LGBTと就活――混乱、さらに極まれり?!

私は「男性」だが、就活をしていたとき、一度だけパンプスを履いて街に出たことがある。というのも、私はトランスジェンダーで、戸籍上の性別が「女性」だからだ。

 

書類の性別にあわせた格好はどうしたらいいのか迷っていた。そのパンプスは割と大きめの百貨店で選んだ、その店では最も中性的でヒールの低い「パンプスもどき」だった。それでも婦人用靴のコーナーにいることが苦痛で、ゆっくり選ぶ心理的余裕がなかったためか、家に帰ってから眺めると、その靴はどんどん女性用の残念なデザインに見えてくる。あぁ……もはや、ため息しか出ない。

 

いざやってきた「Xデー」ならぬ最初の面接の日、意を決してその靴をはき、駅の改札にSuicaを当てようとして、思わず手がとまった。「え、おれ、こんな格好で電車に乗るの無理なんですけど……!」けっきょくスゴスゴと自宅へと引き返した。

 

二足目の「よりマシ」な靴を入手して、ようやく就活を再スタートさせることとなったが、内定が出るまで、自分の服装や話し方、挙動について、ずっと不安を抱え続けた日々だったことを覚えている(もう二度とあんな体験はしたくない)。

 

昨今の雇用情勢はいぜんとして不安定だが、その中でLGBTの一部の人たちは特有の「困り感」を抱えている。本稿は、就活のさなかにいる当事者の方はもちろん、若者のキャリア相談に関わる方や、企業の人事の方にも是非ご一読いただき、共に考える一助としていただきたい。

 

※LGBTについて耳慣れない方は「セクシュアルマイノリティ/LGBT基礎知識編」を是非ご参照ください。

 

※就職後の職場環境については、私と明智カイト氏、村木真紀氏が昨年対談した「LGBTが生きやすい職場のために」も是非ご覧ください。

 

 

性別と仕事、どっちとる?

 

「大人になったらお店で働いて、そこにエンドーを呼ぶね」と、彼女は言った。

彼女とは今から7、8年前にネット掲示板で知り合った。その掲示板には性別に違和感のある中高生がたくさん集まっており、彼女もその一員だった。九州の小さな街で、「男子高校生」としての息苦しい日々をもっぱらやりすごしている最中なのだという。

「お店で働くのが夢なんだ?」

 

「うーん。わかんないけど、あたしみたいなのは、夜の世界以外に選択肢あるのかな? 正直、将来なんてイメージわかないよ。」

 

けっきょく彼女のお店に呼ばれることはなかったが、「彼女と同じ言語」を話す仲間たちに、その後たびたび出会った。

 

正社員になれるのかな。

学校の先生になるのは無理かな。

働いている人のイメージがわかない。
自分みたいなのは、ほんとのこと隠さないと働けないかな。

 

 

……特に、トランスジェンダー/性同一性障害の当事者たちには、「性別と仕事、どっちとる?」とでも迫られるような不安がつきまとうのだった。

 

2013年に虹色ダイバーシティによって行われた「LGBTと職場環境に関するアンケート調査」では、回答者の正規雇用率はFTMで53.1%、MTFで58.7%となっており、非正規雇用率はともに3割強(東洋経済ONLINE「LGBTへの無策は企業にとって大きな損?1000人アンケートから見えたもの」)。

 

男性一般の非正規雇用率(19.7%)と比べれば雇用形態は確かに不安定だが、正社員になっている方も大勢いるので、そこまで悲観しなくてもいいだろう。ちなみに学校の教員をやっている方もいる。

 

 

LGBTに共通する部分は……

 

とはいえ、LGBTの全員が就活において同様・同質の課題を抱えているわけではない。たとえば自身の性別に違和感のないゲイの場合には、服装のことで冒頭のように悩むことはないだろう。そのあたりの差異にも注目しつつ、LGBTがなんらかの「困り感」を抱く場面を分けると、以下の3パターンになりそうだ。

 

 

(1) 働き続けやすい社風かどうか心配 

結婚を強要する風潮やハラスメントがないか、女性がずっと働けるのか

 

(2) LGBTであることを隠して面接で話すのが大変   

あれこれ尋ねられる面接で、LGBT関係のことを隠して話すのは結構大変

 

(3)どの性別で振る舞うのか

書類の性別欄や服装、性別設定をどうするか。伝えるならどのタイミングか。

 

 

(1)(2)はLGBT全般に当てはまりうること、(3)はトランスジェンダーや性同一性障害など、出生時の性別に違和感を抱いている当事者が該当してくる。以下、詳しく解説しよう。

 

 

 

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