福島レポート

2021.03.10

UNSCEAR2020年報告公表――「福島の住民の放射線被ばくの健康影響は今後も考えられない」「甲状腺検査による過剰診断を指摘」

基礎知識

「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)は、2021年3月9日、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」)の影響に関する報告書(UNSCEAR 2020 Report)を公表しました。(正式タイトルは「2011年東日本大震災後の福島第一原子力発電所における事故による放射線被ばくのレベルと影響:UNSCEAR2013年報告書刊行後に発表された知見の影響」)

UNSCEARは、放射線が人や環境に及ぼす影響についての重要な事項を網羅的に調べて、国連に報告する役割を担っています。IAEAなどの国際機関や各国は、この報告をもとにガイドラインや法律などを作ります。

UNSCEARは、2013年に福島第一原発事故の報告書をつくり、その後も、新たに発表された論文や調査結果を反映した白書を、2015、2016、2017年と3回出してきました。

今回の2020年報告書は、明記されてはいないものの、福島第一原発事故についてUNSCEARがまとめる最終報告としての位置づけになる可能性もあります。

今回、UNSCEARが報告したことを以下で解説します。

1.福島第一原発事故後、福島の住民に放射線被ばくによる健康影響は見られておらず、将来的にも見られる可能性は低い。

2.原発事故後の福島で行われている甲状腺検査(原発事故当時18歳以下だった子どもや若者を対象にした甲状腺がんスクリーニング検査)で見つかった多数のがんについては、過剰診断が起きている可能性がある。(過剰診断は、検査で見つけなければ、一生症状を呈したり死亡につながったりしないがんを見つけていることを指します。)

1.福島第一原発事故後、福島の住民に放射線被ばくによる健康影響は見られておらず、将来的にも見られる可能性は低い。

今回のUNSCEAR2020年報告の特徴として、2013年報告のときよりも、実測に近い推計値を使っていることが挙げられます。

UNSCEARは、今回、原発事故後の福島の住民の食生活や行動などについて、2013年報告のときよりも実態に近い状況を再現して、計算を行いました。

この結果、福島第一原発事故後の福島の住民の放射線被ばく線量は、ほとんどの自治体で、2013年報告書で報告された推計結果よりも1/2以下か、それよりも大幅に低かったことがわかりました。

さらに、UNSCEAR2020年報告では、より実態に近い放射線被ばく線量の推計に基づいて、将来的に福島の住民にがんなどの健康影響が増えるどうかを予測しました。

その結果、「放射線被ばくによるがんなどの健康影響が、将来みられるとは考えにくい」としました。

2.原発事故後の福島で行われている甲状腺検査(原発事故当時18歳以下だった子どもや若者を対象にした甲状腺がんスクリーニング検査)で見つかった多数のがんについては、過剰診断が起きている可能性がある。

福島県では、原発事故当時18歳以下だった住民を対象に、甲状腺検査(甲状腺がんのスクリーニング検査)を実施しています。この検査は県民健康調査の一環として行われ、これまでに252人が「悪性ないし悪性疑い」と判定されました。そのうち203人は甲状腺の全部あるいは一部を摘出する手術を受けています。

UNSCEARは今回の2020年報告書で、福島の甲状腺検査で発見された甲状腺がんは「放射線によるものではなく、感度の非常に高い超音波機器によるスクリーニングを行ったことが原因で見つけられたもの」との見解を示しました。

さらに、福島の甲状腺検査で発見された甲状腺がんは過剰診断である可能性も指摘しました。加えて、福島の甲状腺検査による子どもや若者の甲状腺がんの過剰診断は、検査を受けた人に不安をもたらす可能性があり、不必要な治療につながるかもしれないとしています。

参考

・The UNSCEAR 2020 Report(Levels and effects of radiation exposure due to the nuclear accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (FDNPS): Implications of information published since the UNSCEAR 2013 Report

https://www.unscear.org/unscear/en/fukushima.html

・UNSCEARの報告はなぜ世界に信頼されるのか――福島第一原発事故に関する報告書をめぐって/明石真言氏インタビュー / 服部美咲

https://synodos.jp/fukushima_report/21606