LGBTと健康――あなたのことも生きづらくする、ありふれた7つのこと

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が日本国憲法では保障されている、と小学校のときに習った。その「健康で文化的な最低限度の生活」が、下着何枚、靴下何組、シャツ何枚と定められている、とも聞いたことがあるが、本当だろうか。そう教えてくれたのは、『ほらふき男爵の冒険」(岩波文庫)を愛読していたコバヤシ先生だったから、ひょっとしたら担がれただけだったのかもしれない。

 

詳細に定義しようとすればするほど、「健康」も「文化的」も「最低限度の生活」も、ふわふわと実体のつかめないものになっていく。いずれもが相対的かつ流動性を持ち、個人の状況や時代によって変化するものだから、かもしれない。

 

「健康」や「文化的」や「最低限度の生活」とはいったいなんなのか、というテーマは興味深いけれど、ここではその話題について深めることはせず、「LGBTと健康」についてお話していく。

 

(この記事においては以後、日本WHO協会の訳より、「健康」とは「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」とします)

 

※LGBTとはなにか、ということについては「セクシュアルマイノリティ/LGBT基礎知識編」をぜひご参照ください。

 

 

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健康の社会的決定要因 確かな事実の探求

 

WHO(世界保健機関)は1998年に、「Social Determinats of Health:The solid facts」(以下「The solid facts」)と題して貧困や差別、ライフスタイルなどの社会的要因が健康に与える影響についてまとめた出版物を刊行している。その最新版である2003年版「The solid facts」[*1]にそって、いまLGBTは健康が損なわれやすい状況に置かれているのではないか、ということについてお話したい。ちなみに「The solid facts」の邦題は「健康の社会的決定要因 確かな事実の探求」[*2]となっている。

 

[*1] WHO: Social determinants of health: The solid facts second edition (2014/03/31) http://www.euro.who.int/__data/assets/pdf_file/0005/98438/e81384.pdf

 

[*2] WHO: 健康の社会的決定要因 確かな事実の探求 第二版 (2014/03/31) http://www.tmd.ac.jp/med/hlth/whocc/pdf/solidfacts2nd.pdf

 

「The solid facts」の目次のページを開いてみると、以下の10項目が挙げられている。

 

 

1. 社会格差(The social gradient)

2. ストレス(Stress)

3. 幼少期(Early life)

4. 社会的排除(Social exclusion)

5. 労働(Work)

6. 失業(Unemployment)

7. 社会的支援(Social support)

8. 薬物依存(Addiction)

9. 食品(Food)

10. 交通(Transport)

 

 

この項目のなかで、とくにLGBTの人たちに関係すると思われるものをピックアップしていく。

 

 

1.社会格差

 

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「社会格差」の項目は、経済的・社会的に不利な要素を持っていればいるほど健康を害しやすいということを説明したものだ。それを前提にこのあと、項目ごとに各要素について触れていくよ、という前ふりなのである。

 

社会的・経済的に不利であることは、一生を通じて人々の健康に影響を及ぼす。また、「全ての人が社会的・経済的・文化的な生活において有益な役割を十分に果たすことができる社会は、人々が不安定な立場に置かれ、社会から取り残され、喪失感にとらわれる社会に比べて、より健全な社会である」ということをふまえて、次にいこう。

 

 

2.ストレス

 

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どんな人にもストレスはあるだろうし、すべてのLGBTが精神的な苦しさで押しつぶされそうな暮らしをしているわけでもない。しかし、LGBTであることでこうむるストレスがあるのもまた確かだ。

 

イギリスの国営医療サービス事業であるNHSのwebサイト、NHS choicesによるとレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの人たちはヘテロセクシュアルの人たちに比べ不安や鬱の傾向が強く、自殺したいと考えてしまいがちであるという[*3]。また、トランスジェンダーも鬱や自傷、自殺のリスクが高いと言われている[*4]。

 

[*3] NHS choices: Mental health issues if you’re gay (2014/03/31) http://www.nhs.uk/Livewell/LGBhealth/Pages/Mentalhealth.aspx

 

[*4] NHS choices: Mental wellbeing and trans people (2014/03/31) http://www.nhs.uk/Livewell/Transhealth/Pages/Transmentalhealth.aspx

 

生きづらさを抱えることは、心の健康に悪影響を与える。LGBTの生きづらさの原因となるものとして、家庭や友人関係、職場、医療現場における無理解、いじめ、なんでもない場面でのちょっとした同性愛嫌悪・トランス嫌悪的な発言、メディアでの否定的な扱われ方、外出時に嘲笑されるなどの差別が具体的に挙げられている。

 

 

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日本国内でも、電通が2012年に行った調査[*5]では、「普段の生活で『生きづらい』と感じることがあるか」という設問に対し、「とても感じる」と回答した一般層(LGBTではない層)が15.3%であるのに対し、LGBT計では25.7%となっていた。「とても感じる」「どちらかといえば、感じる」との回答をあわせると、一般層では49.3%、LGBT計では62.6%となっており、LGBTは全体として生きづらさを感じやすい傾向にあると考えられる。

 

[*5] 電通総研LGBT調査2012(2014/03/31) http://dii.dentsu.jp/project/other/pdf/120701.pdf

 

ここで念押ししておきたいのは、LGBTであることで直面する生きづらさ、それこそが対処するべき問題であり、LGBTであること自体が問題なのではないということである。もちろん当事者が自身のセクシュアリティを疎ましく思うことはあるし、その気持ちは容易に否定してはならないのだが。

 

ストレスはこれから挙げていく他の社会的要因とも密接である。というよりも、他の要因のなかに組み込まれている。

 

 

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