地下鉄サリン事件から20年――いまだ後遺症に苦しむ被害者たち

20年前の3月20日、首都の地下鉄3路線5方面の車両に、猛毒ガス・サリンがまかれた。事件は5系統15の駅で同時多発的に発生し、被曝した13人が死亡、約6500人が重軽傷者を負うという大惨事となった。

 

被害者は都内278の医療機関に搬送され、あるいは自力でたどり着いた。都市に毒ガス兵器が散布されるという無差別テロは、空前絶後のことで、医療機関も、あるはずのないサリンという物質を前に、困難な対応をせまられた。

 

その前年の6月27日には、死者8人重軽傷者660人を数える松本サリン事件が起きていて、その被害者の治療に当たった医師からは、比較的早期にその経験が伝えられた。だがそれでも、想定外の毒ガステロ被害者に対する対応に様々な困難があった事は否定できない。

 

被害者のほとんどは、いつもの駅からいつものように地下鉄で通勤・通学するごく普通の市民だった。その、通勤通学のピーク、午前8時が狙い撃ちされたのである。生存被害者の多くの初期の訴えは、息が苦しい、痙攣が止まらない、周囲が暗く見える、胸が苦しく吐き気がする、激しい頭痛、鼻水やよだれが止まらない、などだった。

 

それでも、負傷者の被害は、ほとんどの病院において一過性のものと扱われ、身体障害が残る重傷者を別にすれば、短期間の通院、または長くて数か月の入院で治療を終えたものとして扱われた。

 

しかし実際には、医者からは治ったといわれたサリン被害者の多くが、その後も心身に様々な問題を抱えながら生活していたのである。

 

自宅や勤め先で凄惨な事件現場がフラッシュバックする、通勤に出ようとすると足がふらついて踏み出せない、などのいわゆるPTSDといわれる症状をはじめとして、被曝を境に、視力が落ちた、目がチカチカする時がある、臭いや煙に過敏になった、殺虫剤や線香の臭いを嗅ぐと気持ちが悪くなる、疲れやすくなった、集中力が衰えた、記憶力が衰えた、ときには記憶の一部がボコッと脱落してしまうことがある。こうしたことが、高齢者だけではなく事件当時20代30代の人にも起こっていたことが重要である。

 

二つのサリン事件の被害者に取材する中、被害者のこうした後遺症に注目したジャーナリストがいた。私たちの団体の理事でもある磯貝陽悟氏である。彼はこうした被害者のための継続的な健康診断を行う必要性を感じ始め、そのための受け皿造りに奔走した。

 

そしてやはりサリン事件にかかわってきた医師、看護師、弁護士などの専門家に声をかけ、その協力を得てR・S・Cの前身となる任意団体が設立された。そして、事件の翌年の96年春から健康診断をスタートした。

 

私共の団体、リカバリー・サポート・センター(以下R・S・C)がNPO法人の認証を受けたのは、事件からちょうど7年目、2002年の3月20日の事である。【次ページにつづく】

 

 

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