地に足のついた復興を ―― 当事者として、国会議員として復興を考える

スピードよりも安心を

 

飯田 先生自身は、震災の直後に政府の対応が遅いと批判されていたかと思います。

 

黄川田 政府が被災地に安心を与えられなかったことはまずかったと思います。最初の段階のメッセージの発し方がよくなかった。すぐに予算を出せなくても、被災地の自治体ではなく政府が責任を持つと宣言して、細かいことはあとから決めればよかった。何も決まらず、先行きが不安な中、県も市町村も疑心暗鬼になっていました。「必要な予算は政府が確保する」というメッセージを出してもらえたら、だいぶ違ったと思います。

 

飯田 僕はスピード感がないという批判に違和感を覚えています。

 

というのも、例えば内閣府から200万円手当てをもらったとしても、そのときはありがたいでしょうけれど、来年も同じように手当てがもらえるのか、それとも町が再生して自分で商売を始められるようになっているのかがわからない。すぐに200万円出すことはスピード感があっても安心感はうまれません。

 

むしろゴールを設定する、いつまでにこれだけの予算を出すと言ってもらうことで、歩み自体はゆっくりかもしれませんが、安心して確実に一歩ずつ前に進むことができると思うんです。行政は、これだけの大災害であったわけですから、もっているものはすべて投入するくらいの覚悟を発信するべきでした。

 

黄川田 ただ先ほどもお話したように、行政は単年度主義なので、どんなに予算がついても、それをその年度で使い切らないといけない。年度末までに使い切れないと、予算を返せと言われたり、始末書を書かされたり、財務会計上のやっかいな仕事が増えてしまう。

 

とはいえ、うまく知恵を使えばいくらでも対応できるはずです。例えば復興基金に資金を投入してしまえば、あとは自治体の裁量で使い勝手良く動かせるようになります。復興基金は自治体の独自判断で複数年度にわたって使えるもので、例えば、高台移転で制度に乗れた人は良いが、漏れた人を救うには基金を活用できます。国の支援メニューが足りない産業振興の分野でも小回りの利く基金が必要でしょう。

 

一方で、どうしても他の市町村との横並び意識や、使い勝手が良いゆえに、国や県からすべて基金で賄うように言われてしまう懸念もあります。これからの課題は基金の増額と活用であり、上手く機能すれば、慌てて予算を組まなくとも、市民と会話しながら、それぞれの町にあう形で、お金を出すことができると思います。

 

飯田 予算の話ですと、復興予算を考える際に、最初に財源の話から始まったことには大変驚きました。こういうときのために赤字国債があるのに、なぜ渋っているのか意味がわからない。

 

先行きが見えないことは、被災された方々の間に不協和音を引き出し始めています。例えば、双葉町から埼玉の加須市に避難している方々は、仮設住宅に入った方と今も避難所で暮らしている方に分かれています。いま避難所にはお弁当がでているのですが、仮設住宅にはその手配がありません。それを不満に思った仮設住宅の方が、避難所のお弁当を有料化しろと行政に訴えかける事態になってしまった。さらには役所側も、お弁当を有料化して月6万円くらいとると言いだしている。または被災地周囲での声を拾っても、被災された方をみて「あいつらは失業保険をつかって遊んでばかりいる」と愚痴を言いだすような場面があります。

 

黄川田 お弁当の話は、行政が公正性を守りすぎてしまった事例でしょう。被災した直後は、お互いに大変なのだからと言って助け合えていたのに、時間がたって行政ごとに政策が異なってくると、隣の芝が青くみえてしまうんでしょうね。

 

飯田 お金もないし先も見えないと、普段ならどうでもいいはずのつまらないことがすごく気になってくるようになる。さらに精神状態も良くないために、ちょっとしたきっかけで、生きる気力を失ってしまう人も多くいる。

 

黄川田 腹をくくって生きている人もいれば、気分がふさぎ込んで、自殺を考えている人もいる。どちらか一方ではなく、いろいろな人がいることをマスコミには報道してほしいです。もしかしたら頑張っている被災者をみて、「俺も頑張ろう」と奮起する人だってでてくるかもしれないでしょう。

 

また偏った報道によって、ボランティアの人が偏ったイメージを持ってしまうかもしれません。被災者が、腫物に触るように扱われていると感じたり、施す側・施される側の意識で被災地に入ってきていると思ってしまったら、それだけで会話ができなくなってしまう。

 

 

これからの復興について

 

飯田 最後に、やはり国会議員として今後、どのような形で復興したいと思っていらっしゃるかをお聞かせください。

 

黄川田 復興、復旧に関しては与党も野党もありません。震災以降の政権のありさまや、その後の政局的な話に危機感を抱いていました。混乱し、また時間のない中で役人の作った復興基本法は、阪神淡路大震災を参考にしているために、津波や原発への発想が足りていませんでした。

 

そんな中、復興特別委員会は党の垣根をこえた話し合いができたと思います。まず、政府提案の復興基本法は撤回させました。そして、委員会として基本法を提出しました。行政のやりやすさを優先するのではなく、被災した現場のために、どうすればよいのか、自民党から共産党までの議員で考えていった。ですから復興関係の法案は、委員会の中で大いに議論し、修正のうえで成立していったわけです。

 

復興は数年単位で考える問題ではありません。10年単位で考えていく必要があるでしょう。町を再建するにしても、インフラの整備など基本的な部分は個人ではなく国や県や市町村が考えていく必要がある。一方、商店街や住宅地は、国ではなくて、町に住む人たちで着実に作っていかなくてはいけないと思います。国会議員として、そのバランスを取りながら、復興のために力を尽くしていきたいと思っています。

 

飯田 政治が出来ることは大きな枠組みを決めることです。そして、復興の詳細は時間を掛けて現場の人が考えていく必要がある。国会議員としての黄川田先生には復興財源の確保と継続に関する確たるフレームを作ること、そして当事者である黄川田先生には現地の声を拾い上げながら一歩一歩、陸前高田市、岩手県そして東北の復興を進めていただくことを期待します。

 

(2012年8月28日収録)

 

 

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