2014.10.17

一人一人の行動で、多様性が尊重される社会に――国会議員へのLGBT施策インタビュー

川田龍平参院議員(維新の党)×明智カイト

政治 #LGBT#いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン

川田龍平参院議員はこれまで差別と偏見の中で息をひそめて暮らしているHIV感染者、エイズ患者をはじめ、同性愛者、障害者などの少数者の人権を守るために活躍されてきました。インタビューを通して見えてきたことは、一人一人が行動を起こすことで、一人一人の多様性が尊重される社会に変えていくことができるということです。社会を変えるために自ら行動を起こしてきた川田龍平参院議員の言葉には説得力がありました(※川田議員の所属委員会、役職は9月1日収録時のものです)。(明智カイト)

薬害エイズ被害者として

明智 ではまず自己紹介をお願いします。

川田 参議院議員の川田龍平です。2007年に初当選して、現在2期目を務めさせていただいています。これまで7年間、厚生労働委員や環境委員、東日本大震災復興特別委員会理事や原子力問題特別委員などを務めてきました。

現在は財政金融委員会に所属しています。党では政調会長代行、選挙対策委員長、政治改革本部長、参議院国対委員長代理を務めています。

明智 川田議員がLGBTの施策に関わる理由は何ですか?

川田 私は、幼少期に血友病治療の輸入血液製剤によりエイズウイルスに感染し、10歳で告知を受け、薬害エイズ訴訟原告団に加わりました。1995年薬害エイズ被害者として、日本の未成年者では初めて実名公表しました。1996年に実質原告勝訴で国と和解した後まもなく「川田龍平と人権アクティビストの会」を立ち上げ、差別と偏見の中で息をひそめて暮らしているHIV感染者、エイズ患者をはじめ、同性愛者、障害者などの少数者の人権を考える運動を始めました。

以来、私は日本社会の弱者、少数者の人権を守り、差別や抑圧を解決することなしに、エイズ問題は克服できないと考え、行動しています。LGBTの施策に関わることもその一環であり、私にとってはごく自然な流れなのです。

厚生労働委員会での質疑応答

明智 川田議員は、2011年12月に、厚生労働委員会で「セクシュアルマイノリティと自殺対策・メンタルケア」についての質疑をされていますね。

川田龍平オフィシャルブログ 「厚生労働委員会で質問をしました」http://ameblo.jp/kawada-ryuhei/entry-11095351152.html

川田 2011年12月の質問では、厚生労働省のエイズ対策事業の研究成果から、性的マイノリティが心の健康問題から自殺未遂に追い込まれる事例をあげつつ、性的マイノリティの心のケア対策を具体的に迫り、自治体で行われている先進事例を参考に取り組むとの答弁を当時の津田弥太郎大臣政務官から得ることができました。

明智 質疑後の反応について何かありましたらお願いします。

川田 今でもTwitterなどでこの質問について取り上げられていることに驚いています。

2013年9月には大阪市の淀川区が職員研修や情報発信、相談事業などLGBTに配慮した行政を行うと宣言していますが、厚生労働省では性的マイノリティの方のメンタルケア・自殺予防対策は、地域住民に対する一般的なメンタルヘルス対策として保健所などで行っているにとどまっており、職員研修など特段の取り組みはこれからのようです。

一人一人が行動を起こすことで、一人一人の多様性が尊重される

明智 今後の取り組みについてどのように考えていますか?

川田 みなさんからも自治体の先進的な取り組み事例の情報をお寄せください。厚労省に伝え大臣政務官の答弁を実現させたいと思います。また現在、自殺対策推進議連の副会長として、来年度の自殺予防対策の予算確保に全力で取り組んでいるところです。

明智 当事者のみなさんに何かメッセージはありますか?

川田 私は、薬害エイズ裁判に何としても勝ちたいとの思いで、実名を公表しました。実名を公表したことで、「励まされた」という手紙をたくさんの方からいただき、その手紙を読んで私自身もまた励まされました。

必ずしも皆さん一人一人がLGBTであることをカミングアウトすることができる状況ではないと思いますが、何らかの行動を起こすことで社会は変わります。何が足りないか、もっとどうすればいいのか、ぜひ私や活動を支えてくれる人たちに伝えて下さい。

一人一人が行動を起こすことで、一人一人の多様性が尊重される社会にできます。一緒にがんばりましょう。

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プロフィール

川田龍平参院議員

1976年:東京都小平市に生まれる。血友病治療のために投薬された輸入血液製剤によりエイズウイルスに感染。1993年:薬害エイズ訴訟原告団に加わる。1995年:原告団として活動の傍ら、未成年者として初の日本人HIV感染者として実名を公表。1996年:実質原告勝訴で国と和解。1998年:ドイツに留学。2003年:東京経済大学卒業。松本大学非常勤講師に就任。2007年2月:世界経済フォーラム・ヤンググローバルリーダーに選出される。2007年7月:参議院選挙東京選挙区より無所属で立候補。683,629票を獲得して当選。2011年:列国議会同盟(IPU)のアドバイザーに就任。国連議場で世界の国会議員に向けてHIV/AIDS問題への政策を提言。2012年6月:「原発事故子ども・被災者支援法」を成立させる。2013年7月:参議院選挙全国比例区で117,389票を獲得して再選(2期目)

この執筆者の記事

明智カイトNPO法人市民アドボカシー連盟代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。中学生の時にいじめを受け、自殺未遂をした経験から「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、ホワイト企業の証しである「ホワイトマーク」を推進している安全衛生優良企業マーク推進機構の顧問などを務めている。

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