2023.05.11

2023年トルコ大統領選挙・議会選挙――建国100周年はどのような「節目」となるのか

岩坂将充 現代トルコ政治研究、比較政治学

国際

トルコでは、共和国建国100周年にあたる今年、大統領(任期5年・2期まで)と大国民議会(一院制600議席・任期5年)の同時選挙が5月14日に実施される。2018年に執政制度が大統領制に変更されてから2度目の選挙となる今回は、20年以上トルコを率いてきたエルドアン大統領(Recep Tayyip Erdoğan)と与党・公正発展党(Adalet ve Kalkınma Partisi, AKP)が政権を維持できるかどうかが焦点となっており、民主主義の後退が著しいトルコで選挙による政権交代の可能性がこれまでになく高まっているといわれている。

本稿では、近年のトルコの政治状況を分析したうえで、当該大統領選挙・議会選挙の背景と構図・争点などを整理し、選挙そのものや選挙結果がもたらしうるインパクトについて検討したい。

エルドアンの選挙バナー(イスタンブルにて2023年5月撮影。提供:Ozan Örmeci)。

近年のエルドアン・AKP政権をめぐる状況

各種自由の抑圧や大統領への権力集中をともなって権威主義化がすすむエルドアン・AKP政権であるが〔注1〕、このところの選挙結果や支持率からみると決して他を圧倒しているわけではない。例えば、長年続いた議院内閣制から権力集中型の大統領制への移行を目指した2017年改憲国民投票〔注2〕においては、改憲への賛成票は約51.4%と過半数を辛うじて上回ったにすぎなかったし、大統領制のスタートとなった2018年大統領選挙・議会選挙〔注3〕においてはエルドアンは約52.6%を獲得し第1回投票で当選を決めたものの、AKPは単独過半数(600議席中301議席)に届かず295議席にとどまった。こうした傾向は2015年議会選挙から継続しており、AKPはトルコ民族主義を掲げる民族主義者行動党(Milliyetçi Hareket Partisi, MHP)と事実上の連立を組むことで、議会多数派を維持してきた。

定期的に選挙を実施し選挙結果にしたがった政権運営をおこなっていることは、エルドアン・AKP政権が選挙から獲得できる正統性を重視していることを示すものであるが、ここでいう「選挙」はかならずしも「自由で公正な選挙」を意味するものではない。選挙キャンペーンにおける与野党間の不均衡や自由への抑圧は以前から指摘されているし〔注4〕、選挙管理をおこなう高等選挙委員会(Yüksek Seçim Kurulu, YSK)をはじめとする司法府へのエルドアンの影響力は無視できるものではない〔注5〕。選挙結果が著しく変わるようなあからさまな不正は生じていないと考えられているが、政権への支持が減少傾向にあると、広義の選挙介入への懸念は高まることになる〔注6〕。

実際にこの懸念が裏づけられたのが2019年3月に実施された統一地方選挙である。この選挙では広域市(büyükşehir belediyesi)の首長選挙もおこなわれたが、最大都市イスタンブルと首都アンカラにおいて、野党第一党である共和人民党(Cumhuriyet Halk Partisi, CHP)の候補が勝利し、両都市では15年ぶりにAKPが広域市長の座を失うこととなった。イスタンブル広域市長選挙では、CHP候補・イマムオール(Ekrem İmamoğlu)が僅差でAKP候補・ユルドゥルム元首相(Binali Yıldırım)を下し、かつてエルドアンも務めた同広域市長職を野党が奪ったことが象徴的に受け止められたが、AKP・MHPによる異議申し立てがYSKに認められたことで、同選挙の無効と6月の再選挙実施が決定した〔注7〕。しかし再選挙ではイマムオールとユルドゥルムの票差はむしろ拡大し(約1万4,000票差から約80万票差)、イマムオールの当選が確定する結果となった。同選挙は、CHPなど野党の勢いとエルドアン・AKP政権の選挙結果への「執念」を印象づけるものであった。

以降、エルドアン・AKP政権は現在にいたるまで厳しい課題に直面し続けている。長期化する経済不況は出口がみえず、リラ安やインフレにも歯止めをかけられていない。対米ドルレートは、2020年1月に1ドル=約6リラだったものが2023年1月には約19リラにまで下落〔注8〕、物価上昇率(前年同月比)も2020年1月の14.97%から2022年10月には85.51%となり、そこから改善したものの2023年1月時点では57.68%といまだ高い水準に留まっている〔注9〕。公式統計に対する人々の信用度は高いとはいえず、現状はこうした数値よりも悪いと考える人々も多い〔注10〕。また、2020年初頭からのコロナ禍も、政権の当初の対応は比較的評価されたものの、状況が長引くにつれて不満や不信が高まり、経済不況とともに政権支持に否定的な影響を与えた。さらに、2023年2月初旬にトルコ南東部を震源として発生した大規模地震では、死者5万人以上、倒壊建築物20万棟以上という甚大な被害にくわえ、地震対策の不備や救助の遅れ、不適切な報道規制などが指摘され、政権の対応を疑問視する声も小さくない。

国民生活におけるこのような困難は、「内外の諸課題に迅速で効果的な対応」ができると謳われていた大統領制に疑問を呈することとなった。そしてこの点を掬い上げ、争点化するとともに野党間の協力体制を築くきっかけとなったのが、元AKP幹部らが設立した新党であった。

トルコ政治のあらたな構図

その新党とは、ダヴトオール元首相・外相(Ahmet Davutoğlu)が2019年12月に設立した未来党(Gelecek Partisi, GP)と、ババジャン元外相・経済担当相(Ali Babacan)が2020年3月に設立した民主主義進歩党(Demokrasi ve Atılım Partisi, DEVA)である。両者ともかつてはAKPを代表する政治家であったが、2019年にAKPを離党し権威主義化がすすむエルドアン・AKP政権と袂を分かっていた。GP・DEVAの両党は、2018年議会選挙以降、選挙連合(後述)である国民連合(Millet İttifakı)を結成していたCHPなど4党とともに、大統領制から「強化議院内閣制(güçlendirilmiş parlamenter sistem)」への移行――事実上の議院内閣制の復活――を軸に野党の連携強化を模索、6党は2022年2月に「強化議院内閣制に関する覚書」に署名・公表した。以降、この勢力は6党円卓会議(Altılı Masa)と呼ばれるようになり、政権に対抗しうる存在として、現状に不満を抱く人々の一定の受け皿になっている。

とはいえ、6党円卓会議の大統領選挙・議会選挙に向けた準備は当初決して順調ではなく、具体的には2つの点で困難を抱えていた。1つは、6党それぞれのイデオロギーが異なることもあり、選挙にむけた戦略やヴィジョン、とくに大統領統一候補を早期に示せなかった点である。最大勢力であるCHPは中道左派・アタテュルク主義〔注11〕を掲げているが、2番目の規模を持つ善良党(İYİ Parti)はトルコ民族主義、民主党(Demokrat Parti, DP)は中道右派、その他3党は親イスラーム的性格を含む右派ないし中道右派の政党とされる。統一候補は、早々に出馬を表明した現職のエルドアンと争う円卓会議の「顔」となるはずであったが、こうした各党の距離感から、会合を重ねても一向に発表されることはなく、次第に人々の関心も薄れていった。

6党円卓会議にとってのもう1つの困難は、議会「第三勢力」ともいえる、トルコ国内の少数民族であるクルド人に基盤を持つ人民民主党(Halkların Demokratik Partisi, HDP)と包括的な協力関係を築けなかった点である。HDPはAKPとCHPに次ぐ議会第三党の地位にあるが、トルコで長年「テロ組織」に認定されるクルディスタン労働者党(PKK)との関係が疑われており、エルドアン・AKP政権だけでなくMHPやİYİ Partiといったトルコ民族主義政党からもその点について非難を受けている。円卓会議としては、同じく議院内閣制の復活に賛同するHDPの協力があれば政権に対しより優位に立ちうるが、HDPとの連携によってİYİ Partiやその支持者を失う恐れがあるため、積極的にHDPにアプローチすることができなかった。

しかしこれらの困難も、2023年3月初旬にクルチダルオールCHP党首(Kemal Kılıçdaroğlu)が大統領統一候補として発表され〔注12〕、後述するようなヴィジョンを打ち出していったことで大きく変化した。選挙に際しGP・DEVAの両党は国民連合に参加、6党円卓会議=国民連合となり、選挙に向けて期待と支持はふたたび高まりつつある。また、統一候補となったクルチダルオールとHDP共同党首との会談が実現して以降は、HDPとの協力関係も進展していった。HDP系の選挙連合である労働自由連合(Emek ve Özgürlük İttifakı)は独自の大統領候補を擁立せずクルチダルオール支持を表明するというかたちで、大統領選挙においては国民連合に協力することとなった。

こうして、5月14日に実施される大統領選挙・議会選挙での大まかな構図が定まった。大統領選挙は、AKP・MHPなど与党系の人民連合(Cumhur İttifakı)の候補であるエルドアンと、国民連合の候補でHDP系の労働自由連合が支持するクルチダルオールが、そして議会選挙は上記3つの選挙連合が主に争う図式である。

クルチダルオールの選挙ポスター。左からイマムオール、クルチダルオール、ヤヴァシュ(イスタンブルにて2023年5月撮影。提供:Ozan Örmeci)。

大統領選挙の展望

大統領選挙は、前述のようにほぼエルドアン対クルチダルオールの構図といって良いが、実際には他の要素が大きくかかわっている。5月14日に実施される第1回投票で過半数を獲得した候補がいなかった場合には、上位2名による第2回投票が同月28日に実施されることになっているが、4月に実施された各種世論調査によると第1回投票で当選者が決まる可能性はあまり高いとはいえない〔注13〕。

というのも、エルドアンとクルチダルオール以外の2名の候補者、つまり元CHPで現在は郷土党(Memleket Partisi)党首のインジェ(Muharrem İnce)と、トルコ民族主義とシリア難民送還を主張する小規模な選挙連合が擁立したオアン(Sinan Oğan)が、それぞれ5%強・2%強を獲得し、有力な2候補とも過半数に届かないと見込まれているからである。多くの世論調査では、クルチダルオールが上回っているとされるが僅差であり(概ね47%程度、エルドアンは45%程度)、過半数との差もインジェやオアンに見込まれる得票率よりも小さい。そのため、インジェとオアンの動向は、第1回投票のみならず第2回投票が実施される場合にも選挙結果に大きな影響があるといえる。

百戦錬磨のエルドアン・AKP政権がこれらの候補に対してどのようなアプローチをとるか、第1回投票での決着を望む有権者がどのような戦略をとるか、そして第2回投票でエルドアンとクルチダルオールの決戦となった場合にインジェ・オアンがどちらへの支持を表明するかが、大統領選挙の結果を大きく左右するものになると考えられる。

議会選挙の展望

議会選挙では、前述のように、与党系の人民連合、CHPを中心とした国民連合、HDP系の労働自由連合、という3つの選挙連合の争いが中心となっている。選挙連合(seçim ittifakı)とは、2つ以上の政党からなる枠組みで、比例代表制が採用されているトルコの議会選挙においては投票用紙にも記載される。投票用紙には選挙に参加する政党名が並び、有権者はその下に押印して投票先を示すことになるが、2022年4月の選挙法改正によって連合内の政党の議席は各選挙区での政党の得票率にもとづいてドント方式で配分されることとなった〔注14〕。また、議会に議席を得るために必要な最低得票率(閾値)である7%は、連合に所属する政党ではなく連合の得票率に対して適用されるという点も重要である〔注15〕。

【表1】2023年議会選挙における主な選挙連合。DSPは民主左派党、SPは至福党、EMEPは労働党(筆者作成)。

この制度改正に対し、各党は選挙連合に参加するか、あるいは他党の候補者名簿に加わるか、単独の政党として選挙に臨むか、という選択を迫られることとなった。与党系の人民連合は、国民連合と労働自由連合を「伝統的な社会・家族の破壊者」や「テロリストの協力者」として非難し〔注16〕、自身も親イスラーム・保守色を濃くすることで協力政党を拡大していった。具体的には、親イスラーム色が強く女性の権利保障に否定的な再生福祉党(Yeniden Refah Partisi, YRP)を自連合に迎え入れ、親イスラーム的クルド系政党である自由ダウワ党(Hür Dava Partisi, HÜDA PAR)〔注17〕をAKPの候補者名簿に加えた。これにより人民連合は、従来のAKP・MHP・大統一党(Büyük Birlik Partisi,BBP)にYRPをくわえた4党で選挙に臨む。

国民連合は、İYİ Parti以外の4政党と他1党をCHPの候補者名簿に加え、CHPとİYİ Partiの2党のもとで選挙を戦う。またこの2党は、16の選挙区で一方しか投票用紙に記載しない「ジッパー方式」によって、票の分裂を防ぎつつ議席の最大化を試みる戦略を採用した〔注18〕。そして、連合の大統領統一候補であるクルチダルオールは、Twitter上の動画で、選挙毎にクルド人をテロリストとみなす与党勢力を批判するとともに自身がアレヴィー(Alevi)〔注19〕であると告白するなど、社会の融和や和解といった国民連合のヴィジョンを、とくに若い世代に向かって訴えている。この社会のタブーに切り込む姿勢は、現状の変革を求める人々から歓迎されると同時に、変化を望まない人々からは強い反発を受けている。

そして労働自由連合は、その中心であったHDPが憲法裁判所によって閉鎖される可能性を考慮して緑の左派党(Yeşil Sol Parti, YSP)〔注20〕の候補者名簿に参加、YSPが事実上HDPの後継政党として機能するかたちとなった。YSPは、クルド人をはじめとする民族や宗教・性的マイノリティの権利拡大を主張する点でHDPと同様であるが、環境保護への関心も高く、さらに広範な支持の獲得を目指している。連合パートナーのトルコ労働者党(Türkiye İşçi Partisi, TİP)も近年支持を増やしており、労働自由連合は左派色を強めているといえる。

4月までの各種世論調査によると、その多くにおいて支持率第1位はAKPで第2位はCHP、第3位はİYİ PartiもしくはYSP、次いでMHPとなっている〔注21〕。選挙連合や閾値が関係するため選挙結果の見通しは困難であるが、人民連合が優位ながらも国民連合との差は大きくないと考えられ、両連合ともトルコ民族主義の政党を抱える状態で労働自由連合とどのような関係を築いていくかが、議会多数派の形成に影響を与えることになると思われる。

「節目」としての2023年

共和国建国100周年はいうまでもなくトルコにとって節目であるが、今後のトルコを決定づけるという意味では今回の大統領選挙・議会選挙も重要な「節目」である。前述のように与野党が拮抗している状況では、エルドアン・AKP政権の継続も、クルチダルオール・国民連合への政権交代も、大統領の出身政党と議会多数派が異なる「ねじれ」も、いずれの可能性も否定できない。仮に政権交代がおこったとしても、国民連合内の各党のイデオロギーの差や、YSPを中心とした労働自由連合との関係性は、政権の不安定さの要因となるだろう。議院内閣制復活のための改憲プロセスも決して容易ではなく、実現したとしてもAKPが再び多数派の形成に成功する可能性もある。

とはいえ、こうした議論が成立するかどうかはすべて、「自由で公正な選挙」がどれだけおこなわれるかにかかっている。今回のエルドアンの出馬についても、2014年の大統領就任から数えて「3期目」にあたり違憲との訴えがあったが、YSKは2018年の執政制度変更を「1期目」とするため今回は「2期目」であるとして出馬を認める判断を下した。また、多くの報道機関での野党勢力の扱いは政権に配慮していた以前の状況から比較的改善したようにみえるが、依然として国営放送での与野党間の報道時間の格差は大きい〔注22〕。さらに、先月末にソイル内相(Süleyman Soylu)が今回の選挙を「西側の政治クーデタの試みである」〔注23〕と表現したことは、政権が選挙結果の受け入れを拒否しうるメッセージともとらえられた。与野党どちらが勝利するにしても、僅差では選挙結果の受容で混乱が生じる可能性が高い。

最大の争点である経済に加え、現在の権威主義化がすすんだ状況を有権者がどのように評価し判断するか。民主主義の後退が指摘される世界においてどのような「節目」が生じるか、注目される。(2023年5月6日脱稿)

〔注1〕例えば、Freedom House, Freedom in the World 2023: Turkeyhttps://freedomhouse.org/country/turkey/freedom-world/2023).

〔注2〕岩坂将充「トルコにおける国民投票――『大統領制』は何をもたらしうるのか」SYNODOS、2017年(https://synodos.jp/opinion/international/19487/)。

〔注3〕岩坂将充「岐路に立つトルコ政治――『大統領制』はいかなるスタートを切るのか」SYNODOS、2018年(https://synodos.jp/opinion/international/21824/)。

〔注4〕例えば、Reuters, “Poll Observers Raise Concerns Over Curbs on Freedom in Turkey,” 1 April 2019.(電子版)

〔注5〕岩坂(2017)を参照。

〔注6〕権威主義体制における選挙については、東島雅昌『民主主義を装う権威主義――世界化する選挙独裁とその論理』千倉書房、2023年、が詳しい。

〔注7〕YSKの選挙無効理由は、「公務員ではない者が投票箱委員会の委員長および委員を担当した」ことであった。無効の判断は、7対4の賛成多数でYSKで承認された。

〔注8〕トルコ共和国中央銀行(Türkiye Cumhuriyet Merkez Bankası)の数値による。

〔注9〕トルコ統計機構(Türkiye İstatistik Kurumu)の数値による。

〔注10〕例えば、MetroPoll, Türkiyeʼnin Nabzı: Ayın 5 Rakamı, Haziran 2020.

〔注11〕アタテュルク主義(Atatürkçülük)とは、初代大統領アタテュルク(Mustafa Kemal Atatürk)の時代に掲げられた近代化理念を指す。国家による宗教の管理・監督や、宗教の政治への不介入を主張する世俗主義(lâiklik)はその1つである。

〔注12〕統一候補発表の直前には、İYİ Partiがクルチダルオール擁立に反対し6党円卓会議を一時離脱するなど、混乱がみられた。同党はヤヴァシュ・アンカラ広域市長(Mansur Yavaş)とイマムオール・イスタンブル広域市長に出馬を呼び掛けたが、両者はクルチダルオールへの支持を表明した。この両者については、円卓会議としてクルチダルオールの擁立に合意した際、将来的に副大統領に任命されると発表された。

〔注13〕たとえば、Euronews, “Cumhurbaşkanlığı Seçimi: Son Anketlerin Ortalaması Kaç, Kılıçdaroğlu ve Erdoğan Kaç Oy Alıyor?,” 5 May 2023.(電子版)

〔注14〕従来は、まず選挙連合の得票率にもとづいて各連合への議席が配分されたうえで、連合内の政党の得票率に応じて各政党に議席が振り分けられていた。選挙法改正によって、連合内の小規模政党は統一名簿に加わらない場合には不利になるといわれている。

〔注15〕閾値は、前回の議会選挙までは10%に設定されていた。

〔注16〕エルドアンや人民連合、与党系メディアは、HDPをPKKと同一視し大統領選挙で協力関係にある国民連合と合わせて「7党円卓会議」と揶揄、非難している。

〔注17〕HÜDA PARについては、今井宏平「トルコにおけるもう1つのクルド政党――フューダ・パルとはどのような政党か」SYNODOS、2016年(https://synodos.jp/opinion/international/18413/)を参照。

〔注18〕この場合、当該選挙区の投票用紙には国民連合の名は記載されない。Hürriyet, “Millet İttifakı Adına 16 İlde Yasak,” 20 April 2023.(電子版)

〔注19〕アレヴィーとは、イスラームの分派の1つでトルコ人やクルド人の宗教マイノリティである。トルコにおける割合は約12%とも約19%ともいわれるが、多数派を占めるスンナ派からは異端視・差別されてきた歴史がある。若松大樹「現代トルコのアレヴィー――少数派として生き抜く」、『FIELDPLUS』No.19、2018年、8-9頁;森山央朗「『クルドのアレヴィー』と『トルコのアレヴィー』」、『アジ研ポリシー・ブリーフ』No.107、2018年。またこの動画は、公開4日間で2,920万回再生を記録した。クルチダルオールの告白に対し、エルドアンは「我々は宗派差別の問題を抱えていない」と反論している。

〔注20〕正式名称は、緑と左派未来党(Yeşiller ve Sol Gelecek Partisi)。2022年10月の党大会でシンボルマークをHDPに似たものに変更した。

〔注21〕例えば、Euronews, “2023 Seçimleri Son Anket Sonuçları: Partilerin Oy Oranı Kaç, İttifaklar Kaç Oy Alıyor?,” 4 May 2023.(電子版)

〔注22〕Cumhuriyet, “TRT’nin Bir Aylık ‘Demokrasi’ Yayıncılığı: Erdoğan’a 32 Saat, Kılıçdaroğlu’na 32 Dakika!,” 2 May 2023.(電子版)

〔注23〕NTV, “İçişleri Bakanı Soylu: 14 Mayıs Siyasi Darbe Girişimidir,” 29 April 2023.(電子版)。また、ウチュム大統領首席補佐官(Mehmet Uçum)も政権交代を「クーデタ」と表現した。Cumhuriyet, “Soylu’nun Ardından Şimdi de Erdoğan’ın Başdanışmanı Mehmet Uçum İktidar Değişimini ‘Darbe’ Saydı,” 2 May 2023.(電子版)

プロフィール

岩坂将充現代トルコ政治研究、比較政治学

北海学園大学法学部教授。博士(地域研究)。ビルケント大学大学院経済社会科学研究科(トルコ)、および上智大学大学院外国語学研究科満期退学後、日本学術振興会特別研究員(PD)、同志社大学高等研究教育機構准教授を経て、現職。専門は現代トルコ政治研究(民主化・政軍関係・対外政策)、比較政治学、中東イスラーム地域研究。著作に『よくわかる比較政治学』(ミネルヴァ書房、2022年、岩崎正洋・松尾秀哉との共編著)など。

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