2014.03.19
LGBT就活――20人に1人の就活生の現状
2014年3月卒の大卒求人数は42万人を超えるといわれています。人口の5.2%といわれるLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど)の新卒就活生は2万人以上であると想定できます。
しかし僕自身、LGBT就活生のひとりとして就職活動をしていたとき、面接を受ける度に「LGBTの就活生に会うのは初めて」と人事の方から言われることは少なくありませんでした。また、「うちの企業にLGBTはいません」と言いきられることも多々。
でも、本当にそうなのでしょうか?
セクシュアリティは目には見えません。そのため、気が付かずにLGBTの就活生と接していることが想定できます。
LGBTの元就活生たちに、就活体験記を聞いてみました。
「カミングアウトして」の就活体験記
《中島潤》
要介護高齢者を対象にしたサービスを提供するベンチャー企業に、新卒社員として入社して2年目。トランスジェンダーであることを就活時からカミングアウトし、現在戸籍は女性のまま男性社員として働いている。
■大人になることも、はたらくこともできないと思った幼少期
初めて「自分は、はたらけないんだろうな」と思ったのは、小学校の職業体験。体験学習の中で見えてきた「はたらく人」は男性か女性だけ。その人たちがはたらく社会っていうのも規範的な家族を前提とした社会なのだな、と感じたのを覚えています。
例えば、電車の運転手を職業体験したとして、「でもこの男性用と女性用に分けられた制服のどちらかを着ないといけないんだったら、自分はなれないな」と。その時点で選択肢がひとつなくなるように感じました。
その後も、生き方の多様性やセクシュアリティの多様性について学校でも教えられないまま、人生設計や進路選択を行う時期になりました。多様な選択肢があると知らないから、全ての選択肢が自分にあてはまらないものに思えてしまい、進路を考えようという気持ちにもなかなかなれませんでした。「自分は大学に行ったとして、それでどうなるんだ」と。一般的な、『企業就職』という道はないと漠然と思っていましたし、そもそも大人になれるというビジョンを持つこともできなかったからです。
だから、就活以前の段階で躓いていたんだと思います。身近にLGBTの等身大のロールモデルの不在、教育を受ける中で自分の存在が認識されている、あるいは社会の中に自身が含まれているという実感が持てなかったから、自分が大人になれるビジョンが持てませんでした。このような状況の中で、僕と同様にはたらけないと思ってしまう、という状況は、多くのLGBTにあてはまることだと思います。
■カミングアウトしての就活を決意
大学時代にセクシュアリティを含め、自分を受け入れてくれる仲間ができたことや、はたらくLGBTの大人と出会いロールモデルができたことで、就活に踏み出すことができました。でもセクシュアリティを伝えて就活するか否か、とても迷いました。
最終的にセクシュアリティを伝え就活することにした理由は、3つあります。1つ目に、セクシュアリティを理由に落とすような企業は、きっとその他の価値観も合わないだろうと思ったから。明かさずに就活して入っても、後々居心地が悪くなるかもしれない。2つ目に、面接で「何故それをしたいの」「その想いはどこからくるの」と問われた時、セクシュアリティを隠したまま語ることは困難だろうと感じたから。セクシュアリティは僕の大切な一部だし、それを通じて気づいた社会の在り方、歪みがたくさんある。そして3つ目に、僕がセクシュアリティを伝えた上で就職することで、後輩たちに「日本の企業や社会も捨てたもんじゃない!」って言いたいし、企業側にも「こんな人もいるんだ」ということを知って欲しかったからです。
■就活の入り口で見えた「男女」の壁
就活で感じた最初の「壁」は、リクルートスーツと「あるべき就活生像」についてでした。男女で服装や髪型、マナーまでも分かれており、就活生は一般社会より強いジェンダー規範でくくられているように感じました。企業によっては、男女で説明会日程を分けていたり、男女での実質の仕事内容や昇進の仕方が違ったり。エントリーシートの性別欄も、特にトランスジェンダーにとっては困難になりやすいです。
就活の入り口で見える景色があまりにも男女でわかれており、それに当てはまらない人を排除するからこそ、特にトランスジェンダーの就活生は就活の入り口にも立てない現状があります。
「はたらきたい業界(や企業)」と「ありのままではたらける業界(企業)」が一致しない可能性があり、だからこそLGBTの就活生にとっては選択肢が狭まるように感じられるとともに、自身の望む仕事ができないと感じることも少なくないのだろうなと。自分もひとりで就活していたらきっとそう思っていたと思う。就活を始める段階で相談できる友人や、明らかにセクシュアリティを理由に落とされた面接のときに愚痴を聞いて「そんな会社には行かなくていい」と僕の代わりに怒ってくれる人がいたんです。それはすごく自分を責めないことや、諦めないことにつながりました。
■就活を終え、思うこと
実際に就活をやってみると、予想より好意的な反応が多かったです。最終的に内定を受諾した企業には、一次面接で履歴書を提出する際に説明したのですが、「では、性別欄は空白のままで」と言って履歴書を受け取ってもらい、その後の面接でも特別扱いはされませんでした。
就活を経て、自身の意識の中でセクシュアリティの占める割合が下がった様に思います。就活を始めるまでは「就活におけるハードルはセクシュアリティだけ。それさえ超えれば就活は大丈夫だろう」と思っていました。でも、社会に出るって男性としてはたらくか女性としてはたらくかとかそんな単純なことじゃなく、自分と社会の関わり方を考えないといけないんです。就活を通じて、セクシュアリティは自分の大事な部分ではあるけれど、それほど大きくないんだな、と思えました。
LGBTの就活生には、「自分のことを大事にしよう」と思ってほしい。例えば僕は、法律違反をしている会社では、はたらきたくないというのと同様に、女性として扱われないって言うのが自分の尊厳を守る上で大事だった。環境破壊は嫌だというのと同じ視点で女性としてはたらくのは嫌だった。だからこそ、LGBTの就活生には特に自分の大事にしたいものが何かを考え、それを大事にしてくれる企業を見つけるための就活をしてほしいと思います。
■企業やキャリアセンターへのお願い
「多様性を尊重する」という価値観がある企業には、是非明示して頂きたいです。
会社説明会で質問したり、エントリーしてみるなど自分からアクセスしないと、LGBTに対する差別の有無がわからない現状があります。自分が勇気を持って問いかけないとわからないから、傷つくのが怖いと思ったらアプローチできないし、折角welcomeだったとしても上手くマッチングできない可能性もあります。「性的指向によって差別しない」ということを会社規定で明記している企業はまだ日本には少ないですが、そのようなメッセージを出してくださることで、LGBTの就活生はアプライしやすくなります。
また、僕は就活時キャリアセンターには相談できませんでした。キャリセンターに寄せられている卒業生の声の冊子があたりまえに男女別に記載されていたことが一因です。キャリアセンターも是非LGBTの就活生がいることを念頭に置いた発信をしていただけたら、LGBT就活生も相談に行きやすいのではないかと思います。
《筆者からの補足》
アメリカではHuman Rights CampaignがLGBTのはたらきやすさをランキング形式で毎年発表しています。http://www.hrc.org/campaigns/corporate-equality-index
これは、LGBTの就活生のみにとどまらず、LGBTでない人にとっても、企業の人権意識を計る上でとても重要な指標であると言われています。
また、日本でも東洋経済の2014年度版のCSR調査の中に、LGBTに対する項目が入りました。http://www.toyokeizai.net/csr/pdf/syukei/CSR_syukei2014.pdf
「カミングアウトをしない」就活体験記
《小川奈津己》
来春から中高の教諭としてはたらく。就職時にはトランスジェンダーであるとカミングアウトしないことを選択。戸籍の性である女性として勤務予定。
■教員になりたい、を叶えるための就活
小さい頃から教員になりたかったので、一般企業への就職活動はしていません。また、カミングアウトして不合格だった場合、それがセクシュアリティのせいなのか実力のせいなのかわからないので、まずは実力をためすためにカミングアウトしないで就活を開始しました。学生時代、LGBTの活動をしていたことを、ES・自己PR・面接でふれたけれども、自分のセクシュアリティにはふれないようにしていました。面接はレディースのパンツスーツでメイクはしないという方法をとりましたが、それに関しては何も言われませんでした。
しかし、教員は対人間の仕事なので、セクシュアリティというアイデンティティのひとつを秘密にしたまま子供たちと人間関係を構築することには困難があるだろうと予想しています。実際、教育実習の際も受け入れ校がないことを懸念し女性として実習に参加しましたが、その時も自身を隠しているような後ろめたさがありました。しかしながら、教職はまだまだ保守的な職種でもあるので、カミングアウトしての就職も安全とは言えない、とも感じます。
それでも教職をめざした理由はふたつ。ひとつは、小中高といい先生にめぐりあえたおかげで教職への憧れがあったから。もうひとつは、ロールモデルになりたかったから。ロールモデルというのは、LGBTの生徒にとっては将来の選択肢のひとつとして、LGBTでない生徒にとっては身近なLGBTとして、教職をめざすLGBTにとっては前例として。だからこそ、いずれはカミングアウトしたい、と考えています。そのためにもまずは仕事で成果・実績をあげること。信頼関係があれば、カミングアウトしても大丈夫だと思うので。また、自身がLGBTとしてでなくても、LGBTのことを教えることはできるため、日常でも授業でも教員研修でも、LGBTのことは伝えていきたいです。
■教育委員会・学校・教職事務室へのお願い
教職につきたいLGBTにとっては、介護等体験、教育実習、教員採用試験……と、就活以前から対外的な問題がたくさんあります。実際、ある地域ではトランスジェンダーであることを理由に教育実習の受け入れ先がなく、実習に行けなかった例があると聞きます。
最初の窓口である教職事務室が否定的でもいけないし、また大学が協力的であったとしても先方が受け入れてくれなければ実現しない。みんながそれぞれLGBTについて理解して、受け入れの実績をつくり、LGBTがあたりまえに実習も就活もできるようにしてほしいと願います。
《筆者からの補足》
LGBTであることをカミングアウトしないで就活をするLGBTも少なくありません。はたらきはじめてからカミングアウトをする人もいれば、ずっとしないままはたらくことを選ぶ人もいます。
カミングアウトをしないではたらく人の中には、「カミングアウトをしないはたらき方を選んだっていうより、自分にとって、カミングアウトは必要なかったように思います。学生時代も多くの人にはセクシュアリティは伝えていなかったですし。だからこそ、絶対カミングアウトしないと決めているわけではなく、必要が出てくればしようとも思っています。」との意見も。
カミングアウトできる選択肢もありながら、カミングアウトしてもしなくても、就活がしやすく、またはたらきやすい職場であることが理想的です。
2013年の虹色ダイバーシティーの調査によると、職場でカミングアウトをしているLGBTは38.5%。友人へカミングアウトしている人は88.3%、家族へカミングアウトしている人は49.5%で、職場でのカミングアウトの難しさが伺えます。http://www.nijiirodiversity.jp/公開資料/
カミングアウトしはたらく社員×経営者対談
最後に、自身のセクシュアリティをオープンにしてはたらく平山さんとその企業の経営者小寺さんにインタビューをさせていただきました。
平山さん
ゲイ。5年前に通信会社に新卒として入社し、3年後に小寺さんが経営する会社に転職。一社目ではカミングアウトせずにはたらき、現在二社目となる企業ではセクシュアリティをオープンにしてはたらく。
小寺さん
学生を中心とした、人材育成会社を経営。
■二人の出会いからカミングアウト
平山さん 大学2年の時に小寺さんと出会いました。
小寺さん 平山に対する初対面の印象は、あんまり良くないんですよね(笑)なんだか物の見方が斜めで、人をどこか信じきっていない印象でした。そんな印象からスタートしましたが、彼が所属しているサークルで4回コーチングの講師を務めたり、その後に1対1のコーチングで話を聴いている内にだんだんと関係性が変わっていきました。「成長したい」「もっと自分を変えたい」そんな想いを話してくれる彼と一緒に「うちの会社でインターンしない?」という話になったのは、出逢ってから半年後くらいのことでした。
平山さん 大学3年時にがっつりインターンをする中で、だんだんと自分はどう生きたいか考えるようになりました。その中で自分のセクシュアリティに向き合うきっかけが多く生じて、自身が担当していた就活セミナーの最後の回で受講者や運営メンバーにカミングアウトしたんです。大人数に対してセクシュアリティをカミングアウトするのは人生で初めてでした。
小寺さん 平山はライフデザインスクールのメンバーにカミングアウトしたことで、本当にすごく変わっていきましたね。よく僕はその違いを、BC(before coming out)とAC(after coming out)と言っているくらいです(笑)平山はカミングアウトした後にどんどんいろんなことに積極的になって、自分の意見もいきいき伝えるようになりました。
僕はメンバーよりも先にカミングアウトしてもらったのですが、海外に長く住んでいたのもありますし、私の中でLGBTが異質なものだとは思っていなかったから特段驚きませんでしたが、カミングアウト後の彼の活躍、変わりぶりにはすごい驚きました。それは僕だけではなく、周りの人たちも同じだったと思います。
■カミングアウトせず、他社ではたらくことを決意
平山さん インターンした当初はここに就職するなんて想ってなかったけど、小寺さんとのコミュニケーションが多くなる中でその選択肢がでてきました。でも立ち上げたばかりのベンチャー企業に入るのはいばらの道だなと感じて、3年他社で修行しようと思って、大手通信会社に入社しました。
その会社ではカミングアウトしませんでした。勇気がなかったから。今なら言うな、とは思うけど。例えば就活中に他の会社を受けたときも、「LGBT向けのサービスがしたい」とは言えなかったですね。怖くて。セクシュアリティを言わないでいたけど、実はそんなに不便じゃなくて。もちろんおっくうなことも沢山あったけれど。例えば先輩の付き合いで合コンや風俗に付き合ったり。他にも「彼女いるの?」とかはコミュニケーションのひとつとしてよくあったから。「彼氏」を「彼女」に置き換えて話して、あえて遊んでいるキャラを演出してばれないようにしていました。
でも、今の会社の方が、断然はたらきやすい。全てが違うと感じますね。自分を語る上で、ゲイっていう面は存在しているわけで、それが決して全てではないけれど、そこなしには語れない。それを語らなかった前職では本当とは違う自分を像としてつくって生きていたように思います。だからこそ、心が震えるくらいの感動やうちひしがれるほどの悔しさもなかった。仕事もその中に心をいくら込められるかが、その仕事で出せるバリューにもつながると思っています。
■LGBTとはたらく、について企業に伝えたいこと
小寺さん LGBTとはたらくことが特殊だったり、特別である社会から、もっとナチュラルで当たり前な社会になったらいいなぁと思っています。セクシュアリティだったり、障がいというものが特別視されて、それだけに注目してしまうと、その人の人間性や個性そのものまでも偏って理解されてしまう気がします。セクシュアリティや障がいは、きっとその人の個性の一部であって、全てではないはずです。セクシュアリティの一面からだけで判断するのではなく、ホリスティック(全体的)に人や物事を捉えていくことで、きっと、もっともっと多様な人たち同士が互いを分かりあえるのではないかと思います。
これから支持され、繁栄していく企業はきっと、そんな人間性を尊重した経営をしていく会社なのではないかと思いますし、そうなって欲しいなと願っています。
平山さん 多様性のある組織がいかに素晴らしいか、なんで大切なのかっていうのをもっと知ってほしいと思っています。Walmartでも多様性のある組織が生き抜ける組織が大事って言っていたけど、日本の多様性ってまだポーズ的なところがあると感じます。育休とかも制度さえ有ればいいわけじゃなくて中身の部分も必要だし、多様性は女性に関することだけではないし、でもLGBTだけじゃないし、どんな人でも輝ける才能があって、それを活かせる環境を作ることが大切だと感じています。自分らしくはたらけることが、人の幸せや会社の利益につながることを多くの会社が認めていくことで、社会も変わっていくと信じています。
■これからはたらくLGBTへ
小寺さん どんな人でも必ず素敵な部分があるし、輝く個性を持っていると思っています。だから、自分の可能性を信じて、周りとのつながりやご縁を信じて、生きたい道を生きて欲しいです。LGBTであることで、決して自分を蔑んだり傷つけたりする必要はない。周りからの目や評価で、自己否定をしてしまう子も多いとは思うけど、自分が自分を信じてあげてほしいし、それを受け止めてくれる人はこの社会に必ずいて、今、出会えていないなら探しに行って欲しいし、どんなに必死で探してそれでも見つけられなかったら僕らのところとかに会いにきてほしい。独りじゃないよって伝えたいですね。
平山さん 諦めないでほしい。自分に、そして将来の人生に。本当にやりたいこととか、見せたい自分がいるけど、周りがこうだから周りにこう言われたからっていう理由で諦めている人が多くて、それが悲しい。カミングアウトをした方がいいとは思わない。あくまで選択肢でしかないから。ただ、どこかでそれを隠すことで生きづらさや過ごし辛さを感じているなら、カミングアウトするという選択肢があることも知っていてほしい。そしてその選択肢が、企業においても社会においても守られるといいなと願っています。
今日からできる、取り組みを考える
LGBTの元就活生の3人の声を掲載させて頂きました。
セクシュアリティは目に見えないため、「会ったことがない」と感じたあなたも、きっとどこかでLGBTの就活生に出会っているのではないかと思います。
就活生の20人に1人はLGBTもいるため、困る点や求められる対応はひとりひとり違いますが、セクシュアリティを理由にLGBT就活生が就活を不安に思う現状を緩和するため、今日からあなたにできることがあります。
■企業など職場ができる取り組み
<まずは……>
●LGBTの就活生がいることを念頭において、就活生に接してください。
決して「特別扱いをしてください」という意味ではなく、セクシュアリティが障壁になり力を発揮できない現状を緩和して頂きたいと願っています。
<できること……>
●もし御社がダイバーシティーを重視している場合、また性的指向で差別をしない場合、是非社内の倫理規定にそのことを明記してください。
●LGBTの就活生も分け隔てなく採用するという方針がある場合は、御社ホームページや説明会、SNSなどでそのことを発信をしてください。
●人事の方や、面接・採用に関わる方に、LGBTの研修をしてください。それが難しい場合は、この記事を配布してください。
●企業の中には、LGBT就活生に向けた就活説明会を実施しているところもあります。また、社内でLGBTグループを持つ企業もあります。是非参考にしてください。
→先進企業事例(特定非営利活動法人虹色ダイバーシティHPより):http://www.nijiirodiversity.jp/先進企業事例/
■キャリアセンターやハローワークなど、就活支援機関ができる取り組み
<まずは……>
●LGBTの就活生がいることを念頭において、就活生に接してください。
決して「特別扱いをしてください」という意味ではなく、セクシュアリティが障壁になり力を発揮できない現状を緩和して頂きたいと願っています。
<できること……>
●職員やカウンセラーなどに、LGBTの研修をしてください。それが難しい場合は、この記事を配布してください。
●LGBTの就活生も相談できる場所であることを、発信してください。SNSやポスター、イベント実施などその方法は様々です。
●LGBTの人の開示可能な就活事例がある場合は、開示してください。LGBTの就活生は事例を知ることが難しいため、とても有益な情報になります。
●LGBTの就活生からの相談がありましたら、LGBTの就活支援を行う団体を紹介することも一つの方法です。
■教育機関ができる取り組み
<まずは……>
●LGBTの子どもがクラスにいることを念頭において、子どもに接してください。
決して「特別扱いをしてください」という意味ではなく、セクシュアリティが障壁になり力を発揮できない現状を緩和して頂きたいと願っています。
同性愛・両性愛男性の自殺未遂率は異性愛男性の6倍と言われており、ハイリスク層として内閣府による自殺総合対策大綱にもその懸念が示されています。自殺企図率の第1ピークは中学〜高校時と言われています。また、教育過程で同性愛について正しい知識を提供されなかった人は90.9%にものぼります。
<できること……>
●LGBTであってもなくても自分らしくいられるクラス作り
「男らしくしなさい」「女の子なんだから」と性別規範を押し付けたり、「ホモネタ」などで笑うクラスは、LGBTの子どもであってもそうでなくても、自分らしくあれないことが懸念されます。そのような発言を先生自身がしないように、また子どもからそのような発言があった場合は注意できる先生であってください。
●教職員にLGBTの研修を実施してください。教職員用の研修DVDなども販売されています。
※早稲田大学金井研究室制作「先生にできること~LGBTの教え子たちと向き合うために~」
●LGBTについての正しい知識を学習の中で伝えてください。
授業の中でLGBTを取り上げたり、LGBTのニュースを学級新聞に載せたり、学級文庫にLGBTの書籍を置いたり、LGBTの講師を呼んだりなどその方法は様々です。幼い時期から、LGBTについての正しい知識を伝え、教職員に相談できる環境づくりを心がけてください。
●LGBTの子どもを包括したキャリア教育を行ってください。
キャリア教育や人生設計の単元の中で、結婚・子育てが前提となっている場合も少なくありません。また、「男性は大黒柱になるのだから」などジェンダー規範が生じている場合も少なくありません。LGBTの子どもそうでない子どもも自分らしいはたらき方や生き方を考えるきっかけとなるような、多様な選択肢が見えるキャリア教育をしていただけましたら幸いです。
■大人のあなたができる取り組み
<まずは……>
あなたの同僚、今年入ってきた新入社員、友人や家族の中にLGBTがいることを知っていてください。そのため、「まだ彼女ができないのか」「そろそろ結婚しないと」「女の子なんだから」などの何気ない会話や指摘の中にしんどさを覚える人が居る可能性を知っていてください。
<できること……>
●職場でLGBTの人もいることを前提とした環境作りを心がけてください。
厚生労働省は、異性間だけでなく同性間の言動も職場のセクハラに該当することを盛り込んだ男女雇用機会均等法の改正指針を公布し、2014年7月1日に施行されます。
上記の様な恋愛や性別に関わる言動、ホモネタ、性的なからかいやうわさ話をする行為は同性間であってもセクハラに該当することを意識してください。
■LGBT就活生、かつてLGBT就活生であったあなたができる取り組み
●あなたの体験談を聞かせてください。
「誰もが誰かのロールモデルである」と僕は信じています。しかし、LGBTの就活生は未だロールモデルを見つけることが難しい現状は拭いきれません。もしあなたがLGBTの就活生・元就活生の場合、以下より、あなたの就活体験記をお寄せください。LGBT就活のHP(現在準備中)にて公開させていただきます。
LGBTの社会人の方:http://my.formman.com/form/pc/8BPatHUazXn80Bs5/
LGBTの内定者の方:http://my.formman.com/form/pc/9r5kfk3ZCVEQglvb/
最後に
体験記を寄せてくれた3名の元LGBT就活生に心より感謝申し上げます。
また、本稿をお読みくださった全てのLGBT就活生も、LGBTでない就活生も、「自分らしいはたらく」へつながる就職活動ができるよう、願っています。
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プロフィール
藥師実芳
特定非営利活動法人ReBit代表理事。中高大学教育委員会などで約100回、10000人以上にLGBTに関する出張授業を行うと共に、「LGBT成人式」を全国7カ所で開催。LGBTの若者の就活支援を行う「LGBT就活」共同代表。LGBT Youth Japan第一期スタッフ。
特定非営利活動法人ReBit
ReBitはLGBTを含めた全ての子どもがありのままの自分でオトナになれる社会を目指し、2009年12月に発足。大学生を中心とした若者世代約200名とともに、小学校〜大学/教育委員会などの教育機関や企業に対してLGBTの出張授業・研修を全国で約100回、1万人以上に向け実施。2011年度より、世田谷区・世田谷区教育委員会の後援のもと、全国7カ所でイベント「LGBT成人式」を実施。2013年度よりLGBTの就活生支援事業である「LGBT就活」を実施。企業と提携したセミナーなどを開催している。2014年夏、合同出版より教職員向けLGBT入門書発売予定。FaceBook:https://ja-jp.facebook.com/Re.Bit.LGBT 連絡先:rebitlgbt@hotmail.co.jp ※研修・出張授業のご依頼、本記事に関するご感想など、お気軽にご連絡ください。