2022.05.21

ウクライナ戦争と「ナラティブ優勢」をめぐる戦い

川口貴久 国際安全保障

国際 #安全保障をみるプリズム

はじめに

ロシアによるウクライナ全面侵攻から3カ月弱が経過した現在、ウクライナ軍は首都キーウに迫るロシア軍を押し返したものの、東部ドンバス地方や南部では激しい戦いが続いている。陸・海・空・宇宙に次ぐ、第五の戦場「サイバー空間」や第六の戦場「認知空間」【注1】でも、ウクライナとロシアの戦いが繰り広げられている。ロシアの「情報安全保障」という枠組みの中で「サイバー空間」「認知空間」が峻別されているかどうかは別として、これまでのところ認知空間での戦いはウクライナや米欧が明らかに優位に立つ【注2】。

日本でも情報戦への関心が高まっている。防衛省が2022年4月1日、防衛政策局調査課に「グローバル戦略情報官」を新設し、偽情報や対外発信の戦略的意図を分析するという。

そこで本稿はウクライナ戦争をもとに、情報戦・認知戦で用いられる情報の一種である「ナラティブ」および「ナラティブ優勢(narrative superiority)」をめぐる戦いについて考察する。

※本稿は以下を大幅に改定し、ナラティブに焦点を当てた。川口貴久「ウクライナ米欧VSロシア 認知空間での闘いの内幕」Wedge Infinity(2022年4月29日)。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26519

1.ウクライナ戦争で氾濫した偽情報と「ナラティブ」

ウクライナ戦争ではオンライン上のプラットフォームを中心に数多くの偽情報・不確実情報が氾濫した。単なる悪戯と思われるものから、軍事上の陽動作戦や政治的なプロパガンダまでが含まれる。

ロシアによる典型的な偽情報は、全面侵攻前の2月15日の「ロシア軍の一部は軍演習を終えて撤収を開始」や全面侵攻直後の「ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領は国外に逃亡した」といったものだ。

前者は各国政府、メディア、シンクタンク、OSINT専門家らが衛星画像、グーグル・ストリート・ビュー、ソーシャルメディアに投稿された画像・動画を用いて検証し、ロシア軍はウクライナ国境から撤収するのではなくむしろ国境に結集していると明らかにした。後者はゼレンスキー大統領が自らキーウ市内で「自撮り」した映像をFacebookにアップロードし、「私たちはここにいる」と反証した【注3】。

このようにウクライナ戦争に関する偽情報のファクトチェックでは、ソーシャルメディアが果たした役割は大きい。正確にいえば、ソーシャルメディアに加えて、高性能カメラ付きのスマートフォンや動画などをストレスなくアップ・ダウンロード可能な4G回線の普及によって、戦地からの情報発信や受信が可能となった。いわば、プラットフォーム(SNS)、デバイス(スマホ)、ネットワーク(4G回線)の三位一体が可能にした情報戦といえる。

しかし、ロシアは偽情報に限定されない情報戦を展開した。特にプーチン(Vladimir Putin)大統領はウクライナに対する独特の歴史観・政治観を繰り返し発信してきた。例えば、プーチン大統領がしばしば言及する「現代ロシアの源流はキエフ公国」といった言説は確かに「事実」かもしれないが、ウクライナ侵略を正当化する文脈で用いられてきた。

2021年7月に公開されたプーチン大統領の署名入り論文では「ウクライナの真の主権は、ロシアとのパートナーシップの中でのみ可能となると確信する」としている【注4】。このような他国の国家主権を軽視する主張は国際関係論・国際法を学べば誤りであることは明白だが、偽情報というよりも偏った価値判断・意見、プロパガンダに近い。

こうした情報戦で語られる物語は「ナラティブ」と呼ばれる。ナラティブとは、人々に強い感情・共感を生み出す、真偽や価値判断が織り交ざる伝播性の高い物語(詳細は後述)である。

偽情報はファクトチェックが可能だが、「ナラティブ」にはそれが難しい。世界各国のファクトチェック機関が述べているように、主観的な意見はファクトチェックの対象ではないからだ。

2.「ナラティブ」とは何か

改めて、「ナラティブ」とは何か。米国メリアム=ウェブスター辞典によれば、簡単にいえば「語られた何か」であり、「特定の視点または価値観を反映または奨励する、状況や一連の出来事を提示または理解する方法」と定義する【注5】。

ナラティブは社会学・経済学や国際関係論【注6】・安全保障研究【注7】などの幅広い学問領域、マーケティング分野【注8】などでも注目を集めてきた。

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー(Robert Shiller)は経済学の文脈でナラティブの重要性を強調する。シラーは、2000年前後のITバブルのような「根拠なき熱狂」を理解するために、行動経済学や人間の心理的要素を考慮したことが高く評価されている。その際の重要な概念が、「口承やニュース媒体、ソーシャルメディアを通じて広がる、感染性の通俗物語」としてのナラティブである。ナラティブが最も感染性を帯びるのは、「人々がその物語の根底にいる、またはその影響を受ける人間との個人的なつながりを感じる時」だという【注9】

早くから「ソーシャルメディアの兵器化」を指摘してきたP・W・シンガー(Peter Warren Singer)らもまた情報戦の文脈で、ナラティブを「個人の世界観と大きな集団におけるありようを説明する基礎的な要素」と位置付ける。シンガーらによれば、ナラティブが強固なものになるかどうかを特徴づけるのは、シンプルさ(simplicity)、共鳴(resonance)、目新しさ(novelty)の3つだという【注10】。

「共鳴」は少し分かりにくいが、シンガーらによれば、「共鳴」は瞬時に強い共感を持つような特定の言語や文化を指し、社会学でいう「フレーム」である。共鳴しやすい「ナラティブ」とは、自分自身がナラティブの登場人物に強い共感ないし反感を感じ、自分がナラティブの生成・拡散に参加できるものである【注11】。

シンガーもシラーも、効果的なナラティブの要素として、人々が共感を得て、より大きな集団との関係を感じ、自らもそのナラティブに参加できることを強調する。そして共感を得るための物語は事実ではなくてもよいし、根拠なき意見や価値判断でもよいのだ。

こうした観点で、「Qアノン」などの陰謀論も典型的なナラティブだ。「Qのクリアランスを持つ愛国者(Q Clearance Patriot)」を名乗るユーザ(通称:Q)は、説明や解説ではなく、問いかけや(一見意味不明な)単語の羅列を多く投稿した。こうした形式は、ユーザにとって、隠された陰謀の謎解きに参加する感覚を与え、Qアノン拡散の一因になったとされる。

3.「ナラティブ優勢」を確保する

前節までで「ナラティブ」の意味合いを検討したが、本節では情報空間で優位性を獲得すること、特に「ナラティブ優勢」について検討する。

「ナラティブ優勢」と似た用語として、軍事戦略では「海上優勢」「航空優勢」を確保することが重要だといわれる。「航空優勢」「海上優勢」とは、特定の空域や海域で相手方の利用を妨げ、こちらが自由にアクセス・活動できる状態を指す。圧倒的な軍事的非対称性がない限り、「絶対的優勢(supremacy)」というよりも、「相対的・部分的優勢(superiority)」を目指すこととになるだろう。

海空における優勢と同様に、言論空間や世論における「ナラティブ優勢」も重要である【注12】。ナラティブ優勢とは、相手方のナラティブを封じ、影響力を弱め、こちらのナラティブをヴァイラル(viral)にすることだ。「ヴァイラル」とは元々、「ウイルス性の」という形容詞だが、現代のインターネットユーザでは、ウイルス感染のように大勢の人に非常に速いスピードで拡散されることを意味する。

自国、交戦相手国、国際社会といった次元でナラティブ優勢を確保することが、自国の士気を高め、相手国の士気を打ち砕き、国際社会の支援を得ることに直結する。

現代の紛争では、ナラティブは物理的パワーに勝る場合がある。『140字の戦争』で有名なジャーナリストのパトリカラコス(David Patrikarakos)は2014年のイスラエルのガザ侵攻、ウクライナ東部ドンバスでの紛争、イラク・シリアでの「イスラム国」の戦いを取材し、物理的戦争と情報戦争の2つの戦争を目撃したという。そして、重要なことは「強力な兵器を有する者よりも、言葉やナラティブによる戦争を制する者が誰か」だとする【注13】。国際政治学者のジョセフ・ナイ(Joseph S. Nye, Jr.)もまた「今日のグローバル情報時代においては、勝利はしばしばどの軍隊が勝ったではなく、誰の物語(story)が勝ったかで決まる」という【注14】。

他方、ナラティブ優勢のための取組みは、一歩間違えれば、大本営発表や言論統制につながりかねないリスクもはらむ。それゆえ、民主主義国家の目指す認知空間・情報空間での優位性はあくまでも「相対的・部分的優勢」であり、異論を一切排除した「絶対的優勢」ではない(なりえない)。

ウクライナ戦争でのウクライナや米欧の戦い方を観察すると、ナラティブ優勢を確保するためには、基本的に2つの方向性がある。一つは自らのナラティブをよりヴァイラルにすることであり、もう一つは相手方のナラティブの影響力を削ぎ、場合によっては封じ込めることだ。

第一は、ナラティブにナラティブで対抗し、自らのナラティブをよりヴァイラルにすることである。

誤解を恐れずにいえば、ゼレンスキー大統領をはじめとするウクライナ側もナラティブを発信している。ゼレンスキー大統領が日々、ソーシャルメディアにアップロードする動画は全世界の人々が直接視聴可能であるし、各国メディアもこれを報じた。

またゼレンスキー大統領の各国議会向けの演説は各国向けに調整され、相手国・国民の感情を揺さぶる表現が多用された。例えば、日本向けに用いられた「原発事故」「サリン」「復興」は、多くの日本人の記憶にあり、琴線に触れるものだろう。もちろん、侵略された側がこうしたナラティブを用いることは否定されるべきものではない。

だが、議論を呼ぶナラティブもある。ウクライナのキスリツァ(Sergiy Kyslytsya)国連大使は国連緊急特別総会で、亡くなった若いロシア兵が死の直前に母親と交わしたとされる会話を公開した。しかし、一部のメディアはその事実を確認できなかったという。直ちに「黒」(偽情報)とは断定できないが、「グレー」(不確実情報)だ。

ナラティブをヴァイラルに、という点では、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン(Audrey Tang, 唐鳳)がいう「噂よりもユーモアを(Humor over rumor)」は示唆に富む。台湾政府はCOVID-19対策の一環として「ミーム」【注15】を用いて、ある時は偽情報を訂正し、ある時は必要な情報届けた。具体的には、トイレットペーパー不足の偽情報を解消するため、蘇貞昌・行政院長が備蓄の必要性を説くもの、柴犬を使って必要なソーシャルディスタンス距離を示すものなどだ【注16】。

必要な情報は、必要な人に伝わらなくては意味がない。しかし、ソーシャルメディア上では偽情報は正確な情報よりも早く、遠くまで拡散する傾向があることが判明している【注17】。こうした特性を逆手にとって、ファクトチェック結果や伝えたい情報がヴァイラルになるように設計したのが「噂よりもユーモアを」だ。これはヴァイラル性を重視したという点で、ナラティブの本質に通ずる。

第二に、相手方の個々のナラティブではなく、そもそもの発信源を封じることで、相手方のナラティブの影響力を抑え、封じ込めることである。例えば、ソーシャルメディア上で投稿・拡散される個々のコンテンツではなく、発信者や拡散そのものを封じることである。

既に述べたように、個々のナラティブは必ずしも偽情報が含まれるものでなはく、直ちに有害と判断できない場合もある。その際、ナラティブの内容そのものではなく、ナラティブの発信者・拡散者を封じることが効果的だ。いうまでもなく、この手法は「表現の自由」を侵害しうるもので、自由民主主義国家や開かれた社会にとって「諸刃の剣」である。しかし、実際に採用されたケースもある。

ウクライナ全面侵攻翌週の3月1日、欧州連合は域内の衛星放送、インターネットニュース、アプリケーション、インターネット動画共有サイトなどでロシア政府系メディアの「RT(英語版、英国、ドイツ、フランス、スペイン)」と「スプートニク」のコンテンツ配信などを禁じた【注18】。

また、ベラ・ヨウロバー(Vera Jourova)欧州委員会副委員長(価値観・透明性担当)は、ロシアが「情報を兵器にしている」との認識に立ち、Google、Twitter、Meta社などのデジタルプラットフォームに対して厳格な対処を要請した【注19】。つまり、各社が利用ルールを厳格に執行し、規約違反となるような不正行為・影響工作を検知・削除することであり、特にロシア政府組織や在外高官のSNSのアカウントの情報工作への対処を促すものだ。例えば、Meta社は情報・コンテンツの真偽や違法性を検知するのみならず、正しい情報であっても「組織的な不正活動(Coordinated Inauthentic Behavior: CIB)」がないかを検知・対処している。

おわりに 「ナラティブ優勢」をめぐる戦いは平時、そして東アジアでも

ウクライナ戦争では、単に偽情報とその検証のみならず、ナラティブをめぐる戦いが確認できた。ナラティブは事実や偽情報、価値判断・意見が混じりあうもので、特定の政治的目標や価値観を反映する。ナラティブが優勢を得る(ヴァイラルになる)のは、ソーシャルメディアを通じて多くの人々に強い感情・共感を生み出し、ナラティブへの参加を促すときである。

ナラティブ優勢をめぐる戦いは、ロシアの専売特許でもないし、戦時にも限定されない。本稿で論じたナラティブと完全に一致するものではないが、中国もまた認知領域における戦いを検討し、「制海権」「制空権」ならぬ「制脳権」という概念を提唱する【注20】。これらは人民解放軍が提唱したもので、特に有事における効果を意図したものだ(平時に展開されていない、という意味ではない)。より広範かつ平時・有事を問わない戦略的ナラティブとしては「制度性話語権(institutional discourse power)」という考え方がある【注21】。

中国政府関係者・政府系メディア、インターネット上のトロール(いわゆる「荒らし」を行う人々)、そして最近では軍・情報機関に紐づくと思われるグループ【注22】が日本語でナラティブを生成・展開する。そのテーマはCOVID-19の起源や各国の対応、在日米軍(特に在沖縄米軍)、日台関係に及び、その目的は中国および現指導体制の卓越性を示すこと、日本の安全保障政策に影響を及ぼすことと考えられる。

将来、仮に東アジア有事が発生した場合、陸・海・空・宇宙・サイバー空間はもちろん、人々の認知空間における戦い、--「ナラティブ優勢」をめぐる戦いが生じ、日本・日本人は当事者となる可能性が高い。その時に備えて、ウクライナ戦争における「ナラティブ優勢」をめぐる戦いから、今、我々が学ぶべきことは少なくない。

【注1】日本の防衛政策では新領域として「宇宙」「サイバー」「電磁波」を掲げているため、認知空間は数え方によっては「第七の戦場」ともいえる。

【注2】米海兵隊指揮幕僚大学のジル・ゴールデンゼール(Jill Goldenziel)は、ウクライナの情報戦での優位はあくまでも西側諸国に限定され、中国、アフリカ、その他重要な国々で勝利できていないという。ただし、ゴールデンゼールが指摘するように、西側諸国から支援を引き出し、ロシアに強力な制裁を課すという点では、ウクライナは情報戦を通じてその目標を達成している。 合田禄「情報戦でウクライナの勝利は一部だけ? 「戦後」を見据えるロシア」朝日新聞(2022年5月12日)
https://digital.asahi.com/articles/ASQ5C7FVJQ5BUHBI01C.html

【注3】Facebook上のゼレンスキー大統領のページ(2022年5月18日アクセス)。タイトルは「偽物を信じないで下さい(Не вірте фейкам)」。
https://www.facebook.com/zelenskiy.official/videos/1032009544324190/

【注4】Article by Vladimir Putin, “On the Historical Unity of Russians and Ukrainians,” July 12, 2021.
http://en.kremlin.ru/events/president/news/66181>

【注5】”narrative,” Merriam-Webster.
https://www.merriam-webster.com/dictionary/narrative

【注6】クイーンズ大学ベルファスト校のミスキモン(Alister Miskimmon)らは、国家のナラティブを対外的(国内を含む)に投射するという意味で「戦略的ナラティブ(strategic narrative)」という概念を提唱する。「戦略的ナラティブ」とは「政治的アクターによる手段であり、国内外において諸アクターの見解や振る舞いを形成するために、国際関係の過去・現在・将来において共有された意味を構成するもの」と定義され、内容としては①国際関係の構造の性質といった「システム」、②交渉や競争のアクターの「アイデンティティ」、③特定政策の実現の環境整備といった「イッシュー」に関わるものに大別できる。これらナラティブは、アクター(ナラティブに登場するアクター、ナラティブを発信するアクター)、出来事・プロット・時間軸(例えば、起承転結)、設定や場、問題とその解決など明示的・非明示的に含むものである。Alister Miskimmon, Ben O’Loughlin, and Laura Roselle, Strategic Narratives: Communication Power and the New World Order (New York: Routledge, 2013), p.5-8, 176.

【注7】防衛研究所の長沼加寿巳は安全保障・防衛分野におけるナラティブの定義を試み、ナラティブを「政策上の目標に対して心理及び認知領域における正当性を付与するように、意図的に作成された物語」とする。長沼加寿巳 「安全保障や防衛におけるナラティブ」『NIDSコメンタリー』第155号(防衛研究所、2021年1月15日) ;長沼加寿巳「認知領域における戦い:物語(ナラティブ)、感情、時間性」『NIDSコメンタリー』第163号(防衛研究所、2021年3月14日)

【注8】近年では、マーケティング分野でも「ナラティブ」の重要性が指摘されている。PRの専門家によれば、ナラティブとは「社会で共有される物語」である。「ストーリー」は企業側が一方的に起承転結のフォーマットで語られるものだが、「ナラティブ」は顧客が自らの体験として語りだすこと、共創という特徴があるという。 本田哲也「 「情報戦」でウクライナが圧倒的に優勢な理由:イーロン・マスクを味方にするSNSナラティブ」東洋経済ONLINE(2022年3月11日)
https://toyokeizai.net/articles/-/537359

また別の専門家は、IBM、ナイキ、ウォルマート、スターバックスの例のように、ナラティブが強固となるのは、人間関係が背景にあり、共通の目的を持ち、企業のDNAと整合的である場合だという。

Mark Bonchek, “How to Build a Strategic Narrative,” Harvard Business Revies, March 25, 2016.
https://hbr.org/2016/03/how-to-build-a-strategic-narrative

【注9】ロバート・シラー(山形浩生訳)『ナラティブ経済学:経済予測の新しい考え方』(東洋経済新報社、2021年)、4-7、18-19頁。

【注10】P・W・シンガー、エマーソン・T・ブルッキングス(小林由香利訳)『「いいね!」戦争:兵器化するソーシャルメディア』(NHK出版、2019年)、246-257頁。

【注11】シンガー、ブルッキングス、前掲『「いいね!」戦争』、254頁。

【注12】よく似た用語として「情報優勢(information superiority)」があるが、これは軍事的な意思決定・判断に必要な情報を相手方よりも十分に収集・分析した状態を指すことが多い。こうした文脈で、米軍の『統合ビジョン(Joint Vison)』では、情報優勢は「意思決定優勢(decision superiority)」に発展していく。

【注13】デイヴィッド・パトリカラコス(江口泰子訳)『140字の戦争:SNSが戦場を変えた』(早川書房、2019年)、13、133頁。

【注14】ナイの主張はRAND研究所のジョン・アーキラ(John Arquilla)らの指摘を参照している。Joseph S. Nye, “The Information Revolution and Soft Power,” Current History, No.113, Vol.759 (2014), pp.19-22; John Arquilla & David Ronfeldt, Networks and netwars: The future of terror, crime, and militancy (Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2001), pp.328-330.

【注15】正確にいえば「インターネット・ミーム」であり、インターネット上で拡散するコンセプトやコンテンツを指す。多くの場合、ジョークや「ネタ」的要素を原動力に拡散されることが多い。

【注16】Anne Quito, “Taiwan is using humor as a tool against coronavirus hoaxes,” Quartz, June 5, 2020.
https://qz.com/1863931/taiwan-is-using-humor-to-quash-coronavirus-fake-news/

【注17】笹原和俊『フェイクニュースを科学する:拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダのしくみ』(化学同人、2018年)、45-48頁。

【注18】“Council Regulation (EU) 2022/350 of 1 March 2022 amending Regulation (EU) No 833/2014 concerning restrictive measures in view of Russia’s actions destabilising the situation in Ukraine,” Official Journal of the Europe Union, Vol.65, March, 2022, Article 2f(p.2).
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=OJ:L:2022:065:FULL&from=EN

【注19】「ロシアの偽情報対策を求められる米IT大手」日本経済新聞(2022年3月23日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB231T90T20C22A3000000/

【注20】土屋貴裕「ニューロ・セキュリティ:『制脳権』と『マインド・ウォーズ』」『Keio SFC journal』Vol.15, No.2 (2015年6月) 、12-31頁; 飯田将史「中国が目指す認知領域における戦いの姿」『NIDSコメンタリー』第177号、防衛研究所(2021年6月29日)。

【注21】「制度的話語権」そのものは、加茂具樹「制度性話語権と新しい五カ年規劃」中国政観、霞山会(2020年8月20日)、戦略的ナラティブと「制度的話語権」は、山本吉宣「言説の対抗と米中関係:歴史、理論、現状」PHP総研特別レポート(2021年3月21日)、サイバー空間における「制度的話語権」は、八塚正晃「サイバー空間で『話語権』の掌握を狙う中国」『サイバー・グリッド・ジャーナル』Vol.11、2021年3月、14-17頁を参照。

【注22】例えば、従来とは異なるレベルでの対日情報戦が展開されていることを示唆するものとして、須藤龍也「偽プレスリリースに「認知作戦」の影 サイバー情報戦の謎に迫った」朝日新聞(2022年2月24日)。
https://digital.asahi.com/articles/ASQ2P52RJQ2GUTIL035.html

プロフィール

川口貴久国際安全保障

東京海上ディーアール株式会社 主席研究員。この他、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)客員所員(2021年6月~)、一橋大学非常勤講師(2022年4月~)などを兼任。1985年生まれ。専門は国際政治・安全保障、リスクマネジメント等。主な著作に、『ハックされる民主主義:デジタル社会の選挙干渉リスク』(土屋大洋との共編著、千倉書房、2022年)など多数。※2022年4月末時点での情報。

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