2014.01.16

「自由の国アメリカ」のLGBT事情

2013年はアメリカのLGBT史が大きく前進した1年だった。

6月24日にニューヨーク州での同性婚制定。直後の26日にアメリカ最高裁が、連邦法における「結婚」を男女間に限ると規定した「結婚防衛法(DOMA)」を、違憲とする判決を下したことは記憶にも新しい。

LGBT(同性愛者や性同一性障害者などの性的少数者)の人権活動が熱を帯びるアメリカ。「日本の10年先」を考えるため、学生団体LGBT Youth JapanでニューヨークのLGBT支援団体を巡るスタディーツアーを実施した。

現在アメリカでは、LGBT人権について熱く議論が交わされているが、ヨーロッパなどと比べると保守的な国である。2013年12月現在、マサチューセッツ州を初めとした16州は同性婚を制定しているが、34州は州法で禁止されている。その現状を変えようとニューヨーク市内だけでも300以上ものLGBTに関する団体があると言われている。

2週間の滞在の中で約20のLGBT団体を巡った今回の旅から、これから日本でできることを考える。

LGBTサポートの拠点、The Center

1983年に設立したThe CenterはLGBTのためのコミュニティースペース。正面にはLGBTを象徴するレインボーフラッグが大きく掲げられている。毎日複数のイベントやミーティングが行われており、年間30万人ほどが来館する。また、選挙の投票所になるなど、LGBTだけではなく地域のコミュニティースペースとしても広く活用されている。

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所長は言う。「The Centerが設立した頃は、HIV/エイズが『ゲイの病だ』と誤解されていた時期でもあって、LGBTに対する差別偏見が非常に強かった。でもだからこそ、象徴となる場所が必要だった。LGBTの人にとってはサポートの拠点となり、LGBTでない人にとっては可視化の拠点となるような場所が」

LGBT×若者サポート:10代LGBTのためのサポート団体

日本人口の約5.2%(*1)を占めると言われるLGBT。この数字は40人クラスであれば、約2名はLGBTであるということになる。セクシュアリティを自認する時期はさまざまであるが、多くは幼少期〜第二次性徴期に自身のセクシュアリティを自覚するという。しかし、調査によると93%(*2)が教育現場でLGBTに対し不適切な情報提供を受けており、いまだ若者に対するLGBTサポートは行き届いているとは言えない。

(*1)2012年 電通ダイバーシティ・ラボ調べ(約70,000 人にスクリーニング調査を実施)

(*2)教育現場における同性愛に関する情報提供に関して―Reach Online 2005 調査結果より―

アメリカに行って驚いたことは、若年層のLGBTに対してもサポートが充実していること。

「ニューヨークの高校の多くはGay Straight Alliance(LGBTとその支援者が共にLGBTのサポートや啓発活動を行うための学生クラブ。略称はGSA)があるよ」とニューヨーク市の高校生は話す。

そんな10代のLGBT支援をする団体の一つが、Pride for Youth。

1995年に設立したこの団体は13歳〜19歳のLGBTA(LGBTとその支援者)に向けたネットワーキングや知識提供、カウンセリング、STI検査などを無料で提供する。

毎週金曜夜に行われる「コーヒーハウス」というパーティーに潜入した。足を踏み入れるとそこは「クラブか!?」と驚く音楽と、踊りまくるティーネージャーたちと、無料のソフトドリンクやお菓子。親の同意の元、自宅近くまでの送迎も行っている。

開催の4時間中2時間程度は学生が主体で行うカミングアウトについての講演やGSAの立ち上げ方などテーマに沿ったイベントが開かれ、楽しくLGBTについて学び、つながる機会を提供している。

LGBT×若者サポート:大学が行うLGBT学生支援

ニューヨーク大学には大学が運営するLGBT学生センターがある。1992年に設立した同センターはアメリカで2番目に古い学校設置のLGBTセンターである。常勤の職員が2名と学生アルバイトで運営されるそのセンターはキャンパス内に事務所と、学生ラウンジを併設したセンターを持ち、ニューヨーク大学の学生は誰でもいつでも利用可能。

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メーリングリストには卒業生や教職員も含め約3000名が登録しており、イベント企画、講演会、相談事業、サークルサポート、SAFEZONEトレーニングなどを行う。その設立には学生が自ら自分たちでサークルを組織することから始め、大学にLGBT学生サポートのニーズを訴えたことが発端であるとのこと。

写真は、飛び入りで新入生歓迎イベントに参加させて頂いたもの。新入生の一人は「自分の通う大学にオフィシャルにLGBTセンターがあることは安心につながる」と言う。

また、コロンビア大学には多文化支援のプログラムの一分野としてLGBT学生への支援が行われている。LGBT学生以外にも、ラテン系、女性、黒人、ネイティブ・アメリカンなどさまざまな学内グループを支援しており、LGBTであることを各自のもつさまざまなアイデンティティの中のひとつとしてサポートを行う。

日本の大学でLGBTのサークルを学生が運営している学校もあるが、大学が設置・運営している例はない。

LGBT×若者サポート:LGBTフレンドリーな公立高校

LGBTにとってのセーフスペースを謳う公立高校がHarvey Milk High Schoolだ。1985年からLGBTの若者支援を行う団体が運営しており、2003年に正式に公立高校に認定した。学校名は、1997年にゲイであることをカミングアウトしサンフランシスコ市の評議委員会に当選した、アメリカ最初の公職者の名前に由来している。

一歩校内に踏み込むと、至るところにLGBTの象徴である6色のレインボーが掲げられており、すべての生徒が自分らしい恰好で登校していた。

約100名の生徒が通い、同施設でHetrick-Martin InstituteというNPOが放課後にもプログラムを提供。LGBTのホームレスや低所得者のために食事やシャワーを提供し、多くのLGBTにとって放課後も居場所となっている。

「LGBTである」ことを理由として起るいじめはいまだ多いという。これは日本でも同じことだ。しかしながら実は、「LGBTだ」と言っていじめられる子どもの中には実際はLGBTでない生徒も非常に多い。

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実際に「LGBTである」といじめられ、アメリカで2011年に自死した子どもは9名。そのうち2名はLGBTの生徒ではなかった。LGBTであってもなくても、LGBTを揶揄する言葉は不登校・退学・死に繋がる。LGBTの生徒にとってのセーフスペースである学校はLGBTでない生徒にとっても、安心して通える学校なのである。

LGBT×若者サポート:LGBT若者と自死の関係

LGBTの若者支援を語る際に、決して無視して通れないのが自殺対策である。

そのサポートを行うアメリカ最大の団体がThe Trevor Project。1998年に設立されたこの団体はアカデミー賞も受賞した映画「TREVOR」が発端となっている。その映画で描かれたゲイの男の子が大反響を呼んだが、彼が画中に描かれた自死祈念を相談できるホットラインが当時は存在せず、それをつくろうと奮闘したのが設立のきっかけだ。

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The Trevor Projectは 24時間の無料電話相談、生徒/教員へ自死対策に関する出張授業、SNSでのネットワーキングを主に行っている。いまでは年間約36600件の相談電話を受けており、年々その数は右肩上がりだ。驚くべきは、そのすべてのプログラムが500名以上のボランティア中心で運営されていることである。事務所及びWeb上で毎月5回のボランティア説明会を行い、プログラムごとに丁寧な育成プログラムを用意することでこれが可能となっている。

The Trevor Projectの研究によると、身近に支援してくれる人が1人いるだけで、自死のリスクは30%も軽減されるとのこと。このように身の回りで支援を行える人を育成することこそがThe Trevor Projectの狙いだ。

日本でも、性別や同性愛に関わる相談を専門的に受ける24時間無料電話相談は2012年より実施されている。よりそいホットライン(http://279338.jp/yorisoi/index.html

LGBT×家族:LGBTファミリー支援プログラム

僕自身、「LGBTなんです」というと「じゃあ子ども、もてないんだね」とよく言われますが、そんなことはありません。日米問わず、子どもを育てるLGBTは決して少なくありません。また、アメリカの20州では同性婚、もしくはパートナーシップ法(婚姻に類似した法制度)が制定され、21州ではLGBTカップルが養子縁組をし、法律上も「両親」として子どもを育てることができます(*3)。

(*3)2013年Human Rights Campain調べ

アメリカの調査によると、600万人が同性愛者の親を持っていると回答しています。(http://williamsinstitute.law.ucla.edu/wp-content/uploads/LGBT-Parenting.pdf

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LGBT支援の拠点であるthe centerが提供する、LGBTファミリー支援プログラムがThe Families。子どもを持ちたいLGBTに対し、養子縁組、里親制度、精子提供、代理母制度で子どもをもつ際の知識提供や、子育てをするLGBTファミリー同士のネットワーキング、LGBTカップル専門のカップルカウンセリングなどを行う。

同センターが行う毎月のネットワーキングイベントには毎回20〜40組のLGBTファミリーが集うという。

「ニューヨークではLGBTファミリーは既に可視化されているけど、でもまだ直面する困難も多いの。例えば、レズビアンカップルが子育てをしている場合、『お父さんは?』と聞かれたりと、社会の理解が追いついていない場合もある。また、子ども自身も「カミングアウトプロセス」があり、その子自身が父と母ではなく母二人、父二人であることを受け止め、周りに伝えていくプロセスが必要であるから、長くファミリーをサポートする場は重要」とThe Familiesの職員は語る。

LGBT×家族:LGBTファミリー専用マガジン

Gay Parents Magazineは1998年より刊行しているLGBTファミリーのための情報雑誌。発行数は月1万部にものぼり、LGBT施設などで主に無料配布、及びweb上での有料ダウンロードを行っている。その収益は精子バンク、学校、病院などの広告掲載から得ている。

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gay parents magazineの編集長自身、同性パートナーと16歳の子どもを育てている。

その娘さんは言う。「高校でも、8名の生徒は親がLGBTであることをオープンにしているの。私の前の彼氏の両親もLGBTだし。別に特別なことではないと思っているよ。家族がほしいなら、家族をもてばいいと思う。家族の愛情に血縁とかセクシュアリティとは関係ないんだから」と。

LGBT×家族:LGBTの子どもをもつ親への支援

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「家族」というとLGBTの子どもをもつ親もまた家族の一つの形態である。

そんな親をつなげる団体が1972年に創立したP-flag。全米に500の支部を持ち、メンバーは25万人を超えるという。定期的にLGBTの子どもを持つ親や、LGBTの子どもたちのピアサポートミーティングが行われ、自身の体験などを語り合う。

また、約100人のボランティアが全米の学校でリーチアウトと呼ばれる講演を行う。

彼らは言う。「『LGBTの人』だけを見れば、確かにマイノリティだけど、その親や、兄弟、親戚などをつなげていくと、LGBTはマイノリティなんかではなくなる。だからアライ(=LGBTの理解者・支援者)の役割はとっても大きい」

定期ミーティングに参加させていただき、子どもからカミングアウトを受けたときの話を伺った。その中で印象に残った言葉がある。「カミングアウトを受けると動揺する親は多い。実際、私も動揺したしね。でも気付いたのは、子どもは何も変わってなんかいないということ。変わったのは、子どものことをもっと知れた、というそのことだけなの。子どもがカミングアウトをしたのは、あなたを失いたくなかったからなんじゃないの? と私は動揺している親に言いたい」

LGBT×高齢者:高齢者のカミングアウト

LGBTの高齢者支援への取り組みは大きな課題である。日米ともに、高齢者施設の多くはLGBTフレンドリーでない場所がまだまだ多い。そのため、他の高齢者施設ではカミングアウトをすることやそれを受け入れられることが難しく、ありのままの自分でサービスを受ける事ができない。また、同性カップルの場合それを周りに伝えていなかったら近所の人間関係やヘルスケアにつながりにくく孤立を助長しやすいい。またまだ今の60歳以上のLGBTのカップルは子どもがいない人が多いことから、更に孤立を助長しているのが現状だ。

そんなLGBTの高齢者にサービスを行うのがSAGEだ。

1978年に設立したこの団体は、LGBTフレンドリーを公言する高齢者支援施設。60歳以上の誰にでも週6日、11時〜20時までの間さまざまな交流プログラムと無料の夕食を提供している。登録者は約1300名で、毎日利用者の数は200名を超える。

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職員は言う。「SAGEの最終ゴールはニューヨークにある250すべての高齢者施設がSAGEと同じように、セクシュアリティ問わず居心地の良い場であること。そのために、ニューヨーク市内の高齢者施設に出向いて勉強会を行ったり、常にアウトリーチをしているの」

現在ではニューヨーク市内に広いセンターをもつ同施設だが、設立してから32年間はthe centerの一室を借りて、週5~10のプログラムを提供する活動をずっと続けてきてきた。2年前からニューヨーク市から高齢者施設として事業委託を受け、現在のように自団体で場所を儲け、常時サービスを提供できるようになったという。

設立期からSAGEの活動に関わり、現在は利用者として通う方がおっしゃっていた。「SAGEを立ち上げた頃はこんなような施設を構えられるとも思わなかったし、生きているうちに同性婚が実施できるなんて思わなかった。今でもたまに夢なんじゃないかと思う。自分がほしいなら、自分で動くこと。少しずつでいいから、前進させること。そしたら、叶うんだよ。」

LGBT×ダブルマイノリティ:さまざまな人種に特化したLGBTサポート団体

ダブルマイノリティとは、複数のマイノリティ性を持つ人を指す。マイノリティの中でも更にマイノリティになりやすいことから、特化したサポート、もしくは包括したサポートが必要となる。

日本のLGBTの中でも、身体障害、知的障害、精神疾患を持つ方、外国籍の方などダブルマイノリティとされる方は多くいるが、残念ながらいまだ適切なサポートは足りていない。

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アメリカのダブルマイノリティの重要な切り口として、人種がある。

有色人種のLGBTの若者支援に特化した団体であるFierce!は1998年に有色人種の少年が財布を盗んだという誤解によって警察に射殺された事件をきっかけに、2000年に設立した。いまだに有色人種のLGBTは警察官により道ばたで不当に尋問をされることが多いという。そのために、このような際にどのように対処したらいいのかなどの知識提供や、コミュニティ内でのリーダー育成プログラムを提供している。

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GAPIMNYはアジア太平洋地域のゲイ・バイセクシュアル男性とトランスジェンダーの人々の支援団体。1990年より23年間、すべてボランティアで運営されている。チャイナタウンでのプライドパレードなどアジアコミュニティへの可視化を続ける、同団体の代表者は言う。「ニューヨークのLGBTコミュニティは、まだまだ白人社会で、アジア系だと近寄りにくい雰囲気がある。またアジア系のコミュニティの多くが、自分の母国の文化を受け継いでいて、アメリカとはまた違ったLGBTに対するアプローチが必要なんだ。例えば、親にLGBT関連の資料を渡そうとしても、親世代で英語が得意でない人は多い。」

LGBT×HIV/エイズ:ビジネスモデルを確立する、HIV陽性者支援団体

アメリカでは1980年代からHIV感染は爆発的に広まり、ゲイコミュニティの中でも深刻な問題となった。現在は多数の予防啓発、支援活動によりアメリカの感染者増加数は頭打ちとなっている。しかし、継続した予防啓発活動やHIVと長期的に生きる人々の支援活動が重要であり、それらに取り組むLGBT団体は多い。

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Housing WorksはHIV陽性者かつホームレスのダブルマイノリティの人々に住まいを提供するNPO団体。ニューヨーク市内には滞在期間に併せ住居が数カ所あり、居住者は数千人にものぼる。住居提供の他にも、職業訓練を受けられ、訓練終了後は多くの人がHousing Works関連職もしくはほかの企業、団体へ就職する。「実際に僕も、Housing Worksの職業訓練を受けて、今ここでこうやって働いているんだ。支援を受けた人が支援をする、そういう風にこの団体はまわっているんだ」と職員の一人は語る。

また、この団体の特徴は運営費用の半分以上を自団体のビジネスでまかなっている点である。1990年より活動を行う同団体は当初は政府からの補助金で活動を行っていたが、政府に対しアドボカシー活動を行う中で、補助金を大幅にカットされた経験をもつ。「政府がHIV陽性者に対して不当なことをしていたら、不当だと言わなければならない。そのためには独自資金が必要になってくる」と職員の一人は語る。

ブックストアカフェ運営、オンラインでの本販売、カフェ内での結婚式を初めとしたイベント、古着屋の運営などをビジネスとして展開する同団体は、従業員は9割がボランティア。すべての販売品は寄付で成り立つが、個人寄付はもちろん、企業と提携し大口の物品寄付が多いという。これが実現できる背景には、アメリカの法律ではNPOへの寄付対象に資金だけでなく、物品や労働時間が含まれており、それにより法人税が免除される点も大きいという。

LGBT×HIV/エイズ:HIV/エイズと医療・治療を考える団体

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1991年に設立したacriaはHIV陽性者をはじめとしたLGBTに関するヘルスリテラシーの向上に取り組む。ヘルスリテラシーとは、健康面での適切な意思決定に必要な、基本的健康情報を理解し利用する個人的能力の程度を意味する。アメリカでは、言語や文化的差異から45%もの人がヘルスリテラシーが低い水準にあるという。

多くの医療者の前提にセクシュアリティの多様性の概念がないからこそ、トランスジェンダーの患者が「うちでは看られない」と受診を拒否されたり、LGBTファミリーが子どもを病院に連れて行くと「どちらが親ですか?」と聞かれたり、長年連れ添うLGBTカップルが「家族以外は治療内容についてはお話できません」と言われたりするなど、特にLGBTにとって安全・安心な医療が受けづらい現状があるという。これは日本でも全く同じことである。この現状を改善するため、セクシュアリティに関する知識を「医療行為を行う上で必要な知識」として医療者への知識提供も行っている。

また、acriaの主な資金源はアーティストから寄付された芸術品のオークション販売であることは非常に興味深い。

LGBT×HIV/エイズ:アート学生によるHIV陽性者人権支援

Queerocracyは20代の学生が発足した、HIV陽性者、不法移民、クィアの人々の人権アドボカシー団体。

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HIV陽性者支援の資金を大幅にカットすることが議論された際に、身体にメッセージをペインティングし抗議をするなど、そのアピール手法の新しさがABCニュースを始めとしたメディアに広く取り上げられたという。

LGBTに対する法律的支援:LGBTの若者とホームレスの関係

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LGBTの若者とホームレスの問題は切り離して語ることはできない。ニューヨーク市では一晩に4000人の若者が路上にいるともいわれているが、そのうちの40%はLGBTである、と伺った。その背景にはLGBTであることを理由に親に家を追い出されることが決して少なくない。

LGBTのホームレスの若者の法的支援を行うPeter Cicchino Youth Projectではサービスを受ける若者のうち97〜98%は有色人種の若者であるという。LGBT、人種、貧困などダブルマイノリティ、トリプルマイノリティなどさまざまな問題に目を向けていく必要がある。

LGBTに対する法律的支援:トランスジェンダーのための法的支援

Transgender Legal Defense & Education Fund(以下TLDEF)は全米のトランスジェンダーの法的支援を行う団体。2005年に設立し、25の法律事務所と提携しトランスジェンダーに関するさまざまなアドボカシーや訴訟における法的サポートを行う。

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「アメリカでは同性愛者の人権に比べ、トランスジェンダーの人権は10年遅れているように思う」と職員は言う。「学校生活のサポート、職場での差別・ハラスメント防止、住居や寮での差別や医療差別の改善、名前の変更や出生証明書の性別変更などさまざまな場面でトランスジェンダーに対する法的サポートは必要になってくるし、それらの積み重ねが生きやすい社会につながると思っている。」

最後に

今回のスタディーツアーを行ったのが、2013年に設立したLGBT Youth Japan。LGBT問題に関心をもつ若者に海外LGBT支援団体での経験や、国内外での学びと発信の機会提供を通して、新しい視点をもって日本のLGBT問題を変える一端を担う人材を育てることを目的として活動する。第一回目の今回のニューヨークツアーにはLGBTやアライの学生8名が参加した。

設立代表は今回のツアーを振り返って言う。「今年の夏のツアーは初めての試みばかりでしたが、とても充実したものになったと思います。たくさんのLGBT支援者との出会いを通して、参加者の皆さんには現地のLGBT情報だけでなく、40年以上かけて自分たちの社会を変えてきた人たちの気概を感じ取ってきてもらえたことが、とても嬉しかったです」。第二回スタディーツアーinニューヨークを現在構想中。

LGBT Youth Japan

http://lgbtyouthjapan.jimdo.com/

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プロフィール

藥師実芳特定非営利活動法人ReBit代表理事

特定非営利活動法人ReBit代表理事。中高大学教育委員会などで約100回、10000人以上にLGBTに関する出張授業を行うと共に、「LGBT成人式」を全国7カ所で開催。LGBTの若者の就活支援を行う「LGBT就活」共同代表。LGBT Youth Japan第一期スタッフ。

この執筆者の記事

特定非営利活動法人ReBit

ReBitはLGBTを含めた全ての子どもがありのままの自分でオトナになれる社会を目指し、2009年12月に発足。大学生を中心とした若者世代約200名とともに、小学校〜大学/教育委員会などの教育機関や企業に対してLGBTの出張授業・研修を全国で約100回、1万人以上に向け実施。2011年度より、世田谷区・世田谷区教育委員会の後援のもと、全国7カ所でイベント「LGBT成人式」を実施。2013年度よりLGBTの就活生支援事業である「LGBT就活」を実施。企業と提携したセミナーなどを開催している。2014年夏、合同出版より教職員向けLGBT入門書発売予定。FaceBook:https://ja-jp.facebook.com/Re.Bit.LGBT 連絡先:rebitlgbt@hotmail.co.jp ※研修・出張授業のご依頼、本記事に関するご感想など、お気軽にご連絡ください。

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