は、コロナも一段落して、少しでも「「ゆる社会」を取り戻す」ことができるといいですね。

よいお年をお迎えください!

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