『いちから聞きたい放射線のほんとう』(筑摩書房)菊池誠・小峰公子(著)おかざき真里(イラスト)
「放射線」「放射性物質」「セシウム」「ベクレル」「シーベルト」……。福島第一原発事故の直後から、見慣れない言葉を多く目にするようになった。科学に日頃触れていない身にとっては、その意味を正確に理解するのは、とても骨の折れる作業である。
しかし、放射線の知識はみんな理解しているよね、と社会はどんどん進んでいってしまう。今さら「放射線ってなんですか」「ベクレルとシーベルトの違いって何」「放射線ってなんで体に悪いの」とは、とてもとても聞けない。そもそも、誰に聞いていいのかもわからない。
『いちから聞きたい放射線のほんとう』は、「放射線が気になる人のための、もっともベーシックでわかりやすい本」を売りにしている。本書では、物理学の専門家である菊池誠氏に、福島県郡山市出身のミュージシャン小峰公子氏が、わからない点をとことん聞いていく。科学が苦手という人も安心して欲しい。小峰氏が気になるところを徹底的に質問してくれるので、よくわからないまま本を読み終わることもない。
第一部「放射線ってなんだろう」の第一章は「みんなつぶつぶでできている――原子と原子核のこと」である。なんと、原子についてのおさらいからはじまる。元素周期表のイラストまでついてくる。基礎中の基礎と言える。しかし、「そんなのもう知ってるよ」とめんどうに思ってはいけない。
原子のしくみから放射線を理解したうえで、「シーベルト」「ベクレル」「内部被ばく」という言葉に触れると、するすると理解できる。一見遠回りに見える道のりも、後の理解に大いに役立つ。そして、知っていたはずのことが、菊池氏の説明だとより生き生きと感じられる。こんな、理科の先生に習いたかったと思う人もいるだろう。
菊池(メガネと長髪のアイコン)「もてあましたエネルギーを外に発散して、別の原子核に変わっちゃう。その時に放出するものが放射線」
小峰(お団子頭のアイコン)「おお。放射線はやるせなさエネルギーの発散なのか!」
二人のやり取りは、軽妙に、丁寧に進んでいく。
第二部では、「DNAが壊れたら必ずがんになるの?」「妊娠中の被ばくをとう考えればいいの?」と素朴な疑問も扱っている。放射線についてほとんど知らない人、そもそも興味がなかった人に、ぜひ手に取って欲しい本。(山本)
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著者のひとり、菊池誠氏の記事一覧 → https://synodos.jp/authorcategory/kikuchimakoto