LGBTが生きやすい職場のために

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働くことと自らのセクシュアリティには関係がある

 

村木 また職場の人間関係も聞いてみました。「悪い」「非常に悪い」と答えたのは全体の8.7%、MtFは20%以上です。具体的に何を言われて嫌だったかと言うと、LGBTについて直接言われることよりは、まず未婚であることについてなにか言われるのが嫌だという回答が多かったです。

 

 

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遠藤 結婚していないと一人前に見られないことが多くて。あと、セクシュアル・マイノリティに限らず、ジェンダーの問題として「男らしさ」「女らしさ」につまづいている人は多いですね。

 

村木 配置転換や退職に追い込まれるといった直接的なハラスメントを受けている例もたくさんありました。これらは戦えば勝てる事案だと思いますが、多くの方が泣き寝入りされています。また相談できる窓口がなかったり、相談したら二次被害にあってしまった人もいました。

 

私自身そうですが、LGBTであることと仕事のことをわけて考える人は当事者にも多くいます。ただ働いてみてわかったのですが、たとえば異性愛者の場合、子どもが遠足に行ったとか、運動会を見に行ったといったプライベートを職場で隠さずに話している。これは異性愛者であることの表明なんですよね。一方でLGBTは、誰と遊んだとか、どんな映画をみたといった話は極力しないようにしている。これって不自然ですよね。やっぱりLGBTであることと仕事には関係があるのだと思います。

 

その関係がはっきりとでたのが、差別的な言動の有無です。47.7%が差別的な言動があると答えています。他の指標とクロス集計してみたところ、まずストレスを感じていない人は差別的な言動がないと答えていることが多いですね。反対に、ストレスを感じている人は、差別的な言動があると答えています。また職場での公平感、人間関係の良し悪しとも相関関係がありました。

 

 

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仕事にやりがいを感じているかどうかも聞いています。この「やりがい」を他の指標とクロス集計すると、ストレスが低い、公平感が高い、人間関係がよいと答えている人の多くは、やりがいがあると答えています。これはつまり、差別的な言動の有無、職場の居心地のよしあしがやりがいに繋がっているということだと思います。

 

 

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さて職場で自分のセクシュアリティをカミングアウトしているかというと、LGBT全体では38.5%が上司や部下、同僚のいずれかにカミングアウトしていました。この結果は、アンケート調査に答えてくださった人が比較的関心が高い層だったからかなと思います。私の身の回りはこんなに高くないですね。お二人はどうですか?

 

明智 私はカミングアウトしていませんね。

 

遠藤 トランスジェンダーは歩くカミングアウトなので言わざるを得ないんですよね。

 

村木 確かにMtFとFtMのトランスジェンダーはカミングアウトしている率がトランスジェンダーでないLGBに比べて高くなっていました。あと職場が一番カミングアウトのハードルが高いようで、友人に対しては約9割、家族に対しては約5割がカミングアウトしていました。

 

遠藤 へえ、家族が一番低いと思っていました。

 

 

会社が個人のあり方をサポートする

 

村木 それからカミングアウトも他の指標と様々な相関がありました。

 

まずストレスを感じている人はカミングアウトしていないことが多い。反対にストレスを感じていない人はカミングアウトしている人が多いですね。それから人間関係がいいと答えた人も悪いと答えた人も、カミングアウトしている率が高くなっています。これはカミングアウトが良い方向にも悪い方向にも転ぶということなんだと思います。

 

また職場でどんなLGBT施策を望んでいるか聞いたところ、ニーズが高かったのは「同性パートナーへの福利厚生の適用」でした。一方、必要ないという回答も146件ありました。これは施策があろうがなかろうが、カミングアウトしていない人にとってその施策は使えないからではないかと思います。

 

カミングアウトしているかどうかで、どんな施策が欲しいか回答がかわっているのですが、唯一「差別禁止の明文化」は、カミングアウトの有無に関係なくニーズが高かったですね。もし一体なにから取り組めばいいのだろうと考えている会社がありましたら、まずはここから取り組んでみたらいいと思います。

 

明智 うちの会社の場合、規則で「性的指向による差別を禁止」しているんですけど、みんな読んでいないし、読んでいても意味をわかってないと思うんですよ。だから普通にジェンダーハラスメントがあって。独身だと「ホモじゃないか」、「ゲイじゃないか」とか。ルールがあっても活用されていないと意味がないと思います。

 

村木 ルールや施策がなくても小さい会社だと、社長さんが、同性愛者がいるのを知っていて、「同じ扱いにするよ」ってところもあって。本人も満足しているしほかの社員も不満がない職場もあるんですよね。

 

最後に、自由記載で感想を書く欄を設けたところ、40%の方が書いてくださいました。しかも長文で、会社の名前も書いているような人もいました。

 

明智 へえー!

 

村木 いままで伝える場所がなかったって声が多く、こうした調査が求められている感じがありましたね。一方、カミングアウトに対する微妙な心境であったり、LGBT施策が進むことでかえって差別が出てくるんじゃないかと恐れている人もいました。あとは職場だけじゃなくて、学校やメディアの教育をどうにかしてくれって話もありました。

 

さてこのアンケ―トでとった20問の相関関係から、私が考えたのはこんなストーリーです。

 

まずLGBTに関する差別的な言動のある職場に対しては、環境の改善が必要です。そのためにはLGBTだけでなく、そもそもの性差別的言動に対応する必要があるでしょうし、もっと言うのであれば、人との違いを受け入れるダイバーシティ教育が必要でしょう。そういった施策によって、当事者の人間関係、ストレス、公平感が改善されて働きやすくなる。それによって当事者のやりがいが向上し、職場全体の生産性もアップしていく、そういう流れじゃないかと思います。職場の居心地や働きやすさがアップすることで、転職率も一般のレベルで落ち着くようになるんじゃないか、と思っています。

 

 

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今回は聞いていないのですが、もしLGBT当事者が職場で自分らしさを発揮できるようになったら、きっと周りの人も楽しいと思うんです。LGBTに対応するということは、根源的な個人のあり方を会社がサポートするという強いメッセージになるので、そういう会社で働けるのは嬉しいじゃないですか。

 

明智 きっと職場に限らず、学校とか家族とか、どの環境にもいえる普遍的なことで、取り組みとしては企業だけじゃなくて、いろいろな場所でやっていかないといけないことだと思うので、このデータが他の場所でも使えると思います。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.267 

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