日銀がいかに仕事をしていないかが分かる、たったひとつのグラフ

絶望的に足りていない日銀の金融政策の規模

 

 

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さらに数字を詳しく眺めてみれば、リーマンショック後、欧州の中央銀行であるECBと、アメリカのFRBに比べて、日本の日銀の金融緩和の“規模“が、いかに足りていなかったのかが直感的にわかるのが上のグラフである。

 

より具体的には、FRBとECB、日銀それぞれのリーマンショック以前と以後の実際にバランスシートの規模の推移を示しているもので、中央銀行のバランスシートの規模とは、106ページ以降で説明した通り、まさに各国の中央銀行が行っている金融緩和政策の“規模感”を如実に確認できるものである。

 

このグラフからは、リーマンショック後、FRBとECBがそれぞれ自行のバランスシートを一気に3倍と2.5倍に増やしているのに対し、日本銀行は1.4 倍しかバランスシートを拡大させていないということがわかるのである。

 

さらにより具体的にアメリカの数字(バランスシートではなく、ベースマネーそのもの)を眺めれば、FRBはリーマンショック以降QE1~QE4と呼ばれる4回に渡る金融緩和政策(=量的緩和政策)によって、実に“140兆円”ものベースマネーを市場に“追加”投入していて、一方の我らが日銀は……、リーマンショック以降“追加で”増やしたベースマネーの量は、40兆円にしかすぎなかったのである。

 

実際には、アメリカの経済規模は、日本の(1ドル80円で換算した場合の)経済規模(=名目GDP)の約2.4倍であるため、ここから換算して、「では日本の金融緩和の規模は、アメリカの経済規模と照らし合わせると、アメリカで何兆円規模の金融緩和政策を行ったことになるか?」を計算すれば、それでも日銀は、(FRBの140兆円に対し)96兆円しか“追加での”金融緩和政策を行なっていなかったということにあるのである。つまり、米国との単純比較でも、日銀の金融緩和は“約50兆円”も不足しているのだ。

 

103ページ以降でした、「リーマンショック後、国際的に見て、一番経済が落ち込んだのは、まったくリーマンショックとは関係のないように見えた日本経済であった」という話は、まさに「日銀だけが、大規模な金融緩和政策を拒んだために起こったことである」ということができるのである。結局に、「日銀はすでに大規模な金融緩和を行っている」というのはまったくの事実誤認であるということが言える。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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