特定秘密保護法Q&A

Q6.どのくらいの期間、秘密指定されるのでしょうか?

 

国家は憲法にしばられており、国家が正当になしうる活動には限界があります。また国政にかかわる情報は私たちの《財産》ですから、情報は市民の批判や検証の対象にされなくてはなりません。そこで秘密指定の有効期間の問題は重要です。

 

法4条によれば、次のようになっています。

 

 

・指定の日から5年を超えない範囲で、行政機関の長が有効期間を定め、指定の有効期間が満了するときに、政令で定めるところによって、延長をすることができる(4条2項)、

・有効期間は通じて30年を超えることができない(4条3項)

 

 

では、30年ですべての秘密指定が解除されるのでしょうか。

 

この点、当初の政府案へは、「指定の日から有効期間は通じて30年を超えるときに、「内閣の承認」さえあれば延長を繰り返すことができるため、半永久的に秘密にすることができる」という批判がありました。

 

批判を受ける形で、自民、公明、維新、みんなの4党による修正協議の結果として、次のような整理がなされました。

 

 

(1)有効期間は《原則》として30年を超えることができない

(2)《例外》として「指定に係る情報を公にしないことが現に我が国及び国民の安全を確保するためにやむを得ないものであることについて、その理由を示して、内閣の承認を得た場合」には、有効期間を延長できる

(3)そのようなものについても、有効期間が通じて60年を超えて延長はできない

(4)《例外の例外》として、通じて60年を超えて秘密指定の有効期間を延長できる類型列挙(4条4項1号~7号)

 

 

これは「30年から60年に後退して改正ではなく改悪だ」という批判が強くなされたところです。一般論としてみても、《原則》―《例外》関係に、《例外の例外》をいれると、《原則》を観念することの意義が大幅に減少します。《例外の例外》に引きずられて《原則》が拡大(「60年まで指定できる」)ということになりかねません。

 

 

■秘密の指定解除と文書の保存

 

秘密の指定が解除されたからといって、公開されるわけではありません。また、どうやら秘密の指定は、文書が廃棄されないこと(保存されること)を意味するわけではないようです。

 

事柄は、国民の「知る権利」に関わるのですから、公文書管理の観点から、文書の保存との関係が精査され、きちんと法文に表わされる必要がありますが、本法は不十分です。

 

特定秘密保護法は、特定秘密情報の記録された行政文書ファイル等を、秘密指定の有効期間の途中で国立公文書館等に移管することなく、当該行政機関が持ち続ける(あるいは廃棄しうる)という前提に立っているものといえます。

 

気になるのは、文書の廃棄です。

 

先にも挙げた長妻昭衆議院議員による「防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書」(平成25年11月18日提出)への答弁書(平成25年11月26日付)によると、防衛秘密の要件を欠くに至る前に、廃棄されたものがかなりの件数と点数にのぼっていることが分かります。

 

 

3

 

 

そして同じく長妻昭衆議院議員による「特定秘密保護法案及び防衛省の秘密解除後の文書公開と破棄に関する質問主意書」(平成25年11月28日提出)の、

 

「特定秘密に指定されたものは、保存期間前に廃棄されることは、完全に禁止されているのか否か。仮に保存期間前に廃棄できるとすれば、どのようなケースか。それは、どのように(例えば、省令、訓令など)定めるのか」

 

という質問事項へ答弁(平成25年12月6日付。ちなみにこれは本法が成立した日です)をまとめると、次のとおりです。

 

 

・公文書等の管理に関する法律6条1項の規定により、行政機関の長は、行政文書ファイル等を、保存期間の満了する日までの間、保存しなくてはならない

・特定秘密保護法に規定する特定秘密を含む行政文書ファイル等が、保存期間前に廃棄されることはない

・ただし同法5条1項に規定する政令等において、「秘密の保全上真にやむを得ない場合の措置として保存期間前の廃棄を定めることは否定されない

 

 

また、

 

「特定秘密に指定されたものは、特定秘密が解除される前に、廃棄されることは、完全に禁止されているのか否か。仮に特定秘密の解除前に廃棄できるとすれば、どのようなケースか。それは、どのように(例えば、省令、訓令など)定めるのか」

 

という質問に対しては、

 

「お尋ねの『特定秘密が解除される前に、廃棄される』場合の例としては、特定秘密を含む行政文書ファイル等の保存期間が満了した場合があり、この場合には、公文書管理法の規定に従い廃棄することができる」

とあります。

 

つまり、

 

 

・特定秘密を含む行政文書ファイル等は保存期間満了前にも廃棄されることがある

・特定秘密が解除される前でも保存期間が満了したら廃棄されうる

 

 

というのです。

 

ここで法4条4項は、先にも見たように30年を超えて秘密指定することの要件として「内閣の承認を得た場合」としていますが、同6項は「第4項の内閣の承認が得られなかったときは」、行政文書ファイルの保存期間の満了とともに、公文書館等に移管しなければならないとしている点が、興味深いところです。

 

内閣の承認を得ようとしなければ、「保存期間が満了したら廃棄されうる」旨の12月6日の答弁書と矛盾しないからです。

 

また答弁の中でも触れられている法5条ですが、これは特定秘密について、行政機関の長は「その他の当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとする」としています。

 

【逐条解説】を見るに、そのような措置として、防衛秘密の例が参照されて、「特別秘密に係る文書、図画又は物件の作成、運搬、公布、保管、廃棄その他の取扱い及び特別秘密の伝達を適切に管理するための措置……」が挙げられています。

 

本法は、文書の廃棄というのは特定秘密の指定とは別の次元の話であって、当然になしうるのだという理解に立っているようです。

 

しかし「特定秘密の指定」は、法3条の要件を満たす場合になされるのでした。特に長期間にわたり秘密の指定がなされるものは、通常、歴史的にも重要度の高い情報でしょう。

 

それが公文書館のダブルチェックの機会をもたないままに廃棄されうるというのは、おかしいのではないでしょうか。公文書館の役割を改めて考える必要があるといえます[*14][*15][*16]。

 

 

スライド3

 

 

[*14]もっとも、ANNニュース(2013年11月12日)によると、国立公文書館を視察した安倍総理大臣は「特定秘密に指定された文書等について、その保存期間が満了したものは、ほかの行政文書と同様、歴史的文書として適切に取り扱われる」旨、述べています。

 

強調を付した部分が、「ほかの行政文書と同様の扱いを受け、歴史的文書については歴史的文書として適切に取り扱われる」という趣旨であるとしたら、上で述べた「まとめ」の通りとなるでしょうが、「保存期間が満了したら、歴史的文書として適切に取り扱われる」というニュアンスがあるようにも感じます。

 

[*15]自民党の「特定秘密の保護に関する法律Q&A」のQ32「長期間特定秘密に指定されるような重要文書は、指定が解除された後に公開すべきではないですか?」への回答のなかでは、「30年を超えて長期間にわたって特定秘密として指定を継続してきた文書について、自ら指定を解除する場合にも、すべて歴史公文書等として国立公文書館等に移管されるよう、運用基準に明記することを検討します」とあります。保存期間との関係が気になるところです。

 

[*16]なお、【逐条解説】には秘密の指定の有効期間についての説明はありますが、文書の保存期間との関係ははっきりと触れられてはいません。

 

サムネイル「Surveillance」Lisa

http://www.flickr.com/photos/66206547@N00/8469794945/

 

 

 

 

 

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